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考えるだけでどっと疲れが押し寄せてくる。宿に着いたら少しだけ休ませてもらおう。
なんて考えている間に眼前に大きな屋敷に近い家屋が見えてくる。海を前に砂浜に隣接する様に建てられた建物は一瞬ぎょっとする程異質に見えたものの、玄関前に並べられた魚の干物を干す台がなんとなくその異質さを弱めてくれた。
その台の近くで、割烹着を来てせっせと干物を干す老人の姿を見つけると、近衛が「あ、おばあちゃーん!」と駆け出した。
近衛の声に反応した老人が状態を起こす。そしてしわしわの頬を緩め「あらぁ」と微笑んだ。
「いらっしゃい、待ってたよ円ちゃん」
「久しぶりおばあちゃん。豊と蘭もう来てる?」
「ああ来とるよ。さっき二人で買出しに行ってもらったからそろそろ帰ってくると思うけど。後ろの子達はお友達かい?」
近衛の横からひょっこり顔を覗かせ、俺達に笑いかけてくる顔は、どことなく奥村に似ていた。多分あの人が奴の言っていたばあちゃんなんだろう。
「そうよ。あの女の子が親友の木之本湊。あの二人が前に話した神宮兄弟」
神宮、その名前を聞いた途端ばあちゃんの顔がぱあっと破顔する。
「あらあらまぁまぁ!」
そう声を上げつつ俺達の方へと近付いてくると、手をつかんでぶんぶんと上下に振った。
「あんた達がシェリーちゃんの弟さん? あらぁ、あらあらあら!」
大阪のオバチャンみたいな反応をしながら、俺と秋都の顔を交互に見る。
俺達は俺達で初対面の相手の口から出た姉の名前に顔を見合わせた。
「えと、姉さんを御存知なんですか?」
秋都が首をかしげ問うた言葉に、ばあちゃんはうんうんと大きく頷くと掴んだ掌をギュッと握る。
「当たり前じゃないか。自分の孫の名前を知らないばあちゃんがどこにいるってんだい」
「「孫!?」」
俺と秋都の声が重なる。
「孫って言っても形だけだけどね。血は繋がってないから」
血は繋がってない……?
今度は俺が首を傾げる。それを傍から見ていた近衛が「わからない?」と会話に加わってくる。
「蘭のお母さんって、シェリーさんとてんちょさんのお母さんなのよね」
その言葉に、ああそう言えばと二人同時に頷いた。
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