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「遅かったじゃん。茉理ちゃんが起きたって言ってたからすぐに来ると思ったから待ってたんだぜ」
「堪忍えー。ちょい話し込んでしもて、な」
バチッと秋都と鈴兄貴の視線が混じり合う。一瞬2人は息を詰めた様に見合って、すぐに秋都からその視線を外した。
はぁ、と小さく息をついて箸を手に取る兄貴をよそに、秋都は俺に向けニッコリとした笑顔を見せる。
「海都、この御刺身美味しいよ。君も食べてごらんよ」
「あ、ああ。サンキュー……」
差し出された皿を受け取りつつ、鈴兄貴と秋都の顔をちらりと交互に見る。秋都は何も言わない。鈴兄貴もだ。
『お前の言う通り、例え俺が秋ちゃんの気持ち受け取って兄弟以上に……あいつと特別な関係になったとしても。秋ちゃん賢い子やからな、多分すぐバレてまうよ。俺が、秋ちゃんを見てない事……』
あんな話をした後だ。ちょっと秋都の顔が見辛い。
俺は両思いだって思ってたんだ。秋都は鈴兄貴が好きで、鈴兄貴も秋都が好きで。ちょっとしたすれ違いだ、仲直りすればまた昔みたいに戻れるって……思ってたのは俺だけだったのか?
「あ、そう言えばさ海」
もくもくと食事をする俺に、向かいの湊が思い出した様に話を振ってくる。
「さっきってかお昼にさ、しぃくんから電話あったんだけど」
「志貴? なんであいつがお前に電話なんか」
志貴ってのは湊と同じ俺と秋都の幼馴染みの男だ。二つ歳上で関東の大学に進学してからはあまり連絡をとってない。
「なんか、来週広島に帰省するとかなんとか。久しぶりに4人で会おうぜ〜だって」
「思い出した様に現れるなあいつ……」
確か最後に会ったのはあいつが東京に行く時に見送った日か? 電話の一つ寄越さねー奴が今更。
「秋ちゃんにも海にも久しぶりに会いたいってさ。お土産いっぱい買って帰る〜って言ってたぜ」
「ふ〜ん」
「ふーん、って。もっとこうなんかないのかよ」
適当な相槌に近い返答を返せば、湊が不満そうに頬を膨らます。
「なんかって?」
「久しぶりに会えるんだぜ? もっとこうさ、嬉しそうにすればいいじゃん」
嬉しそうに……ねぇ?
「喜んでるよ。あー楽しみだなー」
「うぅわウッソくさ! なんでもうそんなんなのかなー海ってばいつもいつも!」
「まぁまぁ、態度ではこんなやけどな。ちゃあんと心では喜んでんねんて」
な、海都。なんて助け舟を入れてくる鈴兄貴にフンと鼻を鳴らす。
「考えてみ。この鉄面皮がわーいやなんて言うて満面の笑顔で喜んでみぃ。そらもう薄ら寒いでぇ?」
湊はバッと両手をあげて小躍りの様に手を振る鈴兄貴と俺とを見比べ、さっと顔を顰める。そしてポツリと「気持ち悪」と吐き捨てた。
流石にその心からの声に、俺も「コラ待て」と突っ込んみを入れた。
「でも志貴くんが帰って来るとなると、また母さん辺りが元気になりそうだねぇ。この前新しいシステムキッチンにしたばかりで使いやすいって兄さん喜んでたのにね」
味噌汁をすすりつつ話に加わって来たのは秋都だ。
「母さんの事だから、志貴くんの為に美味しい料理を作るって言って……オーブン辺りで何かしちゃいそうだよね」
クスクスと笑いながら、ね、と鈴兄貴に笑いかける。それを鈴兄貴は驚いたような、引きつった顔で見ていた。
そりゃそうだ。だって秋都が鈴兄貴に笑いかけるなんて。しかも兄さん、だって?
「あ……秋都?」
その秋都の様子に薄ら寒いものを感じてどもりながら名前を呼ぶ。そんな俺に秋都はきょとりとした顔で「何?」と返してきた。
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