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アルバムをなぞる指先の決断34
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店の奥に移動した俺と茉爲宮。
茉爲宮は、おもちゃ屋ではしゃぐ子供のように目をキラキラさせて店内をうろちょろうろちょろ。ゲームセンターに来たのは初めてだとか嘘みたいな事をぬかしてはしゃぎまくる。
マキ「凄ぉい♪、ねぇねぇ♪どれやるの?」
百目鬼「お前好きなのやれよ」
マキ「えー、私やり方知らないもん。一緒にやろうよ♪」
百目鬼「俺金ねぇし」
俺は一銭も持ってない。
12年経ってるこの世界で、俺のものなんか1つもない。まぁ、12年前だって、俺は高校生で、店の手伝いしてた程度で金なんか持ってなかったがな。
マキ「お金なら私が持ってるよ♪」
百目鬼「そりゃお前の金だろ」
マキ「…ふふっ♪真面目♪。ねぇ、さっき言ってた懐かしいのってどれ?」
適当に言った言葉を覚えられてて正直焦った。
見渡す限り、見慣れない機械ばかり。
知ってるのもあるっちゃあるが、モグラ叩きとかエアホッケーとか、だけど、それを一緒にやろうとか言われても困る。
答えに困っていたら、店のさらに奥に、知ってるやつを見つけた。
百目鬼「あれだよあれ」
慌てて指差したのは、昔流行ったボクシングアニメをモチーフにしたパンチングマシーン。
マキ「懐かしい!私もこのアニメ知ってるよ。神は見てたの?」
百目鬼「いや、俺は漫画で見てた」
マキ「そうなんだ」
百目鬼「お前はアニメ見てたのか?」
華奢な綺麗な顔が、このアニメを見てたのか疑問で聞いたら、茉爲宮は笑いながら「ううん、アニメも漫画も見たことない。うちにはそういうのなかったから」とか言う。
思ったんだけど、こいつって箱入りなのか?
顔に気を取られて思いつかなかったけど、行動や仕草が女っぽいと感じるのは、箱入りで育ちがいいからなのか?
マキ「ねぇねぇ、これってどうやるの?」
百目鬼「こんなの、グローブはめて的を殴りゃいいだけだ」
朱雀の連中と誰が一番か競ったことがある。
だけど所詮はゲームだ。何回かやればコツが分かってあっという間にみんな変わらないスコアになった。
って言っても、コツもくそもなく一番にマックス出したのは、やっぱリーダーだったけどな…
マキ「ねぇねぇ勝負しようよ♪」
百目鬼「はあ?お前と俺で勝負になるわけねーだろ」
マキ「分かんないよ♪。私、武道やってたから結構強いんだよ♪」
百目鬼「合気道か?」
マキ「ブブー、空手です♪」
そう言いながら、スカート姿の茉爲宮は、お金を入れてグローブはめて、ウキウキとその拳を放った。
マキ「エイッ!」
ちょっとふざけた掛け声とは違って、本人が言うだけのことはあるストレートは、華奢な腕からは想像できない鋭さで空気を切って的を沈めた。
マキ「あはっ♪、230だって♪どぉどぉ?」
女みたいに細っこい体と、女みたいな顔面だから、ヘロヘロパンチを予想してたが…。やっぱり男なんだな…。
百目鬼「へー、いい筋してんな」
マキ「へへっ♪ちょっと焦った?」
百目鬼「いいや、やっぱ勝負するまでもないな」
マキ「えー、まだ始めたばかりじゃん、しかも私始めてやるんだし、それに、コレ、3回の合計点数で決まるんでしょ」
こいつ、本気で俺と勝負できると思ってんのか?
点数を4倍にしたって、俺には勝てないぞ。
百目鬼「どけ」
茉爲宮を退けて、俺はパンチングマシーンの真ん前に立った。足を骨折してて右足は使えないが、助走はいらない。
拳を叩き込んだ瞬間機会が激しく軋み、画面に表示されてたキャラクターが吹っ飛ぶ。その画面いっぱいに、9だけが並ぶ。9しか並ばないのは、それ以上の数字が存在しないから。
マキ「えっ!?」
茉爲宮の驚いた声がして、俺のパンチ力にびっくりした茉爲宮が、素の表情で口をぽっかり開けていたことに、何故か面白い気持ちがした。
マキ「999って…え?…」
百目鬼「これで分かったろ、勝負になんないって」
へらへらしてない、びっくり顔の素の茉爲宮は、俺に怯えるかと思ったが、その顔はあっという間にキラキラした顔に変わる。
マキ「凄い!凄い!、これってマックスだよね!どうやったの?!」
はしゃぎまくる茉爲宮は、その勢いのまま俺に抱きついてきやがるから、今度は俺がびっくりさして固まった。
だって小さなチワワが尻尾振りながらまとわりつくみたいで、今にも踏んづけちまいそうで動くに動けない。
マキ「凄い凄い!神ってちょー強いんだね♪」
百目鬼「ちょっ、放せよ」
マキ「あは♪照れてるの?」
百目鬼「ちげーよバカ!」
マキ「じゃあじゃあ♪、私にもコツ教えて♪」
百目鬼「分かった!分かったから!」
まとわりつく茉爲宮を引っぺがし、グローブを持たせ、助走の付け方と、茉爲宮はストレートに真っ直ぐ殴っていたが、これは押し込むように体重を乗せた方が点数が伸びると教えてやると、茉爲宮は俺から離れてパンチングマシーンに向かったのでホッとしていた…
だって…
抱きついてきたあいつの体があまりにも…
マキ「見て見て!!♪やったぁ♪スコア上がったよ♪♪」
俺の教えたことを実行した茉爲宮が、満面の笑顔で画面を指差し、また俺に飛びついてきた。
百目鬼「バッ!…」
マキ「見て見て♪42点も上がったよ♪」
百目鬼「分かったからひっつくな!」
マキ「ねぇねぇ、もう一回やろう♪」
百目鬼「お前の合計は俺の一回にもかなわないのにやっても無駄だろ!!」
こいつ、華奢な癖に全然離れない!
ってか、力はこっちの方が上なのに、これ以上力入れたら折れちまいそうで…
マキ「じゃあ次、次の勝負ね♪」
茉爲宮は俺がこれ以上力を入れない理由が分かってるみたいにニヤニヤしながら、スルリと腕に抱きついて歩き出す。
百目鬼「いやいや、腕を離せ、松葉杖使えないだろ!」
マキ「私が支えてるし、松葉杖は一本しか使ってないんだから大丈夫♪」
大丈夫じゃねーんだよ!
マキ「次何やる?決めたら離してあげる♪」
小悪魔みたいな茉爲宮の笑顔、俺の腕に抱きついて子供みたいにはしゃぐ。
百目鬼「お前の好きなのやりゃいいじゃんか!」
さっさと離れたくて怒鳴ったのに。茉爲宮は、リップの塗ってある綺麗な唇を細めて、「ダァーメ♪」と楽しそうに笑った。
百目鬼「じゃあそれ!それにしろ!」
一刻も早く離れて欲しくて、目の前のゾンビを倒すシューティングゲームを指差した。
マキ「そんなに照れなくても♪」
百目鬼「バカ!男にひっつかれてもキモいだけなんだよ!」
マキ「残念♪、今の私は女の子だから周りを気にして怖がんなくても、ただのカップルにしか見えないから大丈夫だよ♪」
そういうことじゃねぇっ!!
百目鬼「次決めたんだからさっさと離せよっ!」
マキ「もぉ、ほんと照れ屋さんなんだから♪」
笑いながら離れた茉爲宮が、シューティングゲームにお金を入れに行った。やっと解放されたのに、俺は茉爲宮が離した手に残る感触に困惑した。
腕が…ジンジンする…
茉爲宮が抱きついた時も、握られた腕も…
なんだか…
マキ「ほら、始まるよ♪」
乱されるばかりの感情に、意味がわからないし分かりたくない。
マキ「点数が高かった方が勝ちね♪」
百目鬼「…。俺が勝ったらもう俺に触るな」
マキ「ふふ♪、良いよ♪」
触ってほしくないって思いが先走ってそんなことを言ってしまったがすぐ後悔した。
勝ったら帰るって言えばよかった。
だってこのシューティングゲーム、協力プレイが基本だし、俺はこの後一度も茉爲宮に勝てなかった。
ゾンビのシューティングゲーム、マ◯オカート、音ゲーに、反射神経ゲーム、バトルゲーム…テトリ◯に、クイズゲーム…
つーか…
こいつ、ゲーセン初めてだって言ってなかったか…?
百目鬼「ふざけんな!お断りだ!」
マキ「えー、でもぉ、私が勝ったんだしぃー、ご褒美にプリクラ1枚くらいいいじゃぁん♪」
百目鬼「バッ…、俺は足を怪我してるんだぞ!」
マキ「アーケードゲームには関係ないじゃん♪クイズとか頭使うだけだし♪」
百目鬼「お前大学生だろ!俺はまだ高3だ!ずるだろ!」
マキ「えー、クイズだから別に関係ないよ」
百目鬼「関係ある!」
マキ「プリクラそんなに嫌なの?」
百目鬼「あんなの女がやるもんだろ!」
マキ「男の子も撮ってるよ、カップルとか」
百目鬼「お前は男だろ!カップルじゃない!」
マキ「今はどっから見ても女の子だってば、可愛いでしょ?」
百目鬼「可愛くても、中身は男だろ!」
マキ「…。もぉ…、そういう不意打ちなのも変わんないんだから…。分かった、プリクラの代わりに違うのにしてあげる」
百目鬼「違うのって…」
マキ「負けたんだから文句言わないの。何にしよっかなぁ」
百目鬼「分かった!なんか可愛いぬいぐるみ取ってやる!」
何か他の恥ずかしいものを提案される前に目に入った俺が出来そうな事を言っただけだったが、茉爲宮はこの案をかなり喜んだ。
クレーンゲームを全部見て回ってから、茉爲宮の気に入るものを探し出し、そのぬいぐるみを少しさ時間はかかったが取ってやった。
この時ばかりは、友達にクレーンゲーム得意な奴がいて良かったと思った。前まではこんなもんに金かけるなんてと思って友達をバカにしていたが、そいつが、このタイプはここから攻めればいいとか自慢げに話していたことに感謝した。
マキ「可愛い♡ありがとう♡」
茉爲宮は、俺の取ってやった大きなウサギのぬいぐるみを抱きしめて、どっちが可愛いんだか分からない程本当に嬉しそうに笑った。
その瞳が、心なしかうるうると揺らいでいた気がして、ちゃんと顔を見ることができなかった。
マキ「大事にするね♡」
百目鬼「…あぁ」
マキ「じゃあ、今度は私が神に犬のぬいぐるみ取ってあげる♡」
百目鬼「えっ!?バカ!いらねぇーよ!」
マキ「照れない照れない」
百目鬼「照れてんじゃねぇー!あんなブサイクなのいらねぇーから」
マキ「照れない照れてない♪」
百目鬼「人の話聞いてねぇだろ!」
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