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庇護
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理央は泣きじゃくりながら必死に話してくれた。
授業を受けながら空いている座席を確認する。戻ってこないな…。
不意に窓の外を見れば雨の中誰もいないグラウンドをとぼとぼと誰かが歩いているではないか。俺はその後ろ姿に見覚えがあった。
「あいつ…?!」
ガタガタと机にぶつかりながら立ち上がり教室を出た。
「おい!井下!なんだ?!」
「すんません、腹痛いっす!」
「あ、おい、待て!!…腹痛いやつの動きじゃないだろ…」
理央が校門を出てしまう前に。
「翔…翔ぅ……うっ」
何度も俺の名前を呼びながら嗚咽を漏らす理央。昨日そんな事があったのか。きっと我慢してたんだろう。…我慢させてしまっていたのは多分俺の所為だとも思った。
「理央……」
理央がこんなにも感情に左右されているのは久しぶりに見た。常に周りに無関心な理央だがここ最近神戸と接触してからは表情も豊かになっていた。
神戸も理央の事が好きだ。
それは理央の話から俺は分かっていた。
なのに、どうして副会長と?憤りしかなかった。神戸の事だから何かあるのはなんとなく分かる。でもこれが最善の策なのだろうか。
俺は理央との話の中心人物が近くに来た事に気づいていた。
俺は理央を抱きしめた。
神戸に分かるように。
「理央…」
「…っ?!」
神戸が理央に声をかけた。神戸もそのまま飛び出して来たのか、雨に濡れている。
理央はその声に気付いたのかビクッと体を震わせ俺のシャツをより強く握った。
「会長さん、なんの用?」
「理央…借りたい…。話したいんだけど」
「何、話したい事って。言い訳なら俺は理央には聞かせたくない」
「か、ける…」
顔を隠すように抱きしめた。
「言い訳じゃない。本当の事を話したいだけだ」
理央はどうしていいか分からない表情をしていた。
「理央、お前保健室行って来い」
でも…と言いたげに見てくる。後押しするように頭をポンと叩いてやった。そのまま俺を心配そうに見たあとに走って行った。
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