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悪癖を治そうとすると違う悪癖を生む⑧
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百目鬼さんと修二の2人の事になると、嫌な不安が渦を巻く。
もういい加減、気にしちゃいけないと思いながら、反射的に緊張する。
電話口から修二の緊迫した上ずった声が申し訳なさそうに告げる。
修二『百目鬼さんは悪くないんだ。満員電車でたまたま会って…。その時、僕が…その…、女性に間違われて痴漢にあってるところを百目鬼さんに助けてもらったんだけど…、百目鬼さんの顔見た瞬間フラッシュバック起こしちゃって…』
嫌な予感が…、重い現実になる。
修二は昔、百目鬼さんと色々あって無理やり強姦されたことがある。そのせいで、今だに悪夢を見たり、フラッシュバックを起こしてパニックになったりする。
修二の希望で2人が和解して、修二に『百目鬼さんが償いたいって言うなら前に進んで』って言葉で、百目鬼さんは少しずつ、本当に少しずつ、修二への罪悪感で雁字搦めの心から前に進み始めていたけど…
百目鬼さんは知らなかった。修二が今だにトラウマを抱えてるって…
修二『助けてもらったのに、百目鬼さんの前で取り乱しちゃって、百目鬼さん酷く悲しそうで…』
あぁ、やっぱ、修二は修二なんだなって思う。
トラウマを植え付けたのは百目鬼さんなんだから、百目鬼さんにとっては自業自得なのに、自分の事より相手を気遣っちゃうんだから…
修二は優しすぎる。
でも、そうか…
百目鬼さん相当落ち込んでるだろうな…
修二に酷いことして、自分はこの先ずっと恋人なんか作れないって雁字搦めに自分を殺して。
修二が和解してくれて、修二の口から『僕は百目鬼さんの事恨んでなんかない。今の僕は幸せだから、百目鬼さんも前に進んで』って言ってもらえてから、この一年で本当に少しずつ前向きになってたのに…
〝今の修二に〟怯えられ、今だにトラウマがあったって知ったら百目鬼さん物凄くキツイよね。相当なショック受けて、やっぱり原因を作った自分は幸せになっちゃいけないって元に戻っちゃうかも…
……僕のこと…また…遠ざけるのかな…
…。
いや、…今は、僕の事より神さんの事だ…。
修二の慌て方からして、神さん相当ショック受けたの顔に出てたんだろう。
…。
あぁ…神さんの一大事なのに、僕はなんで1日半も寝ちゃったんだ…
修二『…キ。マキ、大丈夫?』
電話口の修二の声に我に返り、背筋が伸びた。
マキ「…、うん。教えてくれてありがとう。修二は大丈夫?具合どう?」
修二『心配する事なんか起こってないから、ちょっとタイミング悪かっただけなんだ。もう、百目鬼さんの事、怖いなんて思ってない。ただ、反射的に体が言うこと聞かなくて…。百目鬼さんにはホント申し訳ない…』
マキ「修二がそんな風に思うことじゃないよ。百目鬼さんのは自業自得だし、百目鬼さんはきっと大丈夫だから。あとは任せて」
修二『…マキ…。僕は本当にもうなんともないんだ。ちょっと思い出す事はあるけど、そんなことも少なくなってるし、そんな時は華南とむつが甘やかしてくれるから少し得したなって思うくらいだし。百目鬼さんが自分を責めるような事はしてほしくない。自業自得なんて言わないで…。僕は今、むつと華南がいるから、ちゃんと幸せだし、昔の事はもう乗り越えたんだ。百目鬼さんには、もうあの時の事は忘れてほしい』
修二は、8年たった今でも時々悪夢を見て魘されたりするのに、むつや華南が甘やかしてくれるからって…
マキ「…。華南とむつにいっぱい甘やかしてもらったの?」
修二『ッ、その…まぁ…』
マキ「フフッ、朝まで可愛がってもらったなら良かった」
修二『ぅ…、ッ…、その…、だから、…僕ちゃんのことは置いといて。本当に僕は平気だから。百目鬼さんと会ったタイミングが悪かっただけで、百目鬼さんが気にすることじゃないし!』
マキ「わかったよ。百目鬼さんのフォローは任せて」
修二『…それに…』
マキ「ん?」
修二『マキが教えてくれた。…むつとかには分かってもらえないけど、僕には分かる。マキがいつも百目鬼さんの事で色々話すたび、百目鬼さんはマキをとっても大事にしてるって。そりゃ、マキを泣かせたり悩ませたりすることもあるけど、マキにとってそれは、ちゃんと百目鬼さんに心を許してるせてるって事だし、マキはいつも百目鬼さん大好きで、そばにいられて嬉しいって、幸せだって。だから、本当にもう、百目鬼さんの事は怖くないし、マキが笑うたびに僕も嬉しくなるし、百目鬼さんがマキと一緒にいる時ビックリすりくらい困った面白い顔するからいいんだ』
マキ「え¨?困った面白い顔?」
それは、僕が迷惑ばかりかけてるから…
修二『ふふふっ♪、そう、困った面白い顔♪』
マキ「僕が百目鬼さん困らせてるからザマァみろ的な?」
修二『あははっ、まさか違うよ。
百目鬼さんは、マキと一緒にいる時。マキが可愛すぎて危なっかしって心配し過ぎて、他の人に近づけたくない近づいてほしくないって嫉妬したり、人付き合いを制限しちゃいけないって葛藤してなんとか穏便に普通の態度取ろうとしてるけど眉間のシワは取れなくて、マキに優しくしたい優しくしたいって、でも、優しくってどうすりゃいいんだって迷走して、悩んだ末に口を開いたら、なんだかマキを傷つける言い方しちゃって、シュンとするマキにどうして自分はまたマキを悲しませるんだってオロオロして、優しくしたい優しくしたいって、結局マキを引っつかんで車に押し込んで、家に帰ったら可愛さ余ってメチャクチャにしちゃって、反省して外に出してあげようと努力してるのに、また元に戻って繰り返してますって顔かな♪』
マキ「……」
さすが修二…
それは、僕と百目鬼さんの日常です(笑)
マキ「やっぱり、修二は百目鬼さんの事知ってるんだね」
修二『うーん、ちょっと違うかな…』
マキ「違わないよ、百目鬼さんの事誤解しないじゃん」
修二『誤解されやすい人なのは知ってたよ。言葉が乱暴とか、不器用とか。でもさ、今の百目鬼さんのほとんどは、マキと知り合ってから色々知った表情ばかりだよ』
マキ「え?…あぁ…、確かに前より穏やかになったよね」
修二『うん、穏やかになったけど、そういうんじゃなくて、面白くなった』
マキ「おも…しろい?」
修二『うん。マキと一緒にいる時の百目鬼さんは、すっごい面白いよ。なんて言うのかな、好奇心旺盛のちっちゃくて真っ白な子猫に振り回されて、毎日世話焼いて、毎日可愛がりたいのに可愛がり方が分からなくて悩んで、時に失敗して泣かせて、時に全力で遊んであげて、時に一緒に日向ぼっこして癒されて、もう毎日大変なくらい幸せで充実してるって感じで面白いよ。マキの事、大好きなんだよ』
マキ「ッ!!??」
修二『あっ、マキが照れてる♪』
修二にクスクス笑われて、益々顔が熱くなる。
修二は僕のために絶対オーバーに言ってるって分かってたけど。百目鬼さんが子猫に奮闘してる姿が想像できて、しかもそれが僕なんだって考えたらなんだか恥ずかしくなってきた。
しばらくからかうように嬉しそうに笑ってた修二は、何故かだんだん力なく笑って声が小さくなり、不安気に呟く。
修二『…だからさ。今の百目鬼さん凄く素敵だから、今回僕がフラッシュバック起こしちゃった事、気にしないで欲しいんだ』
マキ「………分かった。僕に任せて」
百目鬼さんを心配する修二に、優しく言うと、修二は、僕の事も心配し出すから、大丈夫だから任せてって説得して電話を切った。
優しい優しい修二。大丈夫だよ。百目鬼さんは修二が言った面白い素敵な百目鬼さんのままだよ。
でも、果たして僕に、どこまで修二の代わりができるだろう。
百目鬼さんの中で、修二は特別大切で、物凄い大きな罪を犯したと感じてる相手だから…
どこまで僕の言葉が届くかな…
直ぐになんとかしてあげたいけど、百目鬼さん3日潜るって…
メールしたら、返事くるかな?
今回の仕事、コソコソしててヤバそうな匂いするから大変だろうしな…
とにかく、僕が、修二がフラッシュバック起こしたの知らない体で話をしなきゃ…。
百目鬼さんには、今目が覚めた事、泉から伝言を聞いて荷物を受け取り、中身が百目鬼さんの形のバイブで驚いた事を事をメールしてみた。
マキ「さて…、どうしたもんかな…」
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