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一概にテニスコートと行っても流石は全国の超セレブの子息子女が集まると名高い氷帝学園。広さもさる事ながら施設の作りも半端なかった。
本校舎から少し離れた場所に着工されたコンクリート造りのその建物の中に入れば目前に広々と並んだ四面のコート。そのコートを望めるように吹き抜けになった中二階にはカフェテリアが設営されている。
てかたかだか部活の施設にカフェテリアって……。
「流石金持ち校。施設が半端ねぇ……てか何様だよレギュラー陣。カフェテリアとかいらねぇだろ」
ありえねぇ、とボソリと毒づけば忍足がケラケラと笑った。
「奥にはサウナと個室のシャワー室もあんで」
「はあ!? なんに使うんだよそんなもん!!」
「そりゃあ練習で汗かいたら使うに決まっとるやん」
決まっとるやんて何さも当たり前ですみたいな言い方してんのこいつ。金持ちのぼっちゃんってのは皆こんなバカなのか?
「そんなの家帰って入りゃいいじゃんか」
「家に帰るまで待てないって潔癖が部長やからな、しゃーないんちゃう? この施設自体跡部ん家の寄付金で作ったみたいなもんやしな」
氷帝学園の200人いるテニス部員の中の頂点に立つ部長・跡部景吾。忍足と同じ三年生で同じ部活内にいるにも関わらずまだ一度たりとも姿をみた事がない先輩だ。
まぁ一般部員と部長を含むレギュラー陣は練習の場所自体違うからそれが普通なんだろう。
「これだから金持ちってなイケ好かねぇんだよ」
「自分やってここに転校するんに結構な諭吉さん並べたらしいやん。一緒や」
「あれはおふくろが勝手に! 俺はちゃんと試験受けるっつったのに「お前は頭の中身も親父に似たから」って……てかあんたさっきっからペラペラ人の裏事情を。どこで調べて来やがった!?」
俺が転校するはめになった理由だってここの理事長と担任しかしらない。勿論転校方法だって……。
なのに何でこいつが知ってるんだ?
「そりゃこんな半端な時期に転校生とか珍しいし。暇してる坊っちゃん嬢ちゃんには格好ないいネタや。しかもお前結構目立つしなぁ」
吹き抜けの下のコートを通りすぎて、部室らしき部屋へと入って行く忍足に俺もその部屋へと足を踏み入れる。
部屋に入るなり、うわぁ……と顔をしかめたのはこの際無視してもらって。
「すげ、なにこのサロンみたいなとこ」
まず目についたのは頭上に設置された太陽の明るい光がめいっぱい入り込むテラス窓。その次に壁に飾られた高そうな絵画の数々。
その壁づたいに人一人が軽く入れそうなくらい大きなロッカーが並んでいる。
部屋の中央には皮張りのソファーと硝子の丸テーブル……ほら、俺が何で顔をしかめたかわかっただろ?
「ほんとに何様だよレギュラー陣。無駄金にも程がある」
「まぁまぁそんなに責めんといて」
忍足は俺が吐き出す毒に苦笑いを返しながら一つのロッカーの前に行くと鍵をあけ扉を開いた。
中から二本のラケットを取り出すと、一本を俺に投げて寄越す。
「?」
今度は何だよと右眉を跳ねれば、忍足は満面の笑みで俺の顔を覗き込んでくる。
「やからちょお付き合えやゆうたやん」
「だから、何を?」
「何をって。テニスコートがあってラケットを持ったらやる事なんて一つやろ」
テニスコート……ラケットが二つ?
「まさか、今から一試合やろうなんて言わねえよなあんた」
「? せやで」
マジかよ!?
「いや、ちょっと待てって。いきなり試合って言われたって俺今日ラケット……」
「だから俺の貸したったやん。それ使い」
そんな事、言われても……。
「俺らレギュラー陣でも結構話題に上っとんねんお前。あの跡部が興味を持った一年ってな」
「はい?」
「なんやったっけ? プレイスタイルが誰かに似とるゆうて気になるとかなんとか。なんか言われへんかったん?」
「いや、言われるもなにも俺まだ男テニの部長とは何の接点もないんだけど」
挨拶はおろか顔さえも見たことないのに。大体見ての通りレギュラー陣と一般部員は活動場所も違う。一般は校舎裏の屋外コート。レギュラーはここの屋内コート。
俺だけじゃない、一年の部員はほとんど部長の顔を見たことないっていってる。
「大体あんただって俺初めて会ったし話したんだけど?」
言えば「せやったか?」なんて事なげに返される。この野郎……。
「やったら自己紹介からか。忍足侑士や。氷帝学園の三年生」
「門田……翠」
差し出された大きな掌を少し戸惑いがちに掴み握手を交わす。ここで初めてお互い自己紹介を終え、初接点となったわけだ━━。
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