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どうすべきか
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〝最近姉ちゃんが元気ないんだ。海兄ちゃん何か知ってる?〟
そう幼馴染みの弟に訊ねられたのは三日も前の事だったか。
仔犬の様にくりんとした大きな瞳でこちらを見上げて来る樹に、俺は「そうか」だなんて当り障りのない答えしか返せなかった。
何か知ってる? なんて聞いてきても、実際は俺が原因だって事を樹は気が付いているはずだ。こいつは湊と違って勘が鋭いから。
そんな中、湊が暫く学校を休んでいると言う話を近衛から伝え聞く。
「そうなのよぉ、もう1週間休んでるみたいでね。電話してもただの風邪だから大丈夫だとしか言わないし」
湯気の立ち上るマグカップの中身をスプーンでくるくると混ぜながら大袈裟に溜息をつく近衛に、横でせっせとクッキー作りに勤しむ鈴音兄貴が「そうなん?」と生地を捏ねつつ相槌を返す。
「あの子心配かけたくないからっていつも何でもないとか大丈夫とかしか言わないから心配で。てんちょさん何か聞いてない?」
「ん〜樹からはなんも聞いとらんな。あいつも今映画の出演決まってバタバタしとるっちゅーてこないだトナミが言うてたから。俺も暫くおうてへんし」
「そう……やっぱ1回あの子の家に行ってみようかしら。どっかの誰かさんも何にも知らないみたいだしぃ?」
2人の会話を二つ程離れた席でそ知らぬ顔で聞いていた俺へ近衛の視線と共に刺々しい言葉が向けられる。勿論それに俺は何も返さず、コーヒーを口に含みつつ見ていた雑誌のページをぺらりと捲った。
そんな態度が奴には気に食わなかったらしく「なによあの態度!」と地団駄を踏みながら兄貴の袖を引っ張る。
「おっ?」
突然服を引っ張られた兄貴は手に持っていたバターベラを落としそうになるのをなんとか堪え近衛を見やる。
「こらこら、菓子作っとる時に俺をいろたらあかんって教えたやろ円のひぃさん。出来立て食わしたらへんぞ」
めっ! とまるで小さい子を叱るようにいって、ペシンと袖口を掴んだ近衛の手を振り払った。
「だってあれよあの態度! あれでよくあの子の彼氏面出来るわよね? 信っじらんない!」
「そんなん海都に求める時点でひぃさんもまだまだやな。あいつに普通の男女の恋愛求めたらあかんて。女なんて取っ替え引っ替えやし、いつも周りに四・五人侍らして歩いとるし」
「オイコラマテ」
流石にそれは言い過ぎだろこのバカ兄貴。いや、あながち間違いではない……けど。
「やってほんまの事やん。話は聞いてんでぇ? お前こないだクラスメートの子ぉ妊娠させてもた言うて学校で騒ぎになったらしいやんか」
「は? どこで仕入れたんだよそんな話」
それはつい先日の話。いきなり夫婦らしき男女が夜家に怒鳴り込んできたかと思えば「おたくの息子がうちの娘を妊娠させた」と言い出した。勿論おたくの息子は俺の事で、怒鳴り込んできたのはクラスの女子の親だったんだが……。
俺が何の事だと聞けばしらばっくれるなと怒鳴り散らされ、誰の事だと訊ねれば彼女の名前も覚えないのか馬鹿者めと野次られる。
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