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まったりと
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それは、ほんの一瞬の出来事だった。
瞬きでもする内に、みーちゃんは笑顔になっていて「都雪くんよろしくー」と握手を求めている。
都雪くんもぎこちなくではあるが、それに応じていた。
もちろんそんな雰囲気にナオは気付いていない。
呑気に「みーちゃん可愛いだろ」なんて笑っている。
あれは、なんだったのだろうか?
都雪くんだけならば、まさかみーちゃんにアレがついてるのか、なんてこっそり聞いたりできたけれど、みーちゃんまであんな顔をするなんて…
俺は薄ら寒い物を感じながらも、雰囲気に合わせて無理矢理笑顔を作り、実家へと皆を誘導した。
たかだか3ヶ月程しか経っていないが、実家の前に立つと、すごく久しぶりな気がした。
新興住宅地の中に建てられた、あまり個性の無い二階建て。
どこを見渡しても、似たような家が立ち並んでいるが、ハウスキーパーさんが来てるとは言え、人に住んで貰えない家と言うのは、どこか物寂しく浮いて見える。
鍵を開けて、皆を中へと誘った。
15畳程のLDKに通すと、ナオが大袈裟な声を上げる。
「うわー、広い!綺麗!シゲんちって、実は金持ち!?」
自分の家が特別裕福だと感じたことはないが、貧乏だと思ったこともなかったため、曖昧な笑顔を返すだけにとどめる。
ちらりと都雪くんを窺えば、物珍しそうに辺りを見渡していた。
猫みたいだと思う。
何より、変な緊張感や怯えはなさそうで安心する。
必要な物の電源を入れて、実家の電話から両親に一報を入れてから、やっと俺も落ち着いた。
時刻はまだ昼過ぎ、昼飯を食おうと言う話しになったが、クーラーを入れて室内が快適になってしまったせいか、皆、今から外に出る気も何かを作る気にもなれず、結局ピザを頼むことにした。
バイトもしていない高校生の俺にとっては、ピザは痛いけれど、あの田舎じゃ、特に金を使うこともないので、こんな時くらいはと割り切ることにする。
それからは、ナオとゲームをしたりして、ダラダラと過ごした。
当初の予想通り、みーちゃんに都雪くんはすぐ慣れたみたいで、二人でなにやら楽しそうにしていた。
夕飯はお決まりのカレーで、それも楽しそうに二人で作っていた。
こうして見ると、都雪くんは少し女の子っぽいなとも思う。
まあ、お姉さんがいるから、年上の男よりも、年上の女の方が付き合い易いだけなのかも知れないが—
ただ、気になるのは、やはり初対面の時の二人のあの顔だ。
もしかして、二人は実は顔見知りだったのかも知れないなんて、妄想している内に、格闘ゲームでハメ技をくらい、パーフェクト負けをしてしまった。
本当にゆっくりと、まったりと時間が過ぎて行った。
都雪くんと二人で過ごしていた、あの緊張感はなんだったのだろう。
俺は何かと考えすぎなんだろうか?
勝手に予想して、それを妄想へと膨らませて行く。
こうしてナオみたいに、思ったことをすぐ口にする奴と、みーちゃんみたいに優しくて穏やかな人と一緒に過ごしていると、本当に気が楽だ。
そして、都雪くん。
こうして、四人でずっと一緒に居たいだなんて、今もまた妄想してる。
少し早めの夕食を済ませ、皆で銭湯に行った後、花火をしようと言う話しになった。
ああ、もう一日が終わってしまうのかと、がっかりしている自分がなんだかおかしい。
銭湯に向かう途中、前を歩くナオとみーちゃんに隠れて、都雪くんがこっそりと手を握って来た。
もしかすると、都雪くんも同じ気持ちなのかも知れない。
俺は都雪くんの手を握り返しながら、そう言えば、ここに来てから、服の裾を握られていないな…と、ぼんやり思っていた。
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