アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ようやく帰路につきました。
-
佐藤くんに道案内をして30分。ようやく見覚えのある道に出た。一時はどうなるかと思ったが、安堵のため息をつく。良かった良かった。
「佐藤くん道案内ありがとうな。こっからなら俺一人でも大丈夫そう。
あと、さっきは急に帰って悪かったな。じゃあ、また学校で」
今日は本当に災難な日だった。早く帰りたい。
相も変わらず綺麗な顔をした男に背を向けるとクイ、と腕が引かれる。
「遅いので送っていきますよ」
振り返るとそう微笑む佐藤くん。顔面が黄金比過ぎて断ることなんかできない。やはりイケメンには勝てないということが、身をもって分からされた瞬間だった。
「お願いします、、」
そうして今、無言で暗い道を二人きりで歩いているという謎な状況が生まれてしまった。気まずい。とても気まずい。陽キャなんだから会話の初めは佐藤くんからしてほしい。そこからどれだけ会話が広げられるかは俺の技量ってことで。
てか俺のこと好きならなんか話せよ。と他力本願で考えていく。俺の悪い癖。
ここは歳上らしく俺がリードしてやるか。歳下って言っても一つしか変わらないけどな。どうして成人してる奴の1個差て誤差みたいなもんなのに、学生ってこんなに大きく感じるんだろうな。
「、、あのさ、佐藤君」
「うぇっと、はい、はい?」
いやキョドりすぎ。女子に話し掛けられた時の俺の真似?だとしたら満点あげちゃうね。激似。
「佐藤君どうしたの?」
「えーっと、」
「緊張してる?」
「はい、なんで分かったんですか」
違う違う、冗談だって。まさかそんなことあると思わないじゃん。けど二人きりの時ってこういうこと言っておくべきなのかなって。漫画で見たし。
そろりと佐藤くんの顔を見ると、気まずそうに軽く唇を噛んでいる。いつもの優しい笑顔とは違って、顔を強ばらせながら歩いている。
そんな顔されたら、冷やかすに冷やさせない。
まじまじと見ていると、大きな手で目を隠される。
「ちょ、見ないで。恥ずかしいので」
これがギャップ萌え。ようやく理解した。
確かに、可愛いかもしれない。
「、、だって暗いじゃないですか」
「うん」
「いつでも襲えそうで」
「誰か男の人、」
「大丈夫ですよ、我慢しますからぁ」
年頃の男の子の理性がどんだけ役に立たねぇもんか知ってるか。あってないようなもんだから。豆腐より脆いんだから。
というか俺にそういう気があるのこの人。本当に。
俺のどこにナニをどうしたいんだ。主語が足りない。男同士って何?未知すぎる。宇宙猫になってしまう。
「そうだ先輩、明日休みだし遊びましょうよ」
焦りながら話題を変えるように佐藤くんが話し出す。明るい声色で切り出されようがさっきの発言による警戒心は解かれないからな。
「今日はちょっと時間が無くなってしまったので」
「、、悪かったな」
そんなこと言われても。だって怖かったし。
あの空間どんなホラーより怖かった。女の子ってあんなに怖い目できるの。
「いえ、謝るのはこっちの方ですよ。勝手に遊びに誘って先輩の大事な時間を奪った上、嫌な思いまでさせちゃって。
明日こそは頑張りますから。お願いします。」
か、可愛い。
自信が無いのだろうか。それとも凹んでいるのだろうか。眉を下げて俯いている。
「あの、さ」
「はい?何ですか」
「俺さ、誰かに好きになってもらったことないからさ、そんな愛情表現みたいなことやられるとちょっと、困る」
彼女いない歴年齢、彼氏も然り。
友達も少なく、ネット上でも話せるのはひと握り。それを埋めるように費やしたゲームの数々が俺の人生を語っている。
自分でも分かる程に顔に熱が集まっていく。手で仰いでも何も変わらない。
「先輩、可愛いです」
「うるさい。じゃぁ俺家入るから。」
「あんまりオタクの人の気持ち分かんなかったけど、これが推しってやつですか」
「良いから。じゃあ」
「と、とりあえず明日10時に駅前で。可愛いです。」
言われると同時に扉を閉める。
男に、しかも可愛いって言われてもな。いやもしかして本当に俺って可愛いのかもしれない。手で顔を触って確かめる。
全然可愛くなかった。解散。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 8