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はじまり
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「やっとついた……」
手に握ったメモと門に掲げられた『青春学園』の表札を見比べながらハァと息を吐いた。
青春学園中等部。文武両道を合言葉に運営された学校か……。
「ここが今日から俺の学校になるんだ」
門の先にある校舎を仰ぎ見ながらうんうんと頷いた。
転校なんてするにはちとズレた時期ではあるけど、まぁわざわざ何でーだのどうしてーだの聞いてくる奴なんていないよね、うん。
「それにしても……」
俺はげんなりとしながら、今の自分の姿を爪先から胸元へと順に見上げていく。
生まれてこの方13年。自分で言うのもなんだけど蝶よ花よと育てられ、自分を男だと信じて生きて来たのに今のこの状況は一体何なんだろう。
「ひっでーよなぁ叔父貴も。新しい中学に行きたいなら女として通えなんてさ」
ボリボリと頭をかきながらはぁ、と息をついた。
自慢じゃないが世間様で言う俺は不良の部類に入る人間で、喧嘩に暴力沙汰なんぞ当たり前。毎回誰彼構わず怪我させては親を呼び出される毎日。
でもそんな俺でも学校は大好きで皆勤賞をとる程。その中でも音楽と体育が大好きで、他の授業を抜け出したとしてもそれだけは一日たりともサボる事はしなかった。
でも、俺がどんなに学校を好きだとしても学校側としたら俺みたいな問題児はやっぱり邪魔な訳で……。
「ここがダメになったら俺、もう都内の学校全滅になっちまうんだよな……」
親が金つんで行かせてくれた氷帝も聖ルドルフも、スポーツ特待で入った不動峰さえも退学。後はここくらいだもんなぁ。
「いや別に俺もさ、好きで退学になってる訳じゃないんだって。人の事目付き悪いとか生意気だとかいちゃもんつけてくる方が悪いわけで……」
なんてぶつくさ文句を言いながら青春学園と書かれた門を潜り抜けた。
時刻は午後16時をまわった所。とうに授業は終わり、帰宅する奴や部活に向かう奴やらで辺りはガヤガヤとしていた。
その人垣を縫いながらまず俺は職員室に向かった。転入手続きの書類を渡した後は軽く校内の案内と説明を受けて解散。
「なんか拍子抜けだなぁ」
説明を受けてる最中、俺はいつ男だってバレるだろうとハラハラしてたのに、そんな事はなく着々と転入手続は終了した。
そりゃ俺は他の奴に比べると小柄だし声も高いし顔だって母親似の女顔だけどさぁ。
階段の踊り場の壁に設置された鏡の前でくるりと一回りしてみる。ひらりとひらめくスカートがまたなんつーか……。
「う、違和感ねぇ……」
鏡に写る俺は完璧女。恐ろしい程に女そのものだった。
女装するにあたって姉貴に眉は剃られるわ軽く化粧はされるわって本当に災難だった。
だけど……
「ん~でも結構楽しいかも?」
もう一度今度は軽くスカートの裾を掴んでくるりと回る。
するとそれと同時に「クスリ」と誰かの笑う声が耳に届いた。
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