アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
☆
-
ごめんね、怒っちゃった帝?
「えへっ☆」なんて聞こえてきそうな顔で謝られたとこで許すとでも思ってるのかこの女は。鈴兄貴への睨み攻撃を近衛へと流せば、近衛の笑みがヒクリと歪む。暫くそのまま無言で固まる二人を交互に睨み付けていると、ふいにカランカランと誰かの来店をしらせるドアベルの音が鳴り響き鈴兄貴がバッと垂れていた頭を持ち上げる。
「お? なんや湊のひぃさんやないか」
そんな鈴兄貴の言葉の後に「やっほー鈴ちゃん」と続いた聞きなれた幼馴染みの声に、今度は俺がピシリと動きをとめた。
「湊? あんたどうしたのよ。体調悪いって言ってたから今日家に行こうと思ってたのよ」
続いて近衛が立ち上がって湊の傍へかけていく。それを視線だけで追っていくと、上下スエットというラフな姿の湊とバチっと視線が交じる。
近衛の話は嘘じゃなかったらしく、確かにどことなく気だるげな表情の湊に俺は眉を寄せた。
「ごめんね心配かけて。ほんとただの風邪だったんだけどさ、家にこもりっぱなしだしお腹減ったしでちょっと散歩がてら出てきたんだ。家になんもなくてさぁ、鈴ちゃんになんか作ってもらおっかなって」
「なんや、そんなん電話してくれば持ってったるのに」
「そう思ったんだけどね。歩きたかったからさ」
えへへ、と頬をかく湊に鈴兄貴は仕方ないなと小さく溜息をつきつつ「まぁええわ」と続ける。
「やったら卵か温野菜のお粥さんでもこしらえたろ。座り」
「うん」
鈴兄貴に促され近衛の座っているテーブル席に腰掛ける湊。その俺との間を遮る様にわざとらしく近衛が腰掛けた。
おい、仲直りしろっつったのはどこのどいつだよと見れば「ちょっと待ちなさいよ」とでも言いたげな顔で近衛がちらりと俺に視線を寄越す。
「ほんと大丈夫なの? あんまり顔色よくないわよあんた」
「大丈夫だって。風邪だって言っても微熱が続いてるだけで咳はもう止まったからさ」
「微熱? 微熱があるくせにこんなラフなカッコで出てきたのあんた!?」
「え、え、だってこれ結構温かい……ぜ?」
「それは熱があるからでしょ? もーあんたって子は。ちょっと帝それ貸して!」
「は? おい!」
言うが早いか。椅子の背もたれにかけていた俺の上着をひったくると湊の肩にかける。つか自分のを貸せよ! と言いかけたが再度パチッと湊と視線があって、その言葉は俺の口から出る事はなく喉の奥への飲み下される。代わりに軽く舌打ちを返して既に温くなったコーヒーを口に含んだ。
湊は肩にかけられた俺の上着をどうしたものかと考えているのか、ソワソワと落ち着かない様。それに「いいよ、かけてろ」と言えば「う、うん」と上擦った返事が返ってくる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 38