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✩(2020/03/16追加
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2人でひとしきり泣いて、ひとつの布団にくるまる。秋都を腕に抱きしめて、頭を撫でながらボーッと時間を過ごした。
気が付けば寝てしまってたみたいだ。目が覚めると、真っ暗な部屋が視界に映る。明かりは小さなスタンドライトだけ。
辺りの静かさで、ああもう皆も寝ちまったんだろうなと悟った。
そんな暗い部屋の中。にゅっと伸びた影が部屋の入口から布団にくるまる俺達に近付いて来るのが視界の端に映る。
ゆっくりと、足音を立てずに近付いて来たその影は俺達の頭上らへんへ腰を下ろし座る。そして、2つの掌が俺と秋都の頭へと伸びてくる。
大きな掌が、優しく頭を撫でてくれる。ゆっくりと、労わるように。
それは子供の頃、俺と秋都が大好きだった兄の手だ。褒めてほしくて、舞の稽古を頑張った。よく出来たとこの大きな掌で撫でてほしくて稽古を頑張ったんだ。
なんで、今頃来てんだよ。おせえんだよバカ兄貴。
内心で響く心の声。怒りにも近いその言葉とは裏腹に、胸を包むのは切ない感情だった。17にもなって本当に恥ずかしい話だ。
でもなんでだか、凄くその手に縋って泣きたくて堪らなかったんだ。
ふと見れば、秋都も目を覚ましていた。だけど、膨れつらに近い顔で黙ってその頭を撫でる兄貴の掌を受け入れてた。多分、こいつも俺と同じ感情なんだろうなと漠然と思った。
「な。兄ちゃんも一緒に寝てもええか?」
掠れ気味の低音が、静かに問い掛けて来た。
俺は秋都の顔を見る。
秋都は俺の顔を見た。
少し黙ったまま答えを出さずに居たけれど、秋都がのそりと起き上がり、俺との間に1人分の隙間をあけた。それに連れて俺も少しだけ動いて隙間を作る。
その間に滑り込む様に大きな身体が入ってくる。
鈴兄貴は身体を横たえると、おいでおいでと俺達2人に手招きをした。それに誘われる様に、左に秋都。右に俺といった風に鈴兄貴の身体に抱きつく。
細身に見えるのにガッシリと硬い胸板に、2人で枕の様に頭を乗せると、チュッとキスを落とされ先程の様に頭を撫でてくれる。
その後に俺たち3人に会話はなかった。
ただそこにあるのは、優しく頭や背中を撫でてくれる掌だけ。
ふぅ……、と2人で安堵の息を着いて目を閉じれば、意識はすぐに眠りの淵へと落ちていった__。
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