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チッチッチッ。
店内の壁に掛けられた時計の針の音が妙に大きく感じる。運ばれて来たお粥を近衛と他愛ない会話を交わしながら食べる湊をチラリと伺いながら冷たくなったコーヒーを一口飲む。さっきっからそんな動作を繰り返して繰り返して繰り返して……何やってんだ俺はと内心何度突っ込んだ事か。
残り少なくなったコーヒーをあおる様に飲み干すと、小さく息をついてガタリと立ち上がる。その音に近衛と湊の視線がこちらへと向けられる。
「兄貴」
店内の奥に併設されたキッチンへと消えた兄貴に呼びかける。クッキーを焼いて来ると奥へと消えてもう30分経ったか。ほのかに甘い匂いが店内にめぐり始めたからそろそろ店に出てくるはずだけど。
「なんや? 呼んだか」
やや間を空けてパタパタという足音と共に暖簾から顔を覗かせた兄貴に、コーヒー代の三百円を放り投げた。
「帰る」
短く言って入口へと足を向ける。ちょっと! と焦った様な声音で止める近衛を無視しドアに手をかけた時。
「か、海!」
ガタリと立ち上がる音がして振り向けば、湊がこちらへと掛けて来る。それを無言のまま見ていれば駆け寄った湊が遠慮げに俺の袖を引っ張った。
「俺も帰るから送ってくれない?」
「別に、いいけど」
「ほんと? じゃあちょっと待っててね鈴ちゃんお会計……」
言って戻りかけた湊の腕をグッと掴む。え? と振り返る湊を他所に鈴兄貴に「ツケといてくれ」と言えば、兄貴は手をあげて「トイチやで」とにこやか笑顔で返してくる。それに俺は「ぼったくりかよ」と笑いながら湊の腕を引きつつ店を後にした。
店を出る間際、近衛がにやにやと気持ち悪い笑みを見せていたのはこの際見なかった事にしよう____。
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