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アルバム絵本
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マキを実家に連れて行く。
そう言えばマキは喜んではしゃぐと百目鬼は思ってた。
しかし、実家に連れて行くと口にした途端マキはなんだか複雑そうだった。
朝まで抱きつぶして、やっと眠りに落ちたマキの寝顔を眺めながら、百目鬼は、何が間違ってるんだろうと眉間にシワを寄せる。
自分もそろそろ寝ようと思っていたら、百目鬼の携帯に電話が掛かってきた。
相手は賢史。
賢史『おはようさん、神、実家からはいつ帰ってくるんだ?今晩ユリちゃんとつよしが帰って来るんだけどこっち来ないか?お土産あるってさ』
百目鬼「実家はもう出たんだが、今晩行けるから分からない、マキに聞いてみる」
賢史『女王様に?なんで?、つよしもいるから女王様来るだろう?』
百目鬼「歩けたらな」
百目鬼の一言で、現状を把握した賢史は、ニヤニヤするやら呆れるやら羨ましいやら複雑に笑った。
賢史『ハハッ、せっかく実家に帰ったと思ったのに、女王様恋しさにさっさと帰って来ちまったのか?どんだけだよ』
百目鬼「いや、実家に帰った途端奏一から電話があって叱られたんだ、だから、迎えに行ったまでだ」
賢史『いやいや、奏一に取られて奪い返しに行ったの間違いだろ。嫉妬に狂って朝までコースか?相変わらず器が小っちゃいねぇー神くんは』
百目鬼「…」
賢史『うわ、黙っちゃったよ。ってか、実家はどうだったんだ?』
百目鬼「みんな元気だったよ。ばあさんが、足を悪くしてたが、相変わらず口達者だったよ」
賢史『ああ、あの人は100才超えても生きてそうだからな』
百目鬼「俺もそう思う」
ヤンチャしてた頃の百目鬼神の母親代わりとして、神に説教したり、褒めたり、昔からパワフルだったばあさん。足を悪くしても、上半身は元気だった、昔のまんまの姿を想像して賢史は笑い。神は昼間のばあさんを思い出して笑った。
ひとしきり笑って、神は、昼間ばあさんに言われたことを思い出し、改まった声で呟くように賢史に言った。
百目鬼「……マキを、紹介しようと思う」
その衝撃的な言葉に、電話の向こうの賢史が驚いて大きな声を出した。
賢史『はぁ?!』
想像通りの賢史の反応に百目鬼は冷静で、電話越しにその空気を察した賢史は、何を言っても百目鬼が気持ちを変えない分からず屋だと知っていた。
賢史『…紹介って、カミングアウトするつもりか?』
静かな賢史の声に、賢史がこっちの考えを感じ取ったと知った百目鬼は、流石腐れ縁だと口角を上げながら、笑うように返す。
百目鬼「いや、カミングアウトする気はない。ただ、ばあさんにはバレたみたいだ、会わせろって言われた」
賢史『かぁー!ばあさんには敵わないなぁ。
…でも、お前一年前より明らかにデレデレダラシない顔になったもんなぁ、マキちゃんいないと寂しいぃー寂しいぃーだもんなぁ』
百目鬼「ァア¨!?」
賢史『ハハッ、…まぁ、随分穏やかにもなったし、流石に育ての親ともなると分かるんじゃねーの?お前の荒んでた日々と一緒に戦ってくれてたばあさんだからな』
百目鬼「……」
喧嘩の日々…、離婚後父親はさじを投げ、母親は新しい家庭を築いた。父方の祖母と祖父に引き取られ、荒れた百目鬼に戸惑いもしたが、祖母と祖父だけは、関わることを止めなかった。学校に呼び出されるのは当たり前、喧嘩は当たり前、しょっちゅう怪我をしてきて、ガラの悪い仲間を家につれてくることもあった。しまいにゃ警察のご厄介になる事もあり、迷惑以外の何者でもない自分を、祖母と祖父は親のように接し、叱り、口喧嘩し、心配したと泣いて、正しい行動は褒めて抱きしめてくれた。
祖母と祖父が諦めないでくれたから、料理を覚えた。店をやりながら自分を育ててくれた祖母と祖父の背中を見ていたから、少しでも二人に返せたらと、店を手伝った。
その時の行動が、のちに繋がる。
神の反抗期が終わりに近い頃、奏一と出会った。
覚えたての料理を食わして奏一との仲を深めた。
母子家庭の修二に料理を食わせ、時には教えたりもした。
父親が再婚した時も、料理をして義母と義兄弟達と打ち解け、慕ってもらった。
そして、マキに出会った。
癒されてばかりのマキに、美味しいご飯を作ってやれる。
全ては、荒んでた自分を諦めずに叱ってくれた、祖母と祖父のおかげだ。
祖母『あらあらぁ、顔見せに来ないと思ったら、いい人が出来たのねぇ』
久々に顔を見た祖母は、増えたシワわくしゃくしゃにしながら、嬉しそうに笑った。
祖父『なんだ、女か…』
百目鬼「仕事だよ。女はいない」
言い訳を聞いてくれずむくれる祖父は、ずっとブツブツ言っていたが、祖母は『喜んでるのよ』とフォローして笑う。
そして祖母は、何か知ってるように、『私にだけは紹介してね』と呟いた。
それがどういう意味か計り兼ねた神…
ニコニコ笑う祖母の笑顔に、自分の性癖バレたのかと焦りながらも、脳裏をよぎるのは、マキの姿。
最近昔話を書きたがるマキを、祖母に合わせたら、マキは喜ぶんじゃないかと思うと、祖母にどんな形でもあわせられるならその方がいいんじゃないかと考えた。
********************
その頃…
百目鬼の実家では、みんなが朝食を済ませ、定食屋の開店準備に追われていた。
そんな中、百目鬼の義理の妹の蘭は、あることが気になって祖母の部屋を覗いた。
部屋の中で祖母は、いそいそ出掛ける支度をしていた。
足が悪いのに出かけようとする祖母に、蘭は声をかけた。
蘭「おばあちゃん、どこ行こうとしてるの?」
祖母は、見つかったと肩をすくめ、そして両手を合わせて拝み倒す。
祖母「蘭ちゃん、見逃して」
蘭「ダメよ、おばあちゃん足の調子よくないでしょ、一人でなんて出かけられないよ。どこに行こうとしてたの?」
祖母「ケチだねぇ。初詣くらい行ってもいいだろ」
蘭「…もしかして、神兄さんに会うの?」
祖母「違う違う、あの子とは昨日会ったばかりだろ」
蘭「…、神兄さんと内緒話してたでしょ。あれからずっとおばあちゃんご機嫌だもの」
祖母「そりゃ久しぶりに神に会ったもの、機嫌よくもなるよ」
蘭「もしかして、神兄さん結婚する?」
祖母「…、ハハッ、結婚?ならめでたいけど、そんな話は聞いてないよ。どうしてそう思ったんだい?」
蘭「なんとなく。表情が随分違ってたから」
祖母「蘭もそう思うかい」
ウキウキ話す祖母、しかし、蘭は複雑な気持ちがしていた。
神の随分違った表情とは、ある特定の人物に対してだからだ。
蘭(神兄さんの事務所で働くあの男の子。絶対、去年の夏に奏一さんと毎日うちの店に来てた子だよ。神兄さん、あの子とどう知り合ったんだろう。神兄さんがあの子に話しかけてる時の顔、びっくりするぐらいやさしい顔してた…。…でも、あの子は男の子なんだよね…。しかも、私と会った時、ワザと初めましてって言ってきた。お店に来てたの知られたくないのかな?…………。まさか…、ストーカーだったり…しないよね…、…な訳ないか…、あんな強面の神兄さんをストーカーだなんて、命知らずいる訳ない。
…じゃあ…、あの子はいったい…
神兄さんの何?)
アルバム絵本《了》
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