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透子
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楽観視していた訳じゃない。
だけど今回のストーカーの手紙で一切の油断は出来ないと思い知らされた。本当に『ずっと見ています』らしい。
しかし何処で見ているのか。
盗撮器や盗聴器というものが世間にはあるらしいが、探偵じゃあるまいし普通の民間人がほいほい手に入れられるのだろうか。
「また来るね、透子さん。聞いてくれてありがとう」
思考の深みに嵌まってしまいそうになり立ち上がる。
透子の前でストーカーの事なんか考えたくなかった。彼女が穢れてしまいそうで。
背を向けて石階段に向かう。小高い場所にあるここからは村全体が一望できる。
強すぎない雨模様の景色は情緒深い。心がシンとして落ち着く。
――母さんは今日ほづるさんとこだったな…
虎太朗が医者なだけあってカイの家は立派で目立つ。
今頃はお茶の時間だろう。今朝、東雲はおやつにとパウンドケーキを作っていた。
――薫さんと慶弥はもう墓参り済んだんだろうな…。ナギは、元気かな
墓石の前に生けられている花は新しかった。慶弥の家をぼんやり眺め、ナギ宅にも目を移す。
自分の家を通りすぎ、畑、神社が視界を過っていく。
そして村役場を意識が捉えた瞬間、侑の脳内に電流が走った。土と水を跳ねさせ駆け出す。
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