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今日も家は静かでした。
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「ただいま」
俺の声が響く。返事は無い。
誰かがいる気配も無い。
話し声も無ければ、夕飯の支度だってされていない。
当然だ。この広い家には俺しか住んでいないのだから。
ゲームを何本も買い溜めする金も、揃えた漫画を置いておくスペースも全て与えられた。
ゲームを何本も買うぐらい余裕でできるほどの高額な金が毎月俺の口座に振り込まれている。
家賃もそこから払っている。金には困っていない。何不自由無い暮らしをさせてもらっている。
ただそこに家庭はなく、俺だけが一人寂しく暮らしている。
そんな高い金を振り込んでくれてる親が、ここにいない理由は至って簡単で。
「会いたくないから」それだけだ。
なんとシンプルでなんと心に刺さる理由だ。齢17、8に伝えるにはあまりにもストレート過ぎる。
俺の親は離婚して、再婚して。
その再婚相手には連れ子がいたらしい。
俺の存在はその子に迷惑らしい。普通に考えて、ほぼ引きこもりで陰キャなオタクと、可愛い我が子を関わらせたくないのは当然ではある。俺も嫌だもんな。俺の弟には絶対なりたくない。
何度か見たけど、あまりにも可愛い子だったな。多分目に入れても痛くない。
だから、金を払うから別の家で暮らして欲しい。
俺も俺で、自分だけが輪に入れなかった空間に耐えられる自信は無かったから、条件はすんなりと飲み込むことが出来た。
故に、俺は誰にも愛されたことがない。
好きもおかえりも大丈夫も、言われたことがない。暖かい言葉なんて、求めることすらやめた。
だから、俺の家は今日も明日も静かだ。
なんて、頭の中が暗くなっていることに気付いて、必死に別のことで埋めようとする。
明日の準備でもしようかと部屋に目を向けると、大変なことに気づく。
着ていく服が一着も無い。
今まで外に出ようとしなかった自分を恨む。普段なら何も気にせず外に出ていたが明日はまた訳が違う。デートだデート。
あぁ女の子って凄いんだなこんなことを毎回やっているのか、俺なんて服一着で詰んでいるというのに。
服を借りようともアドバイスを貰おうとも友達がいないという事実が邪魔をする。
俺の強い味方、制服だって明日が休みなので通用しない。
終わった。今の俺に出来ることはいつ刺されても良いように心の準備をしておくことだけ。
とりあえず、最後に足掻こうと家中の服を並べていく。全体的に黒が多い。むしろ黒しかない。
このパーカーなら、まぁ当たり障りもないし、良いのでは、、。
今から速達便で買えば、あぁもう無理だ。
早く風呂入って寝よう。
全てを投げ捨てて、俺は考えることをやめた。
明日は明日の風が吹くとはよく言ったもんで、俺はこの瞬間から座右の銘にして生きていこうと誓った。
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