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アルバムをなぞる指先の決断28
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【side。奏一。】
会って数秒で、『あやしゃん』の正体に気づかれた!?
色白で中性的で綺麗なマキは、長いまつげの可愛らしい瞳を細めてにっこり微笑む。
さっきまで疲れた表情だったのに、楽しいものを見つけたみたいな悪戯っぽい意味深な顔してニコニコして。
マキが勘がいいのは知ってたけど、エスパーかってくらいの察知度に驚いて開いた口がふさがらない。
この場をどうしたらいいのかわからずに固まってると、マキの問いかけに彩さんもにっこり微笑み返す。
忽那「確かに彩さんって呼ばれてるけど、そんな風に思って貰えてるなら嬉しいな」
マキ「やっぱり♪、奏一さんの話を聞いて想像していた通り、大人でカッコイイ人だったからすぐ分かりました」
いやいや、俺、マキに彩さんの話そんなしてないよ!?
忽那「ありがとう。私は、奏一に聞いてた以上に君が美形だから驚いてるよ。奏一があんまりにも君を褒め過ぎてて可愛い可愛い言うから、どんな美人なのかと思ったけど、本当に綺麗だね。
奏一は、酔うと大好きな弟修二の自慢が始まるんですけど、最近はずっと君の話ばかりしてますよ」
マキ「あは♪、嬉しいけど、それは違いますよ。僕が、可愛い可愛い修二の友達だから気にかけてくれてるんですよ。優しいんです、奏一さんは♪」
忽那「おや、可哀想に。奏一の片思いなんですね」
奏一「ちょっ!彩さん何言ってんの!違うから!」
怖い怖い怖い!!
言葉の会話と心の会話が違いすぎて、ただでさえびっくりなのに、彩さんはなんてこと言うんだ!
マキはマキで、『あなたが奏一さんを好きな〝彩さん〟なんだ♪』って顔してニコニコしてるし!
彩さんは彩さんで、『おや、君は私と奏一のこと知ってるんだね』って意味深にニコニコするし!
彩さんとマキがお互い目だけでそんな会話をしながら、マキが俺をチラッと見て、『奏一さんが悩んだ理由、なんとなく分かっちゃった♪。彩さんカッコイイね♪』なんてニコニコされても俺困るし。
彩さんは彩さんで、『頼りにしてくれてるのは嬉しいな。可愛い可愛いマキちゃんに他には何を話したのかな?。マキちゃんが想像以上に綺麗で可愛いから驚いちゃった。これなら修二みたいに心配しちゃうよね。最近ずっとマキちゃんの事ばかりだものね』
マキ『やだなぁ、僕は奏一さん狙ってないよ♪』
忽那『おや、奏一はこんなにマキちゃんを想ってるのに、奏一振られちゃったね』
って心の声が聞こえるんだけど!!
気のせい?!気のせい?!
気のせいであって!
奏一「とりあえず、寒いから車に乗って。少しあいつの話を聞きたいから」
慌ててる俺に押し込まれるように、マキは俺と一緒に後部座席に座る。
2月の深夜の気温は肌に刺さるように冷え切っていて、ほんのちょっと外にいただけなのに、俺もマキも指先がかじかんだ。
その冷えた指先に息を吐きながら、マキは俺の方をニコニコ見てるし、彩さんも運転席から振り返って俺を見ながらニコニコ。
顔の良すぎる2人にそんな満面の笑みで見られて、第三者だったらちょっと羨ましいかもだけど、綺麗な可愛らしすぎる顔と端正で優しげな顔にこんな至近距離で見つめられると…、かえってなんか企んでそうで怖い。
っていうか、狭い車内で2人に囲まれて、こんなこと考えちゃいけないんだけど…、マキも彩さんも2人とも恋愛対象は……
いけない…こんなこと考えちゃ。
ここ半年くらい、彩さんや羚凰が。俺が断った後に変わらず友達として接していいのか悩むから、気を使って迫ってこないようにしてくれてたから、至近距離で意識したの久しぶりで2人に失礼な事を…
奏一「それでマキ、マキは大丈夫なの?」
マキは、さっきも言ったじゃんって困ったように笑ってたが、俺がまっすぐ見つめると、少し観念したように肩をすくめる。
マキ「嘘は言ってないよ。ちょっと疲れてるけど、奏一さんに夏に迷惑かけた時ほど落ち込んではいないし、僕がしっかりしなきゃ、百目鬼さんを支えてあげられないでしょ」
果たして本当だろうか?
マキは感情を隠すのが上手だ。
今のマキが本音を話してるのか、彩さんの目を見て答えを聞いてみた。
彩さんは俺の視線の意味に気がついて、マキを探ってくれた。
忽那「百目鬼さんの容態は?」
マキ「事故の怪我はそうでもないんです。足の骨折が少しかかるけど、あの事故でこの程度なのはかなり運がいいってお医者さんが…。記憶の方は、多分事故のショックから一時的に後退性記憶になってるんだろって。今の百目鬼さんは18歳で、まだ、今の環境では神経をすり減らすばかりで…、今はまだ、30歳の百目鬼さんの事は聞きたくないみたい。だから…、少しリラックスしてほしくて、18歳の百目鬼さんの知り合いと話をさせてあげたくて…」
忽那「そう。それで谷崎を…。確かに谷崎は百目鬼さんと同じ学校で朱雀の人だけど、奏一は?」
マキ「百目鬼さん、奏一さんのことも修二のことも記憶を無くしてて、だから多分、18歳の百目鬼さんとは出会う前だったんだと…」
忽那「それで谷崎…。まぁ、谷崎は察しはいいほうですから、会っても大丈夫だと思いますが…。事故のショックの記憶喪失ね…」
マキ「お医者さんが言うには、確かに頭を強くぶつけてるけど、異常は見られないって…。ちょっと不思議そうにしてました。だから少し元の生活をしてみて様子を見ましょうって…。でも、18歳の百目鬼さんは、まだ、自分の事を自覚する前で、僕との関係が負担になってる。ただでさえ、知らない土地、知らない人達、さらに知らない部屋で男の僕と2人きりなのが随分辛そうで…」
忽那「…、それで、奏一が来るのを渋ったんですか?」
マキ「…はい。18歳の百目鬼さんをこれ以上傷つけたくなくて…。ゆっくり順番にと思って、今はまだ、彼自身の気持ちが現状に追いつくのを待ってあげたくて」
忽那「…、彼の事を支えたいなら自分のことも大切にしないとね」
彩さんの手が、マキの頬をなぞる。
その指先が目元で止まった。
忽那「眠らないと、そのうち彼を支えたいのに出来なくなるよ」
マキ「移動が多くて寝れなかっただけで、今はだい…」
忽那「君が取り繕うのは、今ではないはずだよ。本当に百目鬼を支えたいなら、自分の力だけじゃ足りないってもう悔しいくらい自覚してる。彼を支えたいなら、今意地をはるのは得策じゃないし、君が思ってるほど奏一の目を誤魔化すことは出来ない。奏一は、あの修二のお兄さんですよ。溜め込むのを吐かせるのも見守るのもしてきた、そんな奏一に引く一線なんて作っても無駄です。私なんかに言われなくても君は十分分かってるはずでしょ。支える手は多いいほうがいい」
彩さんの緩やかな優しい優しい口調と笑顔はさっきまでと変わらないのに、その言葉の意味はさっきまでよりもシビアで、それを聞いてるマキの表情は見た目は変わらないけど。
俺には分かる。
彩さんの言葉はマキの心から一瞬でキレイな笑顔を剥ぎ取った。
忽那「それに、君の〝恐れてること〟を、私なら防ぐ手伝いができますよ」
マキ「…」
ど真ん中に容赦なく突きつけたって空気が流れてる。
彩さんの人を安心させる優しい優しい口調と、優しさ溢れる笑顔なのに、彩さんの最後の言葉に、マキの目の表情が明らかに変わった。
マキの〝恐れてること〟?
それってなんだ?
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