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アルバムをなぞる指先の決断32
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【百目鬼side】
朝目が覚めると、また、訳のわからない現象が起こるんじゃないかって怖くなる。
だけどその恐怖は、意外な感情に変わる。
ミケ「にゃー」
百目鬼「ッ!?」
クリッとした瞳に覗き込まれ、その毛並みのいいしなやかな猫は、ミケ猫のミケ。俺が寝返り打ったら潰してしまいそうな小柄な動物がそばにいる事に、いつまでたっても慣れない。
百目鬼「あっち行け」
この百目鬼事務所の上の自宅に来てから、この猫はやたらと俺に絡んでくる。
一歩間違えば踏み潰しちまいそうで、近寄って欲しくないのに近づいてくる。
大きな綺麗な瞳が、心配そうに、こちらを伺うように近づいて来て…
この家の住人そっくり…
追い払った猫がドアの外に逃げていく、そこから、甘い良い匂いがする。
俺がこの家に来てから毎朝の光景。
ふかふかの温かいベッド、漂う朝食の甘い匂いに混じった、ちょっと焦げたような匂い。
マキ「おはよう♪」
優しくキラキラした笑顔。知らないはずのそいつは、俺に向かっていつも嬉しそうに笑ってる。
百目鬼「…お前、いったい何時から起きてんだ?」
料理が不得意なこいつは、6時を回ったばかりなのに朝食の準備中。俺は、この家に来て、こいつが寝てるのを見たことがない。
マキ「さっきだよ♪、まだ早いけど起きる?今日はデート日和のとっても良いお天気になるって♪」
閉めっきったカーテンを開けて、まだ薄暗い外の明かりが見えた瞬間、俺の目はとんでもないもに気がついた。
百目鬼「おまッ…、それッ…」
エプロンの下に見える、スラッと長い色白の生足。
マキ「あはっ♪やだなぁ♪。安心して下さい、履いてますよ♪」
プリッと見せられた後ろ姿には、下着だか短パンだかわからない布がくっついてるだけで、慌てて目を逸らした。
だってこいつ、男の筈なのに、びっくりするぐらい柔らかい曲線の尻に、なんとも言い難いヤバイきらいの脚線美。
こいつ、会ったばっかの時から思ってたけど、ヤバイオーラ半端なくて、それがなんなのかずっとわかんなかったけど、今分かった。
こいつ、糞色っぽい…
見た目女みたいで、でも男で、仕草はどっちとも取れる色っぽい感じと、男みたいな強い決断力みたいな感じと…。
男でありながら、女みたいに綺麗で。
女みたいに可愛くありながら、男らしい。
俺を恐れないどころか、怒鳴り返してさえくる人物。
茉爲宮優絆…
マキ「どうぞ召し上がれ♪」
百目鬼「…」
マキ「もぉ、機嫌直してよ。ちゃんと服着たじゃん」
百目鬼「…、お前、よくあんな格好できるな、露出狂か?」
マキ「朝シャンしたから暑かったの。それよりさ、今日どこにデートに行く?♪」
茉爲宮からシャンプーの良い匂いがして、可愛らしい笑顔で首をかしげられ、ホントいちいち勘弁して欲しいと思う。ただでさえ、なんか、こぉ…、なんてーか…、グワッと…ヤバイ感じすんのに、目覚めた時か見た泣き顔がいちいちチラついてどうにかなりそうになる。こいつの表情、仕草1つで、なんかすげーグワッグチャ、ぐるぐるってなっから訳わかんねーのに。この茉爲宮優絆って奴は、普段、からかうみたいに悪戯っぽく笑いながら眩しいくらいキラキラした瞳で真っ直ぐこっちを見る。俺を、俺なんかを好きだと、恥ずかしげもなく真っ直ぐに。そんなこいつに胸の中が騒つく、グワッとなってグチャっとなって、掴まれたみたいに苦しくなって、訳がわからない。そんな風に俺の中を乱してくる癖に、悪戯っぽく好き好き言うその瞳は、俺の名前を呼ぶ時だけ、恥ずかしそうに揺れて逸れてしまう。
マキ「…、神は、普段どこで遊んでるの?」
百目鬼「…どこって言われても…」
茉爲宮は隠そうとするけど、普段のへらへら笑う笑い方からフッと急に瞳が揺れる。背けた視線のせいで、僅かに赤らんだ頬が逆に強調されてしまって、茉爲宮が平常心じゃないと分かってしまう。
30歳の俺と養子縁組を組んで結婚する予定の間柄にしては、まるで何も知らない生娘みたいな反応しやがる。怒鳴る俺に怒鳴り返す度胸がある癖に、なんでもお見通しって面していつも自信たっぷりな癖に、なんで名前1つでそこまで照れんだ!
男の癖に長いまつ毛、雪みたいに真っ白な肌、中性的な顔立ちは、どっからどう見ても女みたいで、もしも茉爲宮優絆が女だったら、俺はこいつを好きになったりも出来たんじゃねーかとさえ思っちまう。
こいつが女だったら…
女だったら
こんな綺麗で可愛くて、こんな俺を好き好き言ってくれて、至れり尽くせり世話してくれる。こいつが女だったら、俺の悩みも全部なくなって、こんな夢みたいな相手はいないだろう…
こいつが女だったら、俺は道を踏み外さなくて済んだ…
こいつが女だったら、普通になれたんだ…、普通に好きになって…、普通に想い合って…、大事に…
『『あんたがッ!あんたが居たから不幸になったのよッ!!』』
………。
脳内に刻み込まれたヒステリックな女性の声は、呪いのように響いて縛る。
何かがあるたびに響くその声は、何度も何度も告げる。
『『あんたの存在が人を不幸にするのッ!!』』
そう泣きながら罵る人に、小さな小さな手を伸ばした。言葉の意味を理解するより先に、泣いてるその人を抱きしめて、抱きしめ返して欲しいと思ったから。いつも片時も離さないほど愛情いっぱい抱きしめてくれた人が泣いているから、抱きしめてあげたかった。だけど、小さな小さな手は、払いのけられ、さらなる罵声憎悪が浴びせられた。
あぁ、そうだ…。
こいつが女でも…、結果は同じだ…。
こいつが俺を好きなわけない…
俺なんかを、好きでい続けるわけない…
百目鬼「…、デートなんかしたことねーし、遊ぶとかもねぇーよ。俺金ないし」
マキ「じゃあ友達といつもどこに行くの?」
百目鬼「…、河原でだべってるか…、公園行くか…。あぁ…、先輩の後くっついてゲーセンくらいは行くけど、俺は金ねぇーから見てるだけだし」
マキ「カラオケとかボーリングとかしなかったの?」
百目鬼「はぁ?カラオケなんか行かねぇーし、だから金ないって言ったろ」
マキ「じゃあ、理想のデートプランは?彼女出来たらどこ行きたいとか」
百目鬼「はあ?いや…そんなこと考えな…」
マキ「ふふ♪照れてるの?可愛い♡」
百目鬼「キモいこと言うな!」
マキ「耳真っ赤だよ♪」
百目鬼「てめぇーッ」
マキ「ふふ♪、じゃあ理想のプランも無いなら、いつも言ってるとこに行こう」
百目鬼「は?」
マキ「河原とか、公園とか、ゲーセンとか♪ふふっ♪楽しみだなぁ♪ゲーセンとかはじめてぇ♪♪」
百目鬼「えっ…」
屈託なく笑うこいつ
至れり尽くせり面倒見てもらって
なんだかぬるま湯ん中いるみたいになる
30歳の俺の恋人だと言う茉爲宮優絆と
どう接して良いのかさっぱり分からない。
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