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背が低いせいで俺の方が先に海の中に口まで浸かってしまった。
叫んだと同時に海水が口に入ってきてむせてしまう。
「大丈夫かよ。…たく、ホントは怖いくせに」
「ーっ…」
俺の手を引くとまた来た道を戻って行く。
砂浜に着いた頃には足に力が入らなくてその場に座り込んでしまった。
さっきより深く浸かったせいで寒さも倍に感じる。
「おい、大丈夫…」
伸びてきた手をパシンと振り払う。
「生きてちゃ、ダメなんです…俺なんかっ…」
怖くても。
砂浜に落ちる大粒の涙を止める事が出来ない。
…誰かに必要とされたい。
でも無理な事わかってる。
生きたいけど死にたい。
矛盾してる思いに自分でも分からなくなる。
「ダメな事はねぇだろ。少なくとも俺は、お前に生きてて欲しいけど」
「っ、なんで…」
「んー…、知らね。でも、そう思った」
なに、それ…
しゃがんできたその人は俺の頭を撫でてきた。
「…死にたいほど頑張ったんだろ、お前。ならさ、もう自分犠牲にすんのやめろよ」
「っ…」
"頑張った"なんて初めて言われた…
「死ぬのまだ早い。とりあえず、今苦しいならそれから逃げてみ?」
逃げる…
「んじゃ、俺行くわ」
「あっ…」
立ち上がるその人の腕をぎゅっと掴んでしまった。
「め、迷惑なんかじゃ…ないです…」
咄嗟に出た言葉は言いたい事と違って。
掴んでいた手を離す。
「ごめなさ「なら死ぬなよ。迷惑じゃねぇなら」」
だけど今度は俺が腕を引かれて抱き締められた。
他人の体温が、こんなにあったかいなんて知らなかった。
「…また、会えますか?」
「さぁね。でも生きてれば会えるだろ」
生きてれば…
「おーい、葵ー!」
「やべっ、俺行かねぇと」
離れたところから呼ぶ声がして、その人は背を向けて歩き出す。
だけど途中で振り返って…
「またな!」
眩しいくらいの笑顔でそう言われた。
また…
いつか会いたい。
俺が生きてれば…
「…葵さん」
あの人が呼ばれてた名前を呟くように口にした。
さっきより、気持ちが軽いのはきっと…
「もー、葵どこ行って…なんでそんな濡れてんの!?」
「ちょっと海で頭冷やしてた」
「冷やしすぎだろ…」
「バカじゃん!」
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