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まだまだ遠いい……
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複雑な顔した神が、「マキが」と繰り返しながらやっと言った言葉に、俺は心の底から呆れた。
百目鬼「マキが…、毎日アルバムばかり見るんだ…」
アルバムとは、神のアルバムで。こいつは今さっき、ばあちゃんにマキを会わせれば、昔話をしてくれてマキが喜ぶと言ったばかりだ…
さらに言うなら、自分のアルバムを絵本代わりにマキに読んで聞かせ始めたのも、神自身が始めたことで、自分が義理の家族らと家族の絆を深めるのにやったからマキと家族になるためにやってるんだし、マキも本当に喜んでアルバムを見てるし、写真にもハマって最近は2人の写真を撮り出したし、俺と会う時も神の昔話を聞きたがってる。
神が自ら始めたことなのに…
まさかとは思うが…
賢史「おいおい、自分が始めたことだろ?」
百目鬼「…あぁ…そうなんだが…」
賢史「まさか…」
百目鬼「…」
賢史「まさか、自分のアルバムに嫉妬してるとか言うなよ」
俺の言葉を肯定するかのように、神はバツが悪そうに頭を抱えやがる。
頭を抱えてーのは俺のほうだぞ!
賢史「いやいやいや、神君、君がマキに家族になるためだとかなんとか言って見せ始めたもんじゃないかよ」
百目鬼「…そうなんだが…」
賢史「ばあさんに会わせて昔話聞かせたらマキが喜ぶから紹介するって今の今言ったばかりじゃんか」
百目鬼「マキが喜ぶんだから仕方ない」
賢史「はぁ?お前矛盾してるだろ、いや、今までも大概矛盾してひねくれまくってハットトリック決めまくってたけど、今回のはバカヤバイなぁ!色ボケてるのか?大事にしたいって言う割に怒ってばっかじゃんか、そんなんでいちいち嫉妬されてキレられる女王様の身になれよ」
アルバムを自分で見せといて、アルバムを見る女王様にキレるなんて…
百目鬼「…それは申し訳ないと思ってる…、思ってるが…」
修二を好きだと言ってた時も、大概ヤバイこと言ってたが…。やっぱ美人で可愛い女王様相手ともなると、ヤバイレベルがチゲーな…、ヨリ戻すの手伝っといてアレだが、やっぱ神に女王様はキャパオーバーだよな…。
俺がしっかりアドバイスして軌道修正してやんなきゃ、女王様以外で神を相手にできる奴は一生出てこないだろうし…
賢史「申し訳ないと思うならいちいち嫉妬すんなよ。女王様がモテモテ美人なの知ってて恋人にしたんだろ?。そもそも、誰かに取られるかもとか、他を好きになられて捨てられるかもとか、覚悟の上で女王様を選んだんだろ?それなのに、周りにゃ嫉妬しまくりで、束縛しまくりなのに、さらに自分のアルバムにまで嫉妬すんのか?神君器が小さすぎやしない?」
百目鬼「…」
賢史「女王様がお前しか見てないの分かるだろ?あの子は浮気とかしないだろ」
呆れて思わず出た言葉に、神は目を丸めた。
百目鬼「…マキにメチャクチャ言ってたお前が言うなんて…」
あぁ…、しまった…。
つい心の声が…。別にマキの味方をしたわけじゃない…
賢史「それはそれ。それに、言ったろ、女王様はお前の手には負えないって、俺は付き合う前から警告したんだ。女王様がビッチでモテモテなのも、美人で可愛すぎてお前が嫉妬に狂うのも、目に見えてたことだろ?それでもあの子がいいってメソメソしてたのお前だろ?」
百目鬼「ッ!?馬鹿!誰がメソメソだ!俺は!最初はちゃんとマキとだけは付き合えないって言っただろ!!修二の友達のマキとだけは駄目だって!!なのにお前がちょっかい出したんだろうが!!」
賢史「えー?付き合わないなら俺が手を出しても良くない?」
百目鬼「駄目に決まってんだろ!!」
賢史「俺に取られたくなかっただけじゃん」
百目鬼「バッ…馬鹿!ちげーよ!お前じゃアレだ!…、アレだ…ほら、お前じゃ、ほったらかしにするだろ!マキはああ見えて寂しがり屋で、なのに甘えんのがクソ下手で、下手な癖に、人に頼るのは嫌いときてるひねくれ者で…、ご飯も1人じゃまともなの食わねぇーし、1人じゃ眠れないし…それに…」
賢史「はいはい、あの頃からマキちゃんが大好きなのは分かったから」
百目鬼「あいつが俺を好きだ好きだ言ってたんだ!」
賢史「今はちゃんと好きだって言ってあげてるの?その甘え下手の寂しがりやのマキちゃんに」
百目鬼「…………」
クソ面白い顔した神に今にも吹き出しそうだったが、堪えてその一言を待ってやると、神は悔しそうに恥ずかしそうで嫌そうで照れるように絞り出した。
百目鬼「………、毎日…言ってるさ…、あいつが信じるように…、俺の方がす……、か、勝ってるんだってな」
これが、かつて獰猛な猛獣で、朱雀一凶暴な男だった男の今の姿。
賢史「勝ってるって…、負けてんだろ?」
百目鬼「負けてない!そこだけは勝ってる!あいつはすぐ自信を無くす!だから俺が言って聞かせてるんだ!確かに、あいつに捨てられる恐怖を植え付けたのは俺だが、あの時は本当にそれがマキのためだと思ったんだ、俺のそばなんかにいるより、ずっと幸せになれるはずだから…、でも…、あいつはそれでも俺を好きだと言った…。しかも、俺はマキを好きじゃなかったから別れるのは仕方ないとかぬかしやがるし、俺はちゃんと好きだった!大事だった!だから、マキのためを思って…、なのに…、…、むつや菫がグルになって、しまいにゃ修二や奏一まで…。それにお前まで…マキと俺のヨリを戻そうとしてたろ…」
賢史「俺はあいつらとグルになったつもりはないぜ。ただ、マキがいなくなって呑んだくれて、マキの様子を教えてくれとピーチパーチクメールを寄越す奴がウザいから、マキを俺が貰ったら静かになると思ったまでだ」
百目鬼「…」
賢史「マキとヨリを戻せて良かったろ?」
百目鬼「……、あの時のことは…感謝してる」
賢史「ひねくれ者はあそこまでしないと素直になれないからな」
ヨリが戻った後。
マキを愛おしそうに見つめて大事にしてる神の姿に心底やっとかと安心したが…
同時に、神の隣で屈託のない笑顔を見せるマキを見た時、なんだかホッとした。
女王様の仮面をしてないマキを見た。
あの泣き叫んで壊れかけた子供が、笑顔を取り戻したと知った時、なんだか胸がホッとした…
俺はマキの味方じゃない、だけど、マキが泣き崩れた時、あの時は胸が痛んだ…
本当に、糸がプッツリ切れたみたいに人間が崩れる様を目の当たりにした気分だった…。
賢史「で?…、やっと取り戻した恋人の女王様が、ラブラブ一途に神君を愛でてアルバムを眺めてる、それのどこに嫉妬しちゃうの?アルバム見せてるのお前だろ?なのに、アルバム見るくらいなら本物の俺を見ろとか言っちゃう訳?」
色ボケも大概にしろよ、あんな風に取り戻しといて、自分の写真に嫉妬するとかくだらない事で喧嘩するとか本末転倒だろうが。
百目鬼「…、そんなこと言ってない…、ただ…、…マキが…、学生の頃の俺に会いたいって言いやがるから…」
はぁ?あの狂犬時代の神に?
百目鬼「…、やっぱ若いのが良いのかと…」
賢史「は?」
百目鬼「同い年ぐらいのが良いのかと…」
賢史「なんでそうなんの?」
百目鬼「俺はマキより10も年上だし、遊びや好きな物も違いすぎる、マキが行きたいところは何処にでも連れてってやりたいが…」
賢史「毎月一度は、動物園だ水族館だって連れてってるくせに?今更?」
百目鬼「……マキが、ネズミーランドに行きたいと言ってるんだ」
ネズミーランド!?
そりゃ場違い過ぎるだろ!
百目鬼「マキが、俺とは無理だろうから友達と行っても良いかと聞かれて…、行かせなかった」
賢史「…なら、お前が連れてきゃ良いじゃん」
百目鬼「…キャラ耳つけてメリーゴーランド乗った俺を想像してみろ」
ブホォォォォオオオッーー!!
キャラ耳メリーゴーランドメルヘン!!!
笑い死ぬ!!!
百目鬼「マキは、俺と会うまで映画館にも入ったことがない、水族館も、動物園も、遊園地にもだ!」
そっか、愛人の子供だから、離れに閉じ込められて育ったんだっけ。
百目鬼「なんでもしてやりたいが…、30のヤクザ顔の俺がキャラ耳付けてメリーゴーランドなんてやったら犯罪だろ」
賢史「あぁ、俺なら逮捕するな」
百目鬼「俺の束縛のせいで色々我慢させてる上に、年が離れてこんな顔だから、マキのしたいことを叶えてやれない…。カラオケも行ってやれないし、マキの好きな甘いスイーツ屋に行くことも難しい」
賢史「年関係なくね、それは顔のせいだろ」
百目鬼「…マキと同い年だったら、マキの好きなことを全部させてやれたんだろうな…と…、思った訳で、マキの浮気を疑ってるわけじゃない…」
賢史「…いや、マキ様相手は年上じゃないとつとまんないんじゃない?それに、年は関係ねぇだろ、お前の場合、恋愛偏差値が小学生以下だからいけないんじゃない?」
この、恋に複雑骨折中のバカップルに成り下がった神君には、なんて言ったら、今がどれほど青春真っ盛りで幸せなことなんだと教えてやれるやら…
神の嫉妬深い狂愛に一番困ってるのは神自身だと分かっちゃいるが。どうしたらこいつに、今は幸せの中にいて何も心配することはないと教えてやれるのか知りたい。
女王様のマキが、神をただの馬鹿な男に変えてくれてるのは嬉しいことなんだが。
マキもまだ神を好きなだけの子供になりきれてねぇーし。
早いとこ2人が、長年の膿を取り払ってもっとイチャイチャのラブラブになって犬も食わなくなってくれなきゃ、こっちが安心して女作れやしねぇ…。
全く、困った2人だぜ。
自分の写ってるアルバムに嫉妬しながら、その嫉妬の材料を実家にわざわざ取りに行くとか、バカの極みだろ。
神君、いい加減進級しようぜ…。
賢史「ってー、神が相談してきてよぉ〜、もうどうしようもないバカだろ?ユリちゃんどう思う?」
ユリ「いちいちそんな話を酔って私にしにくる貴方が馬鹿だと思うけど」
賢史「指名してあげてるのにユリちゃん冷た〜い」
ユリ「百目鬼さんのせいにしてないで早く彼女作りなさいよ」
賢史「おっ、ユリちゃんに告白されちゃった♪」
ユリ「はぁあ?!誰が貴方なんかに!」
賢史「じゃ、つよしくんにもらって貰おう…」
ユリ「あんたの警察署に通報するわよ」
賢史「ユリちゃん美人なのに怖いなぁ…」
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