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まだまだ遠いい……
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ユリの家に帰ったら、修二と泉は帰った後だった。
みんなで作ったショコラケーキの残りを食べ、つよしとマキが一緒の部屋で寝た。
俺は帰っても良かったんだが、優しいつよしが泊めてくれ、リビングに客用布団を敷いてもらい1人。
ユリは自分の部屋のベッドで寝た。
明け方に近い4時半ごろ、携帯が鳴り、保護された太郎のその後を教えてもらい、ひと段落ついたとホッと胸をなで下ろす。
だが、この後は、青森から一時帰省する神に説教くらうんだと憂鬱になっていた。
ー…カチャ…
遠慮がちなドアの開く音に気が付いて廊下を見ると、つよしの部屋から真っ白で大きなライオンのぬいぐるみを抱えたマキがコソコソ出てきた。
マキは周りをキョロキョロ見渡して、ユリやつよしが寝てるのを確認すると、そっと玄関へ向かう。
もう…女王様には呆れて溜息しか出ない…
マキが音も立てず玄関で靴を履き、忍び出ようとしたので思わずイライラした気持ちが全部出ちまった。
賢史「どうしてお前は首輪付けてからもフラフラするんだ。神にあんなに大事にされときながら怒らせるような事ばかり…」
溜息と苛立ち混じりの声に、マキは一瞬ビクッとしたが、さらに俺がイライラするようなへらへらした顔して振り返る。
マキ「あれ?賢史さん眠れないの♪?」
賢史「寝てねぇーのはお前だろ」
マキ「僕は違うよ、始発が動くから帰ろうと思って♪。賢史さんは夜這いかな?じゃあ、つよしなら右の扉、ユリちゃんなら左の…」
賢史「ふざけるなよ」
こんな時に何を言ってんだ。
それに、おかしいんだよ…。マキは神と連絡とってるって言ってた。なら、神が今日の昼過ぎには帰ってくるのを知ってるはずだ。
なら、何故だ?、神が帰ってくるから家に帰るって言うにはどうも表情が暗いし、ヘラヘラ誤魔化す時の笑い方のまんまだ。
賢史「ライオン抱えて今度はどこに行くんだ」
マキ「だから、お家に…」
賢史「神なら、昼過ぎには一度家に帰ってくるぞ」
マキ「え?…」
俺の勘が的中したようで、マキは知らなかったと言うように、目を見開いて固まった。
賢史「聞いてなかったのか」
マキ「…うん…」
賢史「神に相談したとか、檸檬や杏子が協力してたとか嘘だったのか?」
マキ「ううん、それは本当だよ」
賢史「本当かぁ?」
マキ「…ちゃんと、百目鬼さんに、太郎さんの事相談して、身辺調査しても良いか聞いたら、檸檬さんを貸してくれるって。ライブバーに呼び出されたって言った時も、檸檬さんと杏子さんの2人と一緒なら良いって」
賢史「あの神が?良いって?」
マキ「ふふっ、賢史さんは百目鬼さんのことよく分かってるね。百目鬼さんは『お前はどうせダメだって言っても、俺が怒るって言ってもやるんだろ』って呆れてた」
それで、〝相談はしたけど怒ってはいる…〟か。
前までは黙って勝手に動いてたけど、今は何するか報告〝は〟してるって言ってるだけじゃねぇーのか?
賢史「お前なぁ、それは相談って言うより、ただ報告してるだけじゃないか、そのうち神が心配のし過ぎで過労死するぞ。だいたい、どうしていつまでも野良猫みたいにフラフラするんだ」
危ないことに首突っ込んで。只でさえ恐れ知らずの女王様なんだ。普通の人なら怖くて逃げ出すところをズンズン進みやがる。神が心配するのも当たり前だ、このままじゃ、本当に危険な暗闇の中に迷い込んで二度と出てこれないようなことになり兼ねない。
マキ「……じゃあ、賢史さんはどうしてフラフラしてるの?」
賢史「は?」
最初、マキの言ってる意味が分からなかった。
マキ「どうして賢史さんは、フラフラ野良犬のフリするの?」
予想外の返しに開いた口が塞がらない。
マキの表情は真剣そのもので、そのまっすぐな瞳は、俺の向こう側が見えてるみたいに喋り出す。
マキ「本当は良い人なのに悪ぶったり、真剣になろうと思えばなれるのにならない、百目鬼さんの世話があるから、僕の監視があるから、ってちっとも真剣にならないじゃない」
賢史「お前、何言ってんだ。お前の話をしてるんだろ」
マキ「賢史さんが僕に言ってるんだよ。一人の人とちゃんと向き合って信じる事が…、溺れてしまう事がいい事なら、どうして賢史さんはそうしないの?」
賢史「…」
これは、ワザとか…、それとも、本気か…?
見透かしてほざいてるのか…
俺に向かって?
賢史「俺は関係ないだろ、俺はお前と違って相手がいない」
マキ「嘘、作ろうとしてない」
賢史「は?何言ってんだ、お前俺を知ってんだろ、出会いも合コンもどれも知り合うチャンスはあるが続かない。おじさん忙しいからね。つーかおじさんはお前と違って若くも美形でもねーからそんなしょっ中虫取りホイホイみたいに釣れねーんだよ。まぁ、幸い一夜の相手には困んねーくらいのイケメンではあるけどな」
作ろうとしてないなんて事はない。
俺は恋人は欲しいし、どっちかっていうとイチャイチャしたい派だし、SEX大好きだし、こんなノリだが恋人は大事にするタイプだ。
まぁ、誰に言ったって神以外信じないだろうけど、結構尽くす方なんだぞ。
ただ、職業柄時間に融通が利かない。
刑事なんて上は詰まって肥えた奴しかいないから、まだまだ下っ端の俺には仕事が山ほどあるし、今は新人教育任されてっし…。
女作っても、約束のドタキャンは当たり前だし、途中で職場に呼び出される事もあるし、記念日に1日一緒は無理に等しい。旅行なんかは皆無だ。
それなのに神としょっ中会うから、友達との時間は作れて私との時間は作れないのかと、女はみんな俺に愛想をつかす。
だか仕方ないんだ、神には半分仕事で会いに行ってるし、残りの4分の1は、ほんの数時間空いた時ちょっと顔出して帰っても神はなんとも思わない奴だから会いやすいし、残りは、神が安息の地を見つけるまでは構ってやらないとまたバカやらかしそうで怖いってーのがある。
前に忙しくて顔出せなかった時は、接近禁止なのに、いつの間にか修二と再会してて、またバカな事して奏一にボコボコにされてたし…、やたら落ち込んでるかとも思ったら、変なマキとかいう野良猫を家に住まわせてるし、ほんと困ったちゃんなんだよ神は…
だから、俺には幾らあっても時間が足りないんだよ…
マキ「人には説教して自分は逃げるの?賢史さんだって怖いんじゃん」
賢史「はあ?誰が怖い?逃げるって?お前と一緒にすんなよ!俺は怖くねーし、良い相手がいないし時間もねーだけなの!。
お前はいんだろうが!神が!ちゃんとお前を想ってくれる相手と、ちゃんと好き合ってる。それに、2月のお前の誕生日には、養子縁組組んで家族になるんだろ!もう直ぐじゃんか!。あと一ヶ月ちょっとだ。お前は幸せを目の前に怯えてるんだろ、『本当に僕なんかが幸せになっていいのかなぁ』とかなんとかくだらない、男の癖にマリッジブルーかぁ?お前のは無駄な心配って言うんだよ!神はお前を好きで好きで大好きで愛しまくってるしお前しか見えてない、お前の事で頭いっぱいだし何だってする馬鹿野郎だ、これ以上何を心配すんだ?だいたいそんなに心配なら神に怒られるような事ばかりするなよ!お前は神が目を離すと直ぐアッチコッチでトラブルを………」
マキ「……」
俺の説教を顔色一つ変えずに聞いてるマキの目が気に食わなかった。
月のように薄暗い瞳。
自ら光ろうとしない瞳。
賢史「…ワザとか?、ワザと危なっかしい真似して神を試してんのか…」
俺が質問することなんか予想済みとばかりに変わらない顔色、意味深な瞳。
複雑な気持ちがそうさせたと、
『そうだ』と言ってるようにも取れるし
『そんな風に見える?』と悲壮感漂うものにも見える。
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