アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
まだまだ遠いい……
-
.
マキは料理が下手くそだ。
別にマキが作った料理を実際見たわけでも無いし、神がそう言ってる訳でも無いが…
神が時々隠れて胃腸薬を飲んでるのを俺は知ってる。
胃腸薬を自宅や鞄に入れておいてマキにバレたく無いんだろう。車に隠された胃腸薬が月に一度くらいのペースで減ってる。
だから気になってはいた、マキの料理の腕前がどんなか………
マキちゃんよ…
せっかくのガトーショコラが不恰好なうえにペチャンコだよ。
マキ「あーん…またボロボロのペシャンコぉー」
マキが涙目で自分が作ったガトーショコラを抱えて嘆いていると、目の前を綺麗に膨らんだもう一つのガトーショコラが通過していく。
泉「とても同じ材料で作ったとは思えない有様ですね」
その立派なガトーショコラを持っていたのは、しれっと毒を吐く水森泉。
マキ「うわーん、修二ぃー、泉が虐めるよぉー」
マキが修二に抱きつくと、修二は困った顔しながらヨシヨシ撫でてやる。
そんな甘やかされてるマキを冷たい目で見下ろしながら、泉が自慢げにガトーショコラを見せつけた。
泉「失敬な。私は、マキがどーぉーしてもお菓子を一緒に作って欲しいと言うから作ってるだけでしょ」
マキ「だってだって、何回やっても上手くいかないんだもん」
泉「これでハッキリしましたね。修二さんの教え方に問題はないってことが」
嫌味な眼鏡は自慢げに自分が作ったガトーショコラをマキに見せつけながら、リビングのテーブルに向かう。
が…
そのテーブルには、ビックリな先客が居た。
ハァッ!!
な、なぜに真っ白なラインのヌイグルミが食卓に着いてる!?
背もたれ付きの椅子に座ってテーブルにもたれかかる真っ白なライオンのヌイグルミ。
一瞬、ユリのものかと思ったが、ライオンっていうのが引っかかった。
いるよねー、事あるごとに俺の知り合いをライオンだと言ってる奴が。
そう、奴が!
マキ「えー、僕修二の教え方が悪いなんて言ったことないよ!。修二ホントだよ、僕そんなこと言ってないからねぇ」
マキは、涙目の上目遣いで甘えるように修二にギューギュー抱きついてて、修二はマキと泉のやり取りにいつものことだとマキを宥めるように「大丈夫だよ」と頭を撫でてた。
賢史「なぁ、マキ、アレお前の?」
恐る恐る真っ白なライオンを指差すと、マキは満面の笑みで答える。
マキ「うん♪百目鬼さんから貰ったの♪可愛いでしょぉー♪『俺がいない時は俺の代わりにしろ』って貰ったの♪」
うわー、神君いたぁーい。
そんな事言っちゃったのぉー?
マキの嘘ってーのも考えられたが、咄嗟に思い出したよ。マキは、不眠症で、誰かが居ないと寝れないって神君言ってたもんねー。
うわー、あの強面の顔しるくせに、どんな顔してあんな可愛らしいヌイグルミ買ったんだか。
次回会ったら絶対神君を笑ってやろうと思っていたら、マキがシュンと元気が無くなって呟く。
マキ「やっぱケーキは無理なのかな…」
修二「そんなことないよ、バレンタインまでにはまだ時間あるし、一緒に頑張ろう」
マキ「しゅーじー…大好き♪」
立ち直ったマキが修二に尻尾振りまくりで抱きついてたが、そこに水森泉がすかさずチクリ。
泉「もう諦めて修二と一緒に作ったらどうですか?百目鬼さんお腹壊しますよ」
つよし「い、泉さん、言い過ぎですよ」
やたら冷たい水森泉に、つよしがブルブル怯えながらも意見するが、水森泉は冷たく光らせた眼鏡でつよしをギロッと睨む。
泉「…」
つよし「うっ……」
ユリ「ちょっとちょっとイズミーン、あんまりつよしを虐めないでよぉ」
ユリが間に割って入ると、水森泉は、ユリとなぜか俺の方をチラッと見て大きくため息ついた。
そして、自分の焼いたガトーショコラと、マキの焼いたガトーショコラを無言で切り分け、まずは水森泉の作ったガトーショコラをユリと俺の口に押し込む。
ユリ「やぁん♪焼きたて美味しい♪」
余熱の残るガトーショコラは、甘くてほろ苦いマジで美味いものだった。雪哉のケーキを食べ慣れてる俺でも普通に美味いと思って感心してたら、無言の水森泉が今度はマキの作ったガトーショコラをユリと俺の口に押し込んできた。
ユリ「ん゛!?」
賢史「ッ!苦っ…」
口に突っ込まれた瞬間、焦げた味が広がって思わず言葉にしちまったが、それを見て水森泉はそれ見たことかと言いたげな表現をしてるし、マキはショック受けてるし、つよしはオロオロしてるし、ユリはなんとか誤魔化せないかアワアワしてるし…
いや、不味いって訳じゃない…
ただ、作ってる過程で一度溶かしたチョコを焦がしちゃったんだろう風味が全体に広がってて…
賢史「…あー…、隠し味にコーヒーでも使った?」
苦し紛れのフォローに、マキが口を尖らせた。
マキ「不味いなら不味いって言えばいいじゃん」
賢史「じゃ…、不味いまではいかないが美味くはない」
マキ「うわーん!しゅーじー!!」
嘆くマキに修二が困り顔でヨシヨシ。
賢史「ってか、こんな無理して豪勢なもの作らずに、大人しく溶かしたチョコ固めて手作りチョコだって渡しゃよくね?神ならお前がやったもんなんでも喜ぶだろ」
神なら、なんだって食うさ、隠れて胃薬飲みながらな。
マキ「やだ!」
子供みたいにむくれたマキは、修二にしがみついたまま駄々っ子みたいに拗ねる。
マキ「それじゃ去年と同じだもん、今年は違うのにしたいんだもん」
賢史「…なんで?お前が頑張る気持ちは分かるけど、そうやって火傷だ切り傷だ手ぇー怪我して、俺的には神の心労の方が心配だ」
俺に言われて、マキは修二に抱きついていた手をサッと自分の背中に隠した。
神が青森に行った後からだ。ずっと気が付いてた、マキの指には絆創膏と、火傷だろう赤くなった痕が付いてる。
ユリ「そんな事言わないでよ、マキちゃんは百目鬼さんの為に頑張ってるんだから」
賢史「だから、無駄に頑張るなって言ってんの」
ユリ「無駄って…、無駄って何?無駄じゃないわよ。恋人のためにこんなに頑張ってるのに、無駄なわけないじゃない」
賢史「女王様の場合、頑張り方がアレなんだよ」
ユリ「ッ…、ちょっと!」
マキ「ユリちゃん♪怒ったら美人が台無しだよ」
ユリ「やん。ッ、でもマキちゃん…」
マキ「賢史さんは間違ってないよ、こんなペシャンコのガトーショコラなんか神さんに食べさせられないし♪。ほら、言ったじゃん、神さんて優しいから、調味料間違えた不味いご飯ぜーんぶ食べちゃうって♪神さんお腹壊したら困るし、いいんだ♪」
ユリ「…マキちゃん…」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
81 / 170