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俺たちの始まりは【華南】16
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修二「…ずっと様子がおかしかったのは、それ?」
呆れられた呆れられた。
修二に呆れられた。
修二「もぉ、馬鹿だなぁ。気にしてないのに」
優しく微笑みながら息をついた修二。
でも、でも、そんな風に言ってもらえるのは惚れ薬が効いてて、俺のこと何でも許してくれる状態だから…
あぁ、やっぱ惚れ薬なんか飲ますんじゃなかった…
惚れ薬で甘やかしてもらえても、何にも嬉しくない…
修二「…、まぁ、正直には、最初は少し気にしたけど…、僕ちゃん知ってたから、華南もむつもそういうので選んだりしないって」
でも…切っ掛けはSEXだった。
柔らかくて、エロくて、涙目でとろける修二を、感情的な修二を欲しいと思った。
修二「そんなこと言ったら、みんなそうでしょ、むつだってSEXが切っ掛けだし、僕ちゃんだって…」
華南「え?」
修二「2人に抱きしめられたら、ずっと側にいたいって欲が出た」
華南「それは…」
肉体的じゃなくて、精神的な話だろ…
俺のはマジで…
歪んだ俺の表情に、修二が優しく俺の名前を呼んでくれて、心の中で思ったことを口にできない。
情けなくてカッコ悪い俺を…
これ以上修二に呆れられたくない…
修二「………もぉ、そんな顔しないで、聞いて華南。僕もちゃんと言うから」
華南「…」
修二「僕が華南を初めて意識したのは、中1の時」
華南「えっ?!」
中1?
俺と修二が話すようになったのは中2でクラス被ってからのはず。それまでは、むつの隣を歩いてるのを見かける程度だったのに?…
修二「華南は覚えてなかったけど、中1の時、学校の裏庭で何度も会ったんだよ」
華南「え?裏庭?」
修二「覚えてない?、授業さぼった具合悪そうな子、何度も介抱してくれたろ?」
華南「えっ?…、ぁ、…ぇえ¨!?」
介抱!?
思い当たる記憶が一つだけある。
でも朧げで、ハッキリは覚えてないって言ってもこれだけは言える。
アレが修二なんて信じらんない!?
華南「学校の裏庭でいつもうずくまってた奴?!
いつもジャージ姿で植え込みのところに隠れて、長い黒髪を貞◯みたいに垂らしてうつむいてた奴!?」
修二「それ、僕ちゃんだよ」
華南「ぇえ¨ッ!!嘘だ!!」
アレが修二!?
貞◯みたいに暗いジメッとした如何にも病んでますって感じの女だと思ってた。
学校でいじめらたのか、今にも自殺しちまいそうな負のオーラがすごくて放ってとけなかった。
修二「女の子だって勘違いされてるとは思ってたよ。でも、あれ、僕ちゃんなんだ。中1の時は黒髪だったから、さっきのアルバムにも写ってたよ」
華南「いやいやいや、見たけど、あの裏庭の奴と修二じゃ結びつかねぇーよ、違いすぎだろ」
修二「ふふっ、うん、別人みたいだよね、僕ちゃんもそう思う。あの時がそうなんだ、…、百目鬼さんに監禁されて兄貴に助け出されて、むつに外の世界へ連れ出してもらった直後だったから」
華南「えッ!?」
あの時が…
修二「僕ちゃん、むつに勇気をもらって学校に来たけど、どうしても駄目だったんだ」
華南「………もしかして、人がか?」
あの時、裏庭でうずくまってた奴は、極度の対人恐怖症だった。俺が遠くから話しかけただけで気絶しそうなくらい震えて吐いちまった。
修二「正確には、男の人の集団……かな」
遠いい昔、今は笑って話せるって穏やかな目をする修二。百目鬼さんと和解したからと言って、修二が与えられた心の傷は消えてない。
笑ってるが本当に大丈夫?俺には修二の曇った瞳が分からない…。悔しい、今も昔も何も気付いてやれない。
中1の俺は、一番上の兄貴が医療関係を勉強してたこともあって、心のケアなんかを聞いたことがあった。
だから、裏庭にうずくまってた奴の怯え方が尋常じゃなくて〝自殺〟しちまうんじゃないか、誰かにいじめられて男にレイプでもされたんじゃないかと思ってた。
裏庭にうずくまってた奴が女の子だと思ったからだ。
修二「むつは、僕に何があったか知らない。兄貴は僕がそんな風にトラウマが出来てたって知らなかった。僕が必死に隠したから。誰にも言えなかったし言いたくなかった。幸い中学の保健医は女の人だったし、1年の時はむつとはクラスが別だったから、登下校さえ一緒にいれば、むつにもバレなかった」
華南「何で言わなかったんだよ、奏一さんには言って助けてもらうべきだったろ!あん時のは尋常じゃなかったぞ!自殺しちまうんじゃないかって気が気じゃなくて!」
修二「…そんな風に見えてた?」
華南「だって、全く側に行かせてくれねぇし、髪の毛で顔見えないし、むしろ顔を上げようともしないし!」
修二「そうすればもう来ないと思ってたんだ」
華南「いやいやいや、放っておけるかよ!」
修二「ふふっ」
華南「な、何で笑うんだよ…」
修二「…あの時、僕ちゃん誰にも自分のことを話せなかった。話したら、軽蔑されると思ったから…。だけど、あの時中庭で会った華南は、あの時の僕が最初でしょ?、むしろ、むつの隣に居る僕ちゃんだと気付かれないようにしたかったから、華南が僕ちゃんを、誰かにいじめられた女の子だと思ってるならそう思わせておこうって思ってた」
いじめられて、誰かタチの悪い奴にレイプされてたら顔を見られたくないんだろうと俺も思ったから、あえて無理に顔も見なかったし名前も聞かなかった。俺が勝手に会いに行って、勝手に喋ってた。
修二「華南は、最初はあたふた色々聞いてきたけど、空気を察して垣根の向こう側で昼寝するって言い出して寝転んだよね」
そうだ…
それを知ってるってことは、マジにあの時のは修二なのか…
信じらんねぇ…
修二「それから、〝お前の居場所を奪うつもりはない、静かだから昼寝さして、何もしねぇーから。俺がいりゃ虫除けになるぞ〟って言って、ほぼ毎日顔をだしたよね」
そうだ。
俺が来たことで、居場所を奪ったらマズイと思って…
修二「あの時の僕は、教室で集団でいる事が耐えられなかった。みんな友達だから大丈夫だっていうのは分かってたけど、体が強張って吐き気が止まんなくて…、でも、学校休めば兄貴にそれがバレるし、むつが迎えに来てくれるのが嬉しくて、会いたくて、無理に学校に来てた。でも直ぐに具合悪くなっちゃって…」
華南「…マジか…」
修二「最初は、華南のことも怖くて…。でもさ、華南はずっと優しくしてくれて、話せないし近づけさせない僕に、〝昼寝さして〟って毎回声かけてきて、何も聞かないで側に居てくれた」
華南「なんか…ごめん。…気が利かなくて…」
修二「違うよ。華南は待っててくれたんだ。僕の心が追いつくのを、僕の心が華南と話せるようになるまで待っててくれた」
あの時。ことの重大さは分かってた。
だけど、俺は、うずくまってた奴を慰める言葉を持ってなかった。『今日は暖かいな』とか『昼飯食った?』とか『授業退屈だな』とか、当たり障りのない事一言くらいしか声かけらんなくて、ただ待つことしか出来なかっただけ…
修二「…ねぇ、華南。待つって、誰にでも簡単に出来るもんじゃないんだよ。むつなんか全く待てないしね」
華南「いや、でも、むつはアレがいいんじゃんか」
修二「うん、そう。アレはむつの良さ。真っ直ぐ止まらない、それがむつの良さ。そして華南は待っててくれる。ずっとずっと相手の気持ちに寄り添って待ってられる。それが華南の良さ。僕はあの時、華南を好きになりたいと思った」
華南「えっ…」
思わぬ告白に驚いた。
知らなかった。修二がそんな風に…
修二の瞳は穏やかで、驚いて口が開いたままの俺を見て優しく微笑んだ。
気を使って言ってる様には見えないから、修二の本当のことなのかもしれないが…
修二「あの時の僕ちゃんはボロボロで、むつを好きなのをやめようと思ってた。誰か他の人を好きになりたいって、そしたら、むつとはずっと親友でいられるのにって。…、カッコイイ華南が現れて、ずっとずっと口もきかない僕ちゃんなんかを優しく気遣って…」
惚れ薬のせいで心を晒してくれてるのか?
…〝なんか〟って言うなよ…
修二「あの時、華南を好きになれたらって思った。好きになってもらおうなんて贅沢は思わない。ただ、華南カッコよかったし、血管浮いてる大きなゴツい手で抱きしめられたら、あの優しくじっと待ってくれる腕の中に身を預ける事ができたら、どんなに安心できるかなって思った…。華南の腕の中で、いっぱい優しくしてもらえて抱きしめて貰えると良いなって…」
華南「いっぱい優しくするし、嫌だって言っても抱きしめて離さない!」
吹き出るように沸く愛しさで強く抱きしめた。
修二の身体が軋むくらい強く、強く抱きしめたら、修二も俺を優しく抱きしめ返す。
今分かった。
百目鬼の言ってたのは、理想論じゃない。
『我慢するな、無理させるな』
修二には必要なんだ。
修二には、それが大事なんだ…
あぁクソッ…、百目鬼さんにアドバイスして貰っといてアレだけど。
悔しい…、百目鬼さんは修二をよく知ってる…
悔しい…、こんなに修二と一緒にいるのに…
百目鬼さんと修二が関係してた半年間が…深くて…
傷付けたのは百目鬼だけど、やっぱ支えたのも百目鬼なんだって…
すげー悔しい…
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