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アルバム絵本
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着物のよく似合って、ガタイの良い大柄で、青ヒゲを厚化粧で隠してる、親しみやすい誰にも優しい菫ママが、その大きな体で、その大きな眼差しで、このお店のように温かい懐の広い優しい微笑みを僕に向ける。
菫「神をもっと困らせてあげて、もっとただの馬鹿にしてあげて、マキちゃんが我慢してること全部、あいつに叶えさせてやって」
菫ママは、まるで僕の中の幼い部分に話しかけるように、柔らかい口調でそう言った。
いつも神さんを温かく見守ってるその眼差しと同じに、僕のこと温かく包むように…
マキ「……我慢なんか…」
急に中身に触れられた気がして戸惑った。
我慢なんかしてない、って言おうとしたら、菫ママの関節の太い指に付けられた綺麗な付け爪のキラキラ光る人差し指が、僕の唇に触れた。
菫「いーいマキちゃん、ダメ男は、甘やかしただけじゃつけ上がるの。成長させたいなら頼ってあげる事、頼って褒めて、出来るんだって教えてあげるの」
僕はいつも、してもらってばかりで…
菫「ダメダメ、そんな可愛い瞳でウルウル困った顔してもダメよ。マキちゃんは散々神を甘やかしたの、だから今度はマキちゃんが甘える番。神みたいなダメ男がマキちゃんに頼りにされてるって自信を持たしてあげるの」
マキ「僕は…」
菫「いい女は、動いちゃダメ♪どっしり構えて座ったまま男を転がさなきゃ♪」
ウインクしながらそう言った菫ママ。
流石スナックのママと言うべきか、長い間百目鬼さんの友達だと言うべきか。
僕は神さんに甘やかされてばかりだと反論したかったけど、菫ママの言うことは間違ってはない。自信をなくしてる人に、あえて頼ってやってもらって自信を持ってもらうというのは、授業でも習ったことがある方法…。
菫「マキちゃんコップが空ね、次は何飲みたい?」
マキ「あっ、…。オレンジジュースを…」
菫「やーん、そんな可愛らしい困った顔してると、食べちゃうぞ♪」
大柄な菫ママが、ガバッと抱きついてきて、ママの腕の中にスッポリ埋まっちゃった。
菫ママは愛おしそうにほっぺをグリグリ擦り付けるけど、青ヒゲがジョリジョリしてちょっと痛ぁーい。
百目鬼「菫ッ!!何してんだ!!」
すぐさま百目鬼さんに見つかって、僕から菫ママを引き剥がす。菫ママは口をとんがらがせて「ケチねぇ」ってむくれたけど、怒った百目鬼さんは問答無用で僕を抱えて菫ママのお店を出ちゃった。
ドアが閉まる寸前、なんだか嬉しそうに手を振る菫ママと呆れたようにしながら笑う賢史さんが見えた。
百目鬼「ったく、テメーは誰にでも襲われやがって」
僕を担ぎ上げズンズン歩きながら、百目鬼さんは子供みたいに怒ってる。
菫ママや賢史さんにとって、こんな風になる神さんが、嬉しくてたまらないんだ。
マキ「んふふ♪、モテモテなのは僕じゃなくて神さんなんだけどな…」
百目鬼「は?なんか言ったか」
マキ「ふふ♪なぁーんでもない♪♪僕が襲うのは、神さんだけだよ♪♪」
抱えられてるその腕にぎゅっと抱きつくと、神さんは耳を赤くしながら照れて怒った。
百目鬼「バッ!…馬鹿野郎ひっつくな!」
マキ「ふふ♪僕のせい?神さんが僕を抱っこしてるんだよ♪」
百目鬼「ッ!、降りろ!」
マキ「やぁん♪、もぉおしまい?」
自分で抱き上げた癖に、僕を捨てるように降ろす神さんは、乱暴な口調と違って耳が真っ赤。
百目鬼「うるせー、自分で歩け、歩かないなら初詣連れてかないぞ」
マキ「えー、やだやだぁ、初詣行きたい!」
百目鬼「なら、大人しく歩け」
神さんは〝勝った〟って顔してサッサと歩き出す。
子供っぽい神さんに、僕は笑っちゃうんだけど、神さんはとってもとっても不器用で、でも優しいから…
今さっき離れて歩けと言ったのに。
離れて歩いたら歩いたで、僕が落ち込まないか気になってチラチラ振り向いちゃうんだ。可愛いなぁ♪
初詣の神社が近くなると、すごい人混みで、神さんは眉間にしわ寄せながら僕の前に手を差し伸べてくれた。
百目鬼「迷子になられちゃ困るからな」
本当は、僕のために手を繋いでくれようとした癖に
マキ「ふふふふ♪神さんだぁあい好き♪♪」
百目鬼「ッ!、黙って歩け!」
えへへ♪
やっぱ神さん可愛いなぁ♪
神さんとの初詣は、今回で二回目。去年の今日、まだ付き合ってない神さんが、僕をこの同じ神社に初詣に連れてきてくれた。
あの時、神さんは百目鬼事務所にアルバイトに来ないかって言った、僕とは付き合えないと言いながら、何度も何度も離れようとしては引き止めてを繰り返し、神さんは僕を側に置いてくれようとした。
あの日、戸惑って、でも嬉しくて、一緒にいたいと願った。
今は、こんなに近くに温もりを感じながら、大事に大事にしてもらってる。
あの時、諦めなくて本当に良かった。
マキ「わーい♪今年は大吉だぁ♪♪」
おみくじを引いたら、今の僕を表すように、大吉の文字が見えた。
マキ「願えば叶うだって、待ち人は遅れるが来る、失せ物、時間はかかるが必ず見つかる。恋愛、愛せば愛される。学問、精進せよ、努力の分だけ大きくなる。健康、良いが無理は禁物。だって、神さんは?」
百目鬼「俺は末吉だ」
マキ「あはは、去年より良いじゃん」
百目鬼「去年より悪い」
マキ「あれ?去年大凶じゃなかった?」
百目鬼「…大吉だ」
神さんはプイッと横を向いて、おみくじを結びに行っちゃった。
あれ?おかしいな…
去年、神さんはおみくじ見ながら渋い顔してたと思ったんだけど…
マキ「そっか、僕みたいな可愛い恋人できたし大吉だったんだね♪」
百目鬼「ッ!!…馬鹿なことばっか言ってんな!」
ありゃ、また照れて怒っちゃった♪♪
僕と百目鬼さんが付き合って、もう直ぐ1年。
途中離れた時間もあったけど、今はこうして一緒にいらりられる。
新しい年を迎えても、年をとっても、ずっとずっとこうやって一緒にいたい。
新年を迎えるのを、こんな考え深い気持ちで迎えたことなんか無い。
神さんと一緒に居ると、何かもが新しくなっていく。
来年の今日もきっと、今みたいな新しい僕が、神さんの隣で幸せだと思ってるんだろう。
そう思うと、なんだか……
神さんを今直ぐ押し倒してSEXしたいよ!!
でも、ああ…残念。
神さんはこの後出掛けちゃうんだよなぁ…
そう思ってトボトボ百目鬼事務所に戻ると、何故か人気の無い事務所の前に、一台のオレンジ色の車が止まってた。
僕も神さんもその車に気がついて足を止めると、車の中の人も僕たちに気がついたのか、後部座席のドアが自動でスライドして、中から小学生の男の子と女の子が駆け出してきた。
「神くん!!迎えに来たよ!!」
満面の笑顔の子供達が、百目鬼さんに抱きついた。
百目鬼「は?お前らどうして…」
女の子「お迎えに行かないと神くん来ないよって、蘭ちゃんと、ママが言うからお迎えに来たんだよ」
〝らん〟
その名前を聞いた瞬間、助手席から見覚えのある女性が降りてきた。
〝らん〟が誰なのか、百目鬼さんとどうゆう関係なのか思い出した瞬間。
向こうの〝蘭さん〟も、僕を見て僕が誰かを思い出したように驚いた。
ギャー!!あの人!!
前に、僕と神さんが一時的に別れた時。
何も食べようとしない僕を心配した奏一さんが連れてってくれた、百目鬼さんの実家の定食屋で働いてた店員さん!!
神さんの手料理と、神さんの実家の定食屋のご飯が同じ味がして、初めて食べた時泣いちゃって、その時黙ってハンカチ貸してくれた…
神さんの義理の妹さんの1人だ!!!!
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