アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
アルバムをなぞる指先の決断16
-
.
矢田さん今度は何をやらかしたんだ!
マキ「矢田さん静かに、ここは病院…」
ガラッとドアを開けて注意したら、何故か矢田さんは窓際に背中をびったりひっつけて両手を挙げていた。
まるで、銃で脅されて怯えるみたいに。
そしてその怯える視線の先には……
百目鬼「…ッ…」
ふらりとだるそうに上半身を起こし、矢田さんを睨みつける神さん…
マキ「神さんッ!!」
思わず弾かれたように大声で叫んで駆け寄った。
マキ「神さんッ、神さん…」
名前を呼んだら、頭が痛いのか僕の声が大きかったのか、こめかみを押さえて渋い顔をしたけど、僕の事をしっかりと睨みながら目が合った。
今度こそ、本当に目覚めたんだ!!
マキ「良かった、良かった神さん…じ…」
安心した瞬間、ボロボロ涙が溢れてきた。
だけど、嬉しくて嬉しくて、笑顔なのに涙は止まらなくて…
そんな僕を見て、神さんは驚いて固まったかと思ったら、オロオロ辺りを見渡した。
矢田さんはさっきの格好のまま、賢史さんは僕が泣いたのを見てニヤニヤしてるし、誰も助けになってくれそうにないと分かると、再び僕を見てオロオロ。
そんなオロオロする神さんの幼い表情が可愛くて、思わず首元にふんわり優しく、でも愛情いっぱい抱きしめた。
本当はキスしたかったけど、賢史さんの言葉で我に返った。
賢史「ほらやっぱり泣き虫だ」
ニヤニヤ嬉しそうな声が背中に刺さる。
もう、感動の再会が台無し。
せっかく腕の中に意識のある神さんが帰ってきたのに、キスはお預け…
百目鬼「…ッ…」
僕が腕の力を入れすぎたか、神さんが僕の腕の中で小さく声を上げた。やばいと思って直ぐに離れ謝った。
マキ「ごめん!痛かった?」
百目鬼「………」
体を離して改めて様子を伺うと、神さんは瞳を大きく見開いて戸惑った様子で僕を見てる。
マキ(え?…)
それははっきりとした違和感。
百目鬼「…ッ…、…ッ…」
神さんは口をパクパク動かし、長く眠っていたせいか、声が掠れて上手く声になってなかったけど、その唇は間違えなく、そう言っていた。
百目鬼『…お、ま、え、だ、れ、?』
ッッ!!!!!!
マキ「……僕が……、分からないの?」
思わず漏れた言葉で、微笑ましく見守ってた賢史さんが事態に気が付いて神さんに詰め寄る。
賢史「はあッ!?神お前ッ!マキのこと分からないのか!?」
賢史さんの荒い声に、事態の飲み込めてない矢田さんは両手を挙げて固まったまま。
僕も事態が呑み込めてない…
神さんは、詰め寄ってきた賢史さんを見上げて訝しげな顔をし、その唇はまた同じように動いた。
百目鬼『…あんたも誰?』
賢史「はあッ?マジ?!うそだろッ?!賢史だ賢史!」
賢史さんの名前を聞いた瞬間。
神さんは不審そうに驚いた目をして眉間にしわを寄せる。
僕の時に見せた反応と違う。
もしかして…
マキ「賢史さんだよ、高校の時同じ学校だった」
情報を付け加えると、驚いて賢史さんを見直す。上から下まで見てから、ありえないといいだけだった。
百目鬼『賢史はこんな歳とってねぇよ』
それは、僕の時と違って知ってるって反応だ。
まさか…
マキ「神さんッ、今あなたは何才!?」
僕の問いかけに、神さんは訝しげに眉を寄せて答えてくれた。
それは、衝撃的な答えが…
百目鬼『はあ?…18』
18ッ!?
マキ「記憶後退……?」
昏睡状態の本を読んでる時、記憶障害の資料も載っていた。
記憶後退…、それは記憶が過去に遡り、遡った地点から過去は覚えてるが、そこから現代までの記憶を喪失している…
つまり…、神さんの今が18才なら、28才の時知り合った僕とのことは、覚えてない…
賢史「え?何?記憶後退?」
マキ「記憶が過去に遡ってるってこと…」
賢史「はあ??」
神さんは……
僕を忘れてしまってる…
ガラガラと何かが音を立てて崩れる。
崖断崖絶壁から放り出されたような絶望感に陥りそうになり、バラバラになりそうな思考と感情を理性で踏み止めた。
マキ「ッ…」
だめだ!だめだ!
しっかりしろ、辛いのは神さんだ!
僕じゃない!神さんが大変な目にあってるんだ!
しっかりしろ!
事故で一時的に記憶が飛んだのかも…
一週間も眠ってたんだもん、頭も強く打ったって言ってたし、一時的な混乱って事もあり得る。
神さんは僕を忘れたんじゃない、今は覚えてないってだけだ、だって18才の神さんはまだ僕と出会ってないんだからッ…
…………
…………。
…………出会う…前…
……出会う…前?
!!!!
賢史「18才って高3か?ってかそれじゃ、マキのこと忘れちまったってことか?嘘だろッ?もう2月なんだぞ!マキのこと忘れちまったなんて嘘だろ!?」
百目鬼「…」
賢史「うわっ!マジかよ!。お前は昔から運が悪くて、ババ抜きしたら絶対ババ引いて負けるやつだったし、大事な場面で必ず二択を外すような心底運のない奴だったけど、このタイミングで記憶喪失はダメすぎだろ!」
百目鬼「……」
賢史「どうすんだよ!マキと一緒になる約束は!どうすんだよ!結婚は!」
百目鬼「!?」
賢史「お前みたいなのはマキ意外いないんだよ!マキに逃げられたらお前なんか一生一人もんだぞ!思い出せよ!!」
僕が固まってる間に、僕以上に取り乱した賢史さんが神さんの胸ぐらを掴んで攻め立てる。
今にも殴りかかりそうなのに気づいて、慌てて止めに入った。
マキ「賢史さん落ち着いて!事故のせいなら一時的にって事もあるから。お医者さんに診て貰って…」
賢史「お前は落ち着きすぎだろ!取り乱せよ!」
マキ「十分取り乱してるから」
賢史さんが大声出してなかったら、賢史さんばりに顔に出てかもしれないけど…
賢史「また顔が胡散臭いヘラヘラ顔なんだよ!」
マキ「はいはい落ち着いて」
賢史「ッ!…」
背中を優しく撫でてあげたら、すっごい納得してないって悔しいそうな顔して、賢史さんは神さんの胸ぐらから手を離した。
マキ「まだ目が覚めたばっかりで混乱してるだけって事もあるし、兎に角看護婦さん呼ぶから落ち着いて」
枕元のナースコールを鳴らし、看護婦さんとお医者さんに兎に角きてもらおうと思って手を伸ばしたら、僕の手を神さんがそっと握ってきた。
百目鬼「…お前は、誰?結婚って…」
掠れた声で一生懸命声を絞り出し、なぜか神さんのその瞳は狼狽えて泣きそうに見えた。
マキ「大丈夫だよ神さん」
大変なのは神さんだ。
それに、人は、ピンチに直面する時、それを絶望だと感じるか、チャンスだと捉えるか、大きく試される。
僕は、大丈夫。
今の神さんは、僕と出会う前の神さん。
〝今度〟は、間違えたりしない。
マキ「僕は、〝茉爲宮優絆〟。みんなから、マキって呼ばれてます。神さんの恋人です」
百目鬼「俺…の?、…こい…びと…」
神さんの負担にならないように、なるべく優しく伝えたら、信じられないって顔した神さんが、数秒固まって……
百目鬼「あ…ッありえない……、////////」
うわっ、神さん顔真っ赤なんですけど…
え?…何この初々しい反応
可愛いんですけど…
茹で蛸みたいに真っ赤っか。
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
122 / 170