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アルバム絵本
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僕が見た感じ、奏一さんは悩んでる。
しかも結構深刻に…
その読みは間違ってないと思う。
奏一さんは悲しげな視線を落として目をつむり、固く閉じた瞼に力を込め、そしてゆっくりと目を開けた…
悲しい色を含んだその瞳。
なのに、まっすぐを僕を見て答えた。
奏一「それは違うよ、マキ」
マキ「…」
答えは迷わず。
ただ、悩んでいる事は確かなのに、奏一さんは自分の責任を投げることはない。
奏一「2人の真剣さが、心に届くから戸惑う事はあるけど。だから、彼女を作らないとかじゃない。難しい事だから上手く伝わるか分からないけど、…気にしちゃううちは踏み出すべきじゃないと思う」
マキ「2人を?」
奏一「…2人の事もそうだけど、自分自身…、自分が気にしちゃううちは、踏み出すべきじゃない。だからって迷ってるとかじゃなくて、断ったのを撤回するとかじゃなくて…」
マキ「…奏一さん、大丈夫、分かるよ」
奏一さんは、「本当に?」って顔したけど、僕の真っ直ぐな瞳を見て信じてくれたのか、探して迷う言葉を続けてくれた。
奏一「俺自身の問題で、…確かに未だに戸惑って悩んだりするけど、迷ってる訳じゃない。いや…、どう接すれば良いかとか、どう今まで通りにすれば良いか、言葉は間違ってないか迷う事はあっても、答えを迷ったら、2人に悪いだろ。だからそこは迷わない。だけど傷つけたくもない。2人が俺を傷つけまいとしてくれてるのに…」
マキ「うん、大丈夫、分かる。僕はどっちの気持ちも分かるよ」
強く頷くと、奏一さんは僕の瞳を見て伝わってると安心したように肩の力を抜く。
同性愛に過剰なまでに言葉を選び、悩み事を口にするのもままならない奏一さんには、かなりキツイことだったんだろう。
…羚凰さんが〝女の夏さんに譲ったのに〟って言ってた意味が、なんとなくわかった。
きっと彩さんに止められたんだ。奏一さんに彼女が出来そうな時は、邪魔しないと…
奏一さんの持ってるトラウマを刺激しないためには、男の自分たちが迫ってはいけないって…
奏一「だから、俺がちゃんと2人に紹介できるほどキチンと出来るまでは、2人にも、彼女になる女性にも失礼だと思う。だから、2人が原因とかじゃなくて、俺自身が、真っ直ぐ揺らがず思える相手が出来るようになってからと思ってるだけ」
…どこまでも、真っ直ぐな曲げない人なんだなぁって思う。そこが固すぎて融通効かない悩みの種なんだろうけど、…奏一さんのどこまでも真っ直ぐ輝くものは、その一本通った芯…。
真っ直ぐなんだけど、その真っ直ぐさに、みんな憧れていくんだなぁ…
マキ「…奏一さんって、真面目ちゃん過ぎて疲れない?」
奏一「疲れたりなんかしない、俺の信じるものを俺が曲げたらダメだろ」
あぁ…
マキ「…こうゆうとこなんだろうな…」
…百目鬼さんが好きになったのは…
優しいのに、頑固で…その背中が美しく強い…
奏一「…頑固で手に負えないってこと?…、まぁ、よく言われる」
マキ「ううん…違うよ。…ふふっ、まぁ手には負えないんだろうけど」
奏一「?」
真っ直ぐ伸びた背筋、弓矢を射るような、凛としたその背中に、射ると決めたら射ると揺らがない闘志を内に秘めて、静かで冷静なその瞳は、驚くほど鋭く矢を放つ。
その強さに憧れて、
その強すぎて弱みを見せなさすぎる背中を
支えて、自分だけが安らぎを与えられたらって
その緊張の糸が緩む瞬間の表情を守りたいと思うのだろう。
僕も見てみたい…
奏一さんの幸せに緩むその表情を…
そして…
それをやろうとしてる彩さんを…
マキ「ねぇ、奏一さん。僕、彩さんに会ってみたいな♪」
奏一「は!?」
マキ「心配しないで♪、何もしない。ただ、彩さんがどんな人か見てみたいだけ。その方が、今後も奏一さんの相談に乗りやすいし♪」
奏一「いやいやいや、いーから会わなくて!」
マキ「どおして?カッコ良い〝お兄ちゃんが〟そこまで信頼置いてる人がどんな人か見てみたいんだもん♪」
奏一「もんって…、マキ、この話は弄らないで欲しいんだってば…」
マキ「弄ってない弄ってない、奏一お兄ちゃんが、告白されても、その人との友情を大事にしようとしてるから、どんな人なのかなぁって思って。だってきっとイケメンなんでしょ?」
奏一「なっ…、どうして…」
マキ「だって、カッコイイ奏一お兄ちゃんが、そんな風に悩んででも、友達でいて欲しい人でしょ?凄く尊敬してるみたいだし、きっとすっごく生き方のカッコイイ人なんだろうなぁって」
奏一「…ぅ……まぁ……、そ……」
マキ「ねぇ♪おねがぁい♪一目でいいからさぁ♪」
奏一さんにそこまで思わせる人ってどんな人?
彩〝さん〟って言うぐらいだから、年上だろうし、奏一さんイケメンだから奏一さんぐらいカッコイイかそれ以上じゃないと認めらんないけど、奏一さん、見た目がゴツい男なら即却下だろうから、きっと、スマートな人なんだろうとは予想できるけど…
うーん。
僕より美人で可愛いってことはないだろうな♪…
マキ「ね♪ね♪、遠目でもいいから♪奏一さんと喋ってるところ、一回だけ♪ねっ♪」
可愛く上目遣いして腕に抱きついて、瞳をキュルンと潤ませておねだりしたら、奏一さんは拒むに拒めず困った顔して赤くなってた。
マキ「ねぇ♪余計なことしないから♪見るだけ♪」
奏一「ッ……、ッ…、う…ぁ…その…」
ーパシャッ!!
ーパシャッ!!
眩しい光がシャッター音と共に2度光る。
僕と奏一さんは驚いて振り返った。
そこには、スマホを片手に不機嫌な顔した修二が立ってた。
マキ「あっ、修二」
修二「…マキ、今すぐ兄貴から離れないと、兄貴に抱きついてるこの写真、百目鬼さんに送っちゃうよ」
…不機嫌な修二が珍しくて、彩さんに会いたいという僕に、修二は彩さんが奏一さんを好きなのを知ってて、僕が余計なことを防ぎたいのかと直感しながら…
改めて言われた自分の格好を良く見直してみた。
緩めのパジャマ姿の僕が、奏一さんの腕に抱きつくように絡みついておねだり上目遣いウルルンポールズの自分の格好。
…。
どう考えても、百目鬼さんが怒りそうな…、いや、絶対爆発する。
マキ「やぁーん!ダメダメ!」
慌てて修二に駆け寄ってスマホから写メを消してもらおうとしたけど、ご機嫌斜めの修二きゅんはひらりとかわす。
修二「写真送られたくないなら大人しくしなさい。兄貴の困るような余計なことを、まだ、するって言うなら、マキが兄貴に抱きついてるこの写メ送っちゃうからね」
ダメダメェ!
そんなの今送ったら、百目鬼さんの残り少ない正月休み中イチャイチャできなくなっちゃう!
…お仕置きエッチは魅力的だけどぉ…でも…
百目鬼さんの家族の話聞けなくなっちゃう!
マキ「あぁーん、ずるいよ修二きゅーん!」
修二「だぁーぁーめ」
マキ「やぁーん」
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