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俺の言葉を信じて
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参ったな。
ロビーにいてもぽつんと俺一人。
久我、寝てるんだったら寝顔だけ見に行こうかな。
来る時に聞いていた部屋番号を探して、静かに入る。
開けっ放しの窓から気持ちの良い風が入る。
そっとカーテンを覗き込むと、包帯まみれの痛々しい姿の久我が寝ていた。
「…ひでえ」
頭と両手の手首まで包帯が巻かれて、左手の甲に点滴の針が刺さっていた。
顔も、頬に湿布と口の端に絆創膏がついている。
身を乗り出して良く見ると、襟から見える鎖骨の辺りにもガーゼが貼られているのが見えた。
「久我、ゴメン」
俺は起こさないように静かに久我の腕に手を重ねた。
「痛って‼」
「うわ!」
久我の体が跳ね上がり、あちこちが傷むのか声を噛み殺して身悶えている。
「久我?ご、ゴメン!」
「痛った、クソ!あ?東雲?」
「何しに来たんだよ、お前」
「お見舞い」
「来んなよ」
どうもそっぽを向きたいらしい久我が、痛えとぼやきながらジリジリと寝返りをうつ。
「久我、ゴメン」
「あ?」
「俺、何も出来なかった」
「何が?」
「お前が襲われた時、俺何も出来なかった」
斜め向こうを向いた久我が、バーカと言った。
「俺だっていきなりで慌てたのに、場数踏んで無いお前が冷静だったら、そっちのが腹立つっての」
「でも」
「お前が先生や先輩に連してくれたんだろ?ありがとな」
「………」
俺は何も答えられなくて、ベッドの柵を握りしめた。
「しっかし、久々に思い切りヤられたな。クソジジイには、また負けたのかって怒られたぜ」
「俺、すげえ心配だった」
「別にこんなの初めてじゃねえし、骨までいって無い分今回は軽いよ」
「でも」
「気にすんなよ、いつもの事だよ」
「いつもって」
「俺、目立つからしょうがねえんだよ」
不安と心配と安心とで涙目になって鼻をズルズルさせたら、その音を聞いてまた久我がゆっくりと俺の方に寝返りをうつ。
「先輩方のゴリマッチョの中に俺みたいな細いのがいたら、普通狙われるだろ?いつもの事だよ」
「そんな諦めたような言い方するなよ」
「その通りなんだからしょうがねえだろ。俺が先輩方の足引っ張ってんだからよ」
「そういう言い方やめろよ」
久我が俺の顔をじっと見た。
「なあ、この間の返事って、今してもいいか?」
「あ…」
「ゴメン、俺無理だわ」
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