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まだまだ遠いい……。
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同日、23時…
賢史の目を盗んでユリの家から出掛けたマキは、電車で移動し待ち合わせのお店に居た。
大通りから一本細道に入った地下一階のライブバー。
室内の広さはコンビニくらいで、内装は洞窟をイメージさせるゴツゴツとした岩で出来ていて、夢見る若者たちがステージで演奏していた。
ステージ前には立ち見の客が飲み物を置けるように丸テーブルが数カ所、後ろにはカウンターバーがあり、店の奥にはVIPルームのプレートが見える。
店の中はそこそこ人がいて、ステージの演奏を見る者、一緒にいる人と喋ってる人と半々くらいの感じだった。
マキは、その店に一人で入り、入り口で店の中を見渡すと意味深に口角を上げて零す。
マキ「…なるほどね」
マキは、マキを呼び出した人間が何を考えているか悟った。
店内は薄暗くてはっきり見えたわけじゃないが、見えた限り、この店には若いやんちゃそうな男しかいない。
店内はステージの演奏の音で店員以外は誰もマキが入ってきたのに気が付かなかったが、マキが店内を歩き出すと、マキの存在に気がついた客たちがざわつき始め、ステージ上のバンドメンバーもマキの存在に目を奪われた。
ハーフで色白、男か女か見分けがつかない中性的で艶やかな美形。ウルフカットの髪をなびかせるたびに、なめらかなシルクのような肌の首元がちらり覗き、言いようのない妖艶さが漂う。
「マキさん!」
視線の的のマキを、気弱そうな声が精一杯呼び止めた。
声のする方を見ると、入り口から一番離れた奥のカウンター席に、マキを呼び出した人物が遠慮がちに手を挙げていた。
マキ「太郎さん♪お待たせ♪」
マキはニッコリ笑って太郎の隣に座ると、店の中から「相手居るのか…」とため息交じりの声が漏れていた。
マキ「どおしたの?相談ってなぁに?♪」
太郎を気遣うように微笑むマキを前に、太郎は申し訳なさそうに俯いた。
太郎「…こんな時間にごめん…」
マキ「全然ヘーキ♪ヘーキ♪僕の家暫くだぁーれもいないから帰らなくても怒る人いないから♪♪」
太郎「…」
マキの言った「家に暫く誰もいない」という言葉に、太郎が動揺した表情で顔を上げ、マキを見た。
マキは太郎をまっすぐ見つめヘラヘラ笑ったかと思うと、ニコッと微笑む。
マキ「んふ♪だって〝やっと〟話をしてくれる気になったんでしょ?」
太郎「っ……、うん」
マキが優しく言うと、太郎は強張って視線をパッ下げる。
マキは、その時の太郎の表情を見逃さなかった。
太郎「…話す…から…、でも、…シラフじゃ言えそうもないから…、少し付き合って…」
そう言って太郎は、バーテンダーにお酒を二つ頼み、カクテルグラスが渡されると、一つをマキの手に握らせて、返事も聞かずに自分の分のグラスを半分一気に飲みだした。
太郎「ぷはー」
マキ「太郎さんは、お酒強いの?」
太郎「普通。大丈夫、…話せないほど飲まないよ」
緊張してるのか、太郎はそのまま残りも飲み干し、カクテルグラスに口を付けないマキを見ながら二杯目をお代わりする。
マキは、握らされたカクテルグラスに一度視線を落としてから、太郎の方を真っ直ぐ見た。
マキ「…。先生の所から逃げたのはどおして?」
質問すると、太郎は俯き、右手で自分を抱きしめるように自分の肘を強く握りしめた。
太郎「……、怖かった…」
マキ「…先生が?」
太郎「……、ッ…、警察が…」
マキ「…」
太郎「…」
怯えた目をした太郎は、2杯目のカクテルを飲みながら、チラッとマキの方を伺う。
マキは握ったカクテルグラスをゆっくり口元に持って行きながら、口をつける寸前で太郎に問いかけた。
マキ「……〝彼〟が捕まってしまうから?」
「彼」と聞いた途端、太郎は肩をビクッと揺らし、怯えたようにマキを見る。
マキ「…太郎が、事件の内容を話さないのは、襲われたショックからじゃないよね。自分を売り物にしてる〝彼氏〟が警察に捕まってしまわないようにだよね?」
太郎「!!??」
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