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マキ様と百目鬼さん①
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【マキside】
12月23日
夜23時を過ぎたので、修二たちとの楽しい楽しいクリスマスパーティーはお終い。
僕は今、修二のお兄ちゃんの奏一さんの車に乗っけてもらって僕の家に送ってもらってる。
僕は、奏一さんが大好き。優しいけど厳しくて、僕のこと修二たちと同じように可愛がってくれて、僕が落ち込んでた時、いっぱい話を聞いてくれて、いっぱい励ましてくれて、いっぱい叱ってくれた。
こんなお兄ちゃんがいるなんて修二が羨ましい。
お兄ちゃんって、家族って、こんな良いものなんだなぁって、修二と奏一さんを見るたび思う。
僕の家族は、健在だけどいないようなもの。
なんでかっていうと、僕は愛人の子供で、引き取ることのできない実父が親戚に預け、叔父さんである清史郎さんに育てられた。兄弟は、血の半分繋がった兄がいるけど、絶縁状態。
多忙な清史郎さんは、可能な限りは時間を作って愛情を持って接してくれたけど、僕は普段、お手伝いさんと2人きりだった。
それが寂しいと思ったてた訳じゃない、それが僕の普通。
修二やむつや華南や奏一さんと知り合って、百目鬼さんと出会って、僕の環境と心は大きく変わった。
みんな、温かいんだ。
修二やむつや華南は友情に熱くて、恋人思いで一途でラブラブで、僕の理想そのもの。
3人を見てると幸せな気持ちになる。
羨ましいなぁって思った時、あぁ、僕はこんな風に愛したり愛されたりしたいんだなぁって気付いちゃってちょっと切なかった。
そんな時、百目鬼さんに出会った。
百目鬼さんは、修二に失恋したばかりで、その一途すぎる愛情は凶暴で暴走して、本人だけではどうすることもできず、葛藤して苦悩してた。
自分といつまでも戦って葛藤して、それでも好きな人への気持ちを消せなくて苦しんで、そんな一途で凶暴な百目鬼さんを可愛いと思った。
同時に、欲しいと思ったんだ、そんな一途な変わらない愛情が……
百目鬼さんは体は大きいし、顔は怖いし、言葉は乱暴だし、パッと見はヤクザさんみたいな人。
だけど、中身は驚くほど不器用で優しくて、誰より一途で誠実なのに可愛らしい人だった。
自分の中の凶暴な感情を抑えることができなくて、さらに本人の不器用さが拍車をかけ、本当の百目鬼さんを知らない人はヤクザみたいだと恐れてたけど、そんな事ない。百目鬼さんは、不器用なだけ、一途なだけ、好きな人に好きになってもらいたいだけ。愛情に飢えたライオンさん、ライオンだと思い込んでるティーカッププードル。つぶらな瞳で自分はライオンだ危険だと訴えて人を遠ざける。それでも、好きな人への気持ちが止められなくて側にいたくて苦悩する。可愛い可愛いティーカッププードル。
百目鬼さんは、僕にいろんな事を教えてくれた。
僕をガキだとすぐ怒って子供扱い。嘘ばかりつくなと怒鳴る。なのに、朝ごはんは抜くんじゃない1日の始まりなんだからと言ったりとか。ご飯は三食好き嫌いしないできっちり食べろとか。どんなに忙しくても、夕食は一緒に食べるとか。お風呂上がりは髪の毛乾かしなさいってドライヤーかけてくれて。裸で寝るなとパジャマを買ってくれ、腕枕で寝かしつけてくれる。夜の一人歩きは危ないとか。1人でなんでもしようとするなとか。強がるなとか。ヘラヘラするなとか。もっと甘えろだとか。
誰かと一緒にいる事の温かさを、教えてくれた。
それは幸せな事で、だから百目鬼さんを益々好きになるんだけど…。同時に怖さも覚えた。
温かさを知ったら、もう、元には戻れない。
ぬくぬくのコタツを覚えたら、もう、外へは行けない。
人と一緒に居る温もりを、百目鬼さんに教えてもらった。
百目鬼さんが好き
百目鬼さんが大好き…
好き過ぎて…ちょっと怖い
こんなに幸せな事ばかり知ってしまって、百目鬼さんに側にいてもらえて嬉しくて、嬉しくて嬉しくて幸せなのに、無くなったらどうしようって思っちゃう。
失ってしまう事を考えると、怖くてたまらない…
修二は、どうやってこの気持ちを乗り越えたのかな…。
幸せだけどちょっと怖い…
修二も、未だにそんな気持ちを抱えてるのかな?
むつと華南に毎日毎日愛されて、怖いなんて感じる暇ないのかな?…。それとも、毎日毎日好きだと言われて、怖さもなくなっちゃったのかな?…
そういえば、修二たち、今頃、僕のあげたプレゼントで楽しんでくれてるかな?♪
今頃修二は、むつと華南にたっぷり可愛がってもらってるんだろうなぁ♪
羨ましい♪♪
プレゼントといえば、奏一さんは、僕のあげたクリスマスプレゼントのネクタイを凄く喜んでくれて、直ぐに付けてくれた。今隣で運転してる奏一さんの胸元には、僕が選んだ柄のネクタイが締められてる。
大人でクールな奏一さんにと思って選んだ柄、自分で選んでおきながら、奏一さんに似合っててドキドキしちゃう。
お兄ちゃんってこんな感じなのかな、家族にプレゼントをあげるってこんな風にドキドキソワソワしちゃうのかなって勝手に妄想して、違う色の方が良かったかな?もっと違う柄が良かったかなって思考が止まらず、僕は奏一さんの付けてるネクタイから目が離せなかった。
奏一「マキ、ネクタイありがとうね、凄く気に入ったし嬉しいよ。だからそんな不安そうにしないで」
運転してて前を見てる奏一さんにも気付かれてるくらい、僕は変な顔して奏一さんのネクタイを凝視していたみたいで、奏一さんがクスッと笑った。
マキ「…僕、そんな変な顔してた?」
奏一「気に入ってもらえたかって心配で心配でたまんないって顔してた」
マキ「…だって、奏一さんオシャレだから…」
もごもごする僕に、奏一さんは優しく笑って、運転席で進行方向を見たまま「マキの方がセンスいいよ」って僕の頭を撫でてくれた。
奏一「あいつには何か用意したの?」
マキ「百目鬼さん?…百目鬼さんにはね…プレゼント買うなって言われたんだ…」
思い出すとシュンとなる。
百目鬼さんは、学生の僕がお金を使うことを嫌がる。
実はついこないだの百目鬼さんの誕生日に、腕時計をプレゼントしたんだけど、それがオーダーメイドで10万以上するってバレて、クリスマスプレゼントは買っちゃだめだって怒られた。
僕は、高校生の時からずっと時給の高いバイトをしてたから、お金はいっぱい持ってる。自分のお金でちゃんと買ったのに、百目鬼さんは「ガキがそんな金の使い方すんな!もっと自分のために使え!」って許してくれなかった。
クリスマスプレゼントも、いろいろ考えてたのになぁ…。
奏一「…、マキは、本当にあいつのことが好きなんだね」
マキ「うん♪大好き♪」
奏一「だったら、買わなきゃいいんじゃない?何か手作りしたら?料理の勉強してるんでしょ?」
奏一さんが優しい声でアドバイスしてくれて、とっても嬉しいんだけど、とんでもない…
マキ「無理無理!まだまだ人に食べさせられるものじゃないから!」
奏一「そう?、マキが一生懸命作った物ならなんでも美味しいと思うよ」
マキ「駄目だよ!百目鬼さんは、不味いもの作ってもきっと美味しいって食べてくれちゃうもん!たとえそれが砂糖と塩間違えてたって、ワインと梅酒間違えてたって食べてくれちゃうもん!お腹壊したら大変じゃん!」
そう叫んだら、奏一さんが噴き出した。
奏一「ブハッッ、ワインと梅酒って!間違えたの! ?」
マキ「うぅ…」
奏一「あっ、ごめんごめん、マキを笑うつもりじゃなくて、それをあいつが美味しいって食べたのかと思うと…、あの顔で…クックッ…」
マキ「食べさせるつもりはなかったんだよ、でも、料理の練習してたら帰ってきちゃって、変な匂いするからやめようって言ったのに、百目鬼さん、食べ物は粗末にしないって聞かないし、全部食べちゃうし…」
だから、暫く料理は作りたくない。
百目鬼さんは、優し過ぎるんだ…
奏一「…。なら、手紙でも書いたら?マキがどうしても何かしたいなら、なんでもいいからしてみなよ、買いさえしなきゃ、あいつも怒らないんじゃない?」
マキ「手紙…」
奏一「メッセージカード作って、マキの思ってること書けばいい。俺も小さい頃の修二によく貰ったけど、案外嬉しいんだよ、いつもありがとうの一言でも、手作りカードに書いてあると嬉しいもんだ」
マキ「手作りのメッセージカード…」
百目鬼さんに言いたいことはいっぱいある。
感謝の気持ちと、どれだけ僕が幸せかってことと、どれだけ百目鬼さんのことが大好きかってこと…。
でもでも、せっかくのクリスマスなのに、手紙だけじゃさみしくないかな?…
そうこう悩んでいるうちに、奏一さんの車は百目鬼事務所に着いちゃった。
マキ「奏一さん、送ってくれてありがとうございました。それに、僕にまでクリスマスプレゼントくれて、手袋ありがとうございます」
奏一「いいえ、こっちこそ、ネクタイありがとうね」
奏一さんが、僕のあげたネクタイを指差してニコッと笑顔で答えてくれた。奏一さんの笑顔がカッコ良くて思わず照れたら、奏一さんは僕の頭を撫でてくれた。
奏一「明日は、百目鬼と一緒に過ごすの?」
マキ「あぁ、クリスマスは百目鬼さん居ないんです」
奏一「は?居ない?」
奏一さんが驚いて目を丸めてる。
僕はニッコリ答えた。
マキ「百目鬼さん、明日のクリスマスイブとクリスマスは忙しくて帰ってこれない予定なんです。とっても優秀な探偵さんだから忙しくて♪」
若干険しい表情になった奏一さんが、車の窓から見える百目鬼事務所を見上げた。二階はもちろん、自宅の三階も電気が点いてなくて真っ暗。
奏一「え?今日は居るの?…」
マキ「今日は、夜中に帰ってくるって言ってました♪」
奏一「…。なんだ、だったら修二のところに泊まれば良かったのに」
マキ「ウフフ♪ダメですよ、修二たちの邪魔になっちゃうし♪」
僕の言葉を聞いた瞬間。奏一さんの顔が真っ赤になって複雑な表情になる。
弟が男同士でどうのっていうのはアレかもだけど、奏一さんは、僕らより7つも上なのに、初心なんだよねぇ、こういう話に慣れてないというか…。
マキ「それに、少しでも百目鬼さんと一緒にいたいし♪」
奏一「……そっか」
複雑そうな顔した奏一さんは、仕方がないなって感じで肩を落とし、また僕の頭をヨシヨシ撫でた。
奏一さんの言いたいことは十分伝わってる。だから僕は、笑顔で答える。僕は百目鬼さんが大好きだから。
マキ「うん♪。奏一さん、今日はありがとうございました♪おやすみなさい♪」
奏一「…おやすみ、マキ。またね」
車で去る奏一さんを見送った僕は、百目鬼事務所の三階の電気の点いてない自宅に帰った。
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