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アルバム絵本
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蘭「あっ…」
蘭さんが、驚いた顔しながら僕を真っ直ぐ見つめ、明らかに〝思い出した〟って顔して指を刺そうとした。
蘭「あなた…」
マキ「〝初め〟まして♪♪」
話を遮るように、満面の笑顔で挨拶すると、運良く、百目鬼さんの甥っ子と姪っ子の2人が反応してくれた。
男の子「わぁ、めっちゃ美人じゃん、神くんの彼女!?」
女の子「えー!彼女!?こんな綺麗な人が!?」
キラキラした瞳で見上げられ、思いっきり可愛く微笑んだら、2人とも真っ赤な顔して僕に見とれて驚く。
神さんは慌てて子供達の視界を塞いだ。
百目鬼「馬鹿!こいつは男だ!」
男の子「あー!馬鹿って言った!馬鹿って言ったら言った奴が馬鹿なんだよ!」
男の子に続いて、女の子まで「そうだよ」って騒ぐから、神さんはタジタジでオロオロ。
だから、気がつかなかったと思う。
僕と蘭さんの間に流れた妙な空気。
それに、蘭さんも、僕が〝初めまして〟と言ったのを汲んでくれて、口を噤んでくれた。
もし察してくれなかったらどうしようかと思った。
百目鬼さんと別れてる間、辛すぎて、奏一さんが面倒見てくれて、毎日百目鬼さんの実家の定食屋さんで、百目鬼さんが作ったのと同じ味のご飯を食べながら辛さを紛らわせた事や、泣いちゃったことなんか、死んでも百目鬼さんにバレたくない!!
男の子「えー!マジで男なのぉ?」
女の子「肌真っ白で外人さんみたい」
キャッキャする甥っ子と姪っ子に、神さんは「コラコラ、ちゃんと挨拶しろ」ってちょっと不慣れな感じで怒りながら。その眼差しは、小さい2人にどこまで言っていいかと距離を測りながら、叔父さんとしてとても気を使って眉間にシワ寄せながら、優しい顔をしていた。
男の子「俺、銀河(ぎんが)!8歳!小2!」
女の子「初めまして、心愛(ここあ)です。心に愛って書いてココアって読みます。9歳です」
銀河君は元気いっぱいに、心愛ちゃんは流石女の子、改まってお辞儀しながら自己紹介してきた。
百目鬼「こいつらは次女の凛(りん)の子供らで、あの車の運転席に居るのがそうだ」
オレンジ色の車の運転席から、茶髪のロングヘアーでパーマのかかったちょっと派手目のメイクの女の人が降りてきて僕に会釈してきた。
次女「お兄ちゃん車ここ置いてて平気?」
百目鬼「ああ、構わない」
百目鬼さんが、義理の兄弟達と会話してる。
その表情は、百目鬼事務所のみんなと居る時とも、賢史さんや菫ママと居る時とも、僕と居る時とも違った。
百目鬼「銀河、心愛、こいつは〝茉爲宮優絆〟。男で、俺の事務所でアルバイトしてくれてる大学1年生で、クオーターの日本人、みんな〝マキ〟って呼んでる」
…アルバイトで、同棲は内緒ね。
ニコニコしながら、冷静に立場を分析する。
神さんが、家族にカミングアウトしてるとは聞いてない。7人もいる義理の兄弟にバラしてるとも考え辛い。だから、神さんが出す設定を演じる。
でも残念、女の子の振りで彼女だと言ってくれたら、もっと可愛らしく挨拶したのにな♪♪
百目鬼「マキ、こっちの奴は長女の蘭だ」
蘭、「〝初めまして〟。妹の蘭です」
ボブカットの蘭さんは、見た目はサッパリした印象。
蘭さんはニッコリ笑って挨拶してくれたけど、その目が、完全に〝何かあるな〟って目をしてた。
アハッ♪…、僕、泣いた以外にも奏一さんとずっと神さんの話をしてたし、実は何を隠そう、神さんの義理のお母さんとも喋った事がある。奏一さんが気を使って、神さんの昔話を聞かせてくれてたから…
でも、泣いたのは最初の一回だけ…
さてさて、蘭さんはどう思ってるかな…
百目鬼「蘭、どうして来た」
蘭、「えー、だってお兄ちゃんなかなか実家来ないから、お母さんが心配しすぎててこっちが心配だよ」
百目鬼「だから、夕方顔出すって言ったろ」
蘭、「もぉ、本当に顔出してお終いにするつもりでしょ、たまには止まってよ、お兄ちゃんの部屋だって残ってるんだから」
百目鬼「俺は忙しい」
ぶっきら棒に、でも矢田さんに言うよりは遥かに優しい言い方の神さん。
甥っ子姪っ子もそうだけど、妹の凛さんも蘭さんも神さんにめちゃめちゃ普通に話してる、と言うか、ちょっと強め?
義理でも兄弟だからか…、怖がってる様子は全くない。
蘭、「お兄ちゃんそればっかじゃん、ってか、事務所は5日まで休みって張り紙がココにあるけど?」
百目鬼「やる事はいっぱいある」
蘭、「お母さんだけじゃないよ、お爺ちゃんやお婆ちゃんにも顔見せられないの?」
百目鬼「だから、顔は出す」
蘭、「私が催促の電話したからでしょ」
百目鬼「一度は行くつもりだった」
蘭、「そう言って去年は来なかったじゃん」
蘭さんは大きなため息をついてから、僕の方を向く。
蘭、「ねぇ、マキさん、お兄ちゃん本当に忙しい?」
マキ「はい、とっても忙しくて、この2ヶ月休みはありませんでしたよ」
クリスマス過ぎに一回休みがあったけど、それまでは本当に働き詰めだった。
百目鬼「もーいいだろ、今行くんだから」
神さんは気を使いながらも相変わらず顔はムスッとしながら、蘭さんに言い返すと、甥っ子と姪っ子の頭を撫でて車に戻るように言い、その流れのまま、僕の頭も撫でる。
百目鬼「お前は真っ直ぐ帰ってろよ」
マキ「うん」
神さんは、僕の頭を撫でながら、その違和感に気付いたみたいで、小さい子と同じように頭を撫でた手をパッと離して舌打ちした。
神さんは、甥っ子姪っ子に優しくしなきゃと、僕との関係を隠そうとどうもテンパってるみたい。
そんな慌てなくても、僕からバレるようなヘマなんかしないのに、神さんってやっぱ不器用で可愛い♪
蘭、「……」
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