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友達
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「なあ。教えろよ」
壬生は追及を緩めない。
押し倒された形の顔の両側に、手を突かれているのが凄い圧力だ。侑はたまらず目を瞑る。
「…ごめん…!」
こんな時、語彙の乏しさを痛感する。
ただの謝罪の言語。この場合、心配してくれている友人の気遣いを汲んでいるようで無下にしている保身だけの言葉。
卑怯者の、言葉。
沈黙が場を支配する。
空気が重い。聡い壬生も侑の逃避はきっと判っている。その証拠に彼は「あぁそう」と、今まで聞いたことのない低い声を吐き出した。
壬生は基本的に強い感情を他人に見せる性格ではない。
びっくりして目を開けると、壬生は体を起こして立ち上がりかけていた。影が退き、天井のライトが暗闇に慣れた目に眩しさを倍与える。
「悪かった。忘れて」
こちらを向かず、端的に一言。二言目は「髪ドライヤーで乾かしてくるわ」。
そして開いて閉められる、リビングのドア。
その間、侑には追う気力も、呼び止める余裕もなく。
そして、おそらく壬生との友情が陰ったことを、朧気に理解した。
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