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透子
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滑りやすくなっている石段を注意深く上る。
墓には、どう足掻いても明るいイメージはなく苦手な人も多い。それは主に死を連想させるからだろうが侑は寧ろ安心する。
「…来たよ、透子さん」
それはひとえに、『彼女』が眠っている所だからだ。
境木家の墓は一ヵ所に纏められていて、一般的な長方形の墓石ではなく屋根付きの変わった造りだ。小さな鳥居もありミニチュアな神社のようで、ぶっちゃけ侑はあまり好きではない。
将来ここで眠る事になるだろうけど今から憂鬱だ。何故こんな形にしたのか先祖を小一時間ほど問い詰めたい。
――って、失礼か。今は透子さんの家だし
雨が強くなってきたため意味を成さなくも、素手で屋根の水滴を無造作に落とした。
ポケットに入れていたハンカチで軽く手を拭くと、しゃがんで傘の柄を両膝で挟み固定する。そして目を閉じ手を合わせた。
境木 透子。
慶弥の母親であり薫の妻である彼女は、未分化者だった。
名は体を表す。顔の作りはさほど美人ではないものの、透明感のある人だった。自然体と言うのだろうか、邪気が無く誰とでも親しく、仲良くなれた。
なによりも彼女の舞は綺麗だった。天女が踊っているように軽やかで、生身の人間じゃないみたいだった。代々の未分化者を知る実砂緒も彼女は『別格』と称していた。その分、現任の侑はプレッシャーなのだが。
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