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アルバム絵本
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みんなが帰ったあと、修二と少し話をして、一緒に布団に入った。
僕の携帯には、百目鬼さんからメールで一言〝明日迎えに行く〟って入ってた。
百目鬼さんと一緒に過ごしたいけど、少しは実家でゆっくりすればいいのにって返したら、返事は返ってこなかった。
2LDKのこじんまりした修二の実家アパート。
六畳の部屋に布団3つ敷いて川の字で寝て、修二のお母さんは隣の部屋、襖一枚隔てた場所にいた。
奏一さんはお酒で潰れたまま、そして修二はもう寝てしまった。
僕は、修二の家に来てからずっと感じてることがあって、なんだか眠れない。
お水を貰おうと、台所に行くと、テーブルの上に、羚凰さんが見ていたアルバムが残ってた。
外の街灯が台所の窓から漏れてて、その近くで、そのアルバムを開いた。
マキ「ふふ、奏一さんも修二も可愛い」
今でも仲良しの兄弟奏一さんと修二、写真の中の幼い2人は、いつも手を繋いだり抱き合ったり、奏一さんがぴったりと寄り添って凄く可愛い。
優しそうなお母さんに連れられて遊園地に行ったり、プールに入ったり…
年月を重ねて髪を染めたりしても、家族3人の写真が絶えることはなかった。
マキ「…家族…って、…こんな感じなのかな…」
自分の家族は、育ての親の清史郎さんと、僕の面倒を見てくれた家政婦さんが基本。清史郎さんは仕事が忙しく、ほとんどを家政婦さんと過ごしてた。
家は大きい日本家屋だけど、僕は離れにいて、母屋には実の父とその正妻の頼子さんと長男が住んでた。僕は愛人の子供だから、母屋には滅多に行かなかったけど、正妻の頼子さんは時々離れに来た。僕を差別したりしないで厳しく優しく接してくれていた。
それが僕の家族、僕の普通。
だから、不思議な感覚がする。
狭い部屋で、母親と兄と仲良く暮らす修二の家も、修二とむつと華南の住む暖かな部屋も、みんな家族だと言う菫さんも…
血の繋がらない兄弟と母親、そしておじいちゃんおばあちゃんのいる大家族の百目鬼さんの実家も…
僕を家族にしたいと言う百目鬼さんにも…
僕の知ってる普通はどこにも無い…
そんな僕を、百目鬼さんはもっと甘えろだとか、もっと素直になれだとか、もっと泣いたり怒ったり笑ったりして欲しいとか…
僕の誕生日の2月29日に、僕を養子にしたいって…
こんな僕を…
家族にしたいって言ってくれた…
マキ「僕なんかが…こんな風に…なれるかな…」
別に卑下したんじゃない、単純な疑問だ。
僕はこんな風に、普通の温かい家族を知らない。
「僕なんかって、なんのこと?」
暗い部屋の中から声が聞こえて驚いた。
ってか、自分の考えが声に出てたのにも驚いた。
マキ「奏一さん、大丈夫?」
いかにも飲み過ぎで気持ち悪そうに顔をしかめてる奏一さんが、ドアのヘリに寄っかかって立ってた。
僕は別に誤魔化すつもりじゃなかったけど、コップに水を入れて手渡したら、奏一さんは不機嫌そうに受け取ったけど、その水を一気に飲み干しておかわりし、台所の椅子に座って僕を見た。
奏一「で?またあいつのことだろ」
マキ「あはは、決めつけ♪」
奏一「あいつのせいだろ、あいつが悪い」
酔ってる風なのに、確信してる奏一さんは、何故か、ただ決めつけてるというより〝知ってる〟って感じだった。
マキ「何か聞いてるの?」
奏一「なんも聞いてないよ、ってか、あいつが言うわけないじゃん。まぁ、やたら報告っていうか、許可とるみたいに連絡してくることはあるけど」
マキ「許可?」
きっと過去のことが原因なんだろうと思った。
奏一さんもそうだと言うように苛立った様子でため息をつく。
奏一「もういいっつってんのに、いちいち馬鹿なんだよ。ホント馬鹿。…あいつが頑張ってんのはわかったっつーの、なのに、結局マキを悩ませて…」
マキ「違うよ、奏一さん、さっきのは違うから、あれは僕の問題だから」
奏一「そういう風にマキに思わせてんのも結局あいつのせいなんだよ」
マキ「そ、奏一さん、もうちょっとお水飲んで、酔いを覚ましてよ。本当に僕は、大事にされてるんだよ」
奏一「…。あれだ、確かに俺は酔ってるが、言葉を選んでないだけで、普段からあいつにはこうだよ、って、過去は許さないし、今のあいつはマキを悩ますからぶん殴ってやりたい」
あはは、お酒入って奏一さん昔のキレやすい状態なのかな?
奏一「マキも座って。
で?、僕なんかがってなんの事?」
うわー、完全に目が座っちゃってるんですけどー、酔った奏一さん超怖い、逃げられる気がしなーい。
マキ「あのね奏一さん、僕は今とっても幸せで…」
奏一「…寝れてないくせに?」
うわー、奏一さん言葉で僕の首根っこ押さえ込んできたあーん。完全に狩り状態なんだけど…
マキ「…、聞いて奏一さん、もぉー、本当に僕は大事にしてもらってて、むしろ幸せ過ぎて怖いくらいで、百目鬼さんに感謝はしても、泣かされたりしてないから、ホントだよ。あれは本当に僕側の問題でね」
奏一「……」
うひゃー、元朱雀の特攻隊長様が信じてないって顔してるーう。
マキ「…あのね、聞いて奏一さん。年が明けたでしょ、だから、もう直ぐだと思ったら急に不安になっただけ…」
奏一「?、なにが?」
マキ「…、…、僕ね、もう直ぐ20歳になるでしょ」
奏一「あぁ、修二の次の日だっけ?」
マキ「…うん。…でね、20歳になったら、百目鬼さんが、僕を養子にしてくれるんだ」
奏一「ヨウシ?……ようし?……」
マキ「養子縁組して、僕と家族になってくれるんだ」
奏一「!!!!」
奏一さんがすごくびっくりして、椅子に座りながら仰け反った。
マキ「驚かせちゃった?ごめんね」
そりゃ驚くよねって謝ったら、奏一さんの顔は真っ赤になってて、僕と目が合ったら更に赤くなって目をそらして俯いた。
あぁ、察しのいい奏一さんは、〝養子縁組〟と聞いただけで色々想像しちゃったみたい。
奏一「いや、酔いが覚めた、…いや、うん、そうだったな…、…あいつから聞いてた…、ってか、本気だったのか…」
マキ「…うん。去年プロポーズされた」
わぁ、奏一さんまた赤くなった。僕と百目鬼さんのこと想像しちゃったんだぁ、可愛い。
マキ「それでね、百目鬼さんがね、家族になるようにって、お互いのアルバム見たりとか思い出聞かせあったりしててね、それでね、僕、気になっちゃって…、家族って、どんなんなのかなぁって…」
奏一「…家族なんて、人それぞれだろ」
マキ「うん、むつのところも華南のところも話聞いたけど、みんな違った」
奏一「だろ」
マキ「だけど…、みんな違ったんだけど、同じところもあって…、なんかね、ふんわり痒くなる」
奏一「痒い?」
マキ「うん、奏一さんや修二の家が、一番、痒くてあったかくて、ムズムズするかな…」
奏一「…」
僕は僕の普通を普通だと思ってる。
それは悲しいことでもなんでもない。血の半分繋がってる兄弟は仲悪かったけど、それは仕方のないこと。家政婦さんは優しかったし、清史郎さんは仕事ばかりだったけど、休みの日はずっと一緒にいてくれて、夜は愛してくれた。
マキ「百目鬼さんところもそうなんだけどね、修二の所が一番する。僕にはない感覚だから、これが家族なのかなって思ったら、僕に出来るかなって…。百目鬼さんとちゃんと家族になれるかなって…、気になっちゃったら寝れなくなっちゃった♪エヘ♪」
奏一「……」
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