アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
アルバムをなぞる指先の決断37
-
.
【sideマキ】
『やっぱ、無理だわ。お前のこと受け入れらんねぇ』
そう告げた彼の瞳は、何故かその言葉を言われた側のように傷ついた色をしていた。
彼が何を悩んで、何を困っているのか、なんとなく分かる。自分のセクシャルティーを受け入れられない人達を何人も見てきたし、自分の性壁を受け入れられない人もいっぱい見てきた。
男を好きになるわけない。
そう言う彼の瞳は、何度も僕を見る。
僕がその瞳に気が付いてないフリをしてる間ずっと…
無理だと言いながら、その瞳は熱を帯びて、混乱して動揺してた。
神さんは昔僕に聞いた。
自分がゲイであることに悩まなかったのかって。
だから今彼は、男に目がいく自分と戦ってる最中。
僕ならなんとかできる。
そう思っていたのに、彼を説得しながら、神さんにプロポーズされた時のことを思い出してしまった。
『お前が産まれてきたのは、俺と出会うためだったと思えるくらいにするから』
僕も…
僕もだよ神さん。
僕も、神さんが産まれてきたのは、僕と出会うためだったって思ってもらえるようになりたい…
記憶の無い神を、温かく見守って僕が守ってあげたいのに、僕は、自分で思ってる以上に焦ってる。
神さんに会いたい。神に早く思い出して欲しいって…
だから…
駄目だと知っていたのに泣いてしまった。
自我を押さえておけなかった…。
涙を見た神が、きっと困って正常な判断が出来なくなると知ってたのに…
困って僕を見下ろす瞳が、欲情の色に染まっていることに、僕自身が我慢できなかった。
涙というものに抗えない神の首に絡みついて引き寄せた。
抗えない彼から、唇を奪った。
やり直したかったはずなのに…
百目鬼神さんと出会い直せてたら、薬なんか使わず、体で堕とす事もせず。百目鬼神さんが望んでるように、誠実な関係で普通に恋愛したかった…
普通に出会ってても、僕を好きになってくれてたか知りたかった。
18歳の高校生の百目鬼神の出現。
忘れられたのは悲しかったけど、最高のチャンスだったのに…
奏一さんも修二とも出会う前…
2人を好きになる前の彼に出会えて、僕がずっと知りたかった答えを聞けるチャンスだったのに…
『やっぱ、無理だわ。お前のこと受け入れらんねぇ』
そう言いながら、僕の瞳を見れない傷ついた顔をする彼。男は無理だと言いながら、僕を何度も見つめて、僕と目が合うと恥ずかしそうに逸れる。
僕が触れるのを異様に嫌がり、その耳は必ず赤くなる。
嫌われてはいない、意識されてる。
それだけは分かっていた。
僕が綺麗な顔で見た目女みたいだから、抵抗も少ないのかもしれない。この容姿であることに、物凄く感謝してる。女っぽいからついついだったとしても、僕は構わない。
隣に居られるならなんだっていい、なんでもするって…
あんなに頑なに決心したのに…
僕は自分に負けて〝神の〟唇を奪ってしまった。
彼の心がついてきてないと知りながら、彼を襲ってしまったんだ。
だから仕方ない…
隣にいたかったけど、逃げ出されて公園の遊具の中に逃げ込まれても…
マキ「ねぇ神、ごめんって、さっきっから謝ってるじゃん。いい加減遊具の中から出て来てよぉ」
僕とキスしちゃった彼は、河原に自転車が通りかかったことで我に返り、僕から逃げ出した。
って言っても、走ったわけじゃなくて、スタスタ顔を真っ赤にしたまま歩いてっちゃった。
ここら辺は何にも無い住宅街で、彼は逃げるにも限界を感じたのか、公園に入り込んでいってしまって、姿が見えなくなったと思って探したら、公園の中のタコの形をした滑り台のしたの洞窟みたいになってる場所に入り込んで縮こまってた。
見た目は30歳強面の彼がそんな所にいるもんだから、可愛くて可愛くて仕方ないけど、彼を驚かせて傷つけたことは事実で、ちょっと困ってる。
百目鬼「…」
マキ「ごめんって、いきなりキスしちゃって」
百目鬼「ッ!!」
駄目だこりゃ…。
人目のあるところでやったのが失敗だった…
家だったら最後まで出来てたかもだし、神が暴走しかけなくて済んだのに…
でも…我慢できなかった。
僕に初めて欲情を覚えて戸惑う瞳と体温に、僕の理性が限界だった。
マキ「ねぇ、そんな窮屈な所にいないで出ておいでよ。もう無闇に触ったりしないから」
百目鬼「…」
無視か…
もう、ホント初心なんだから…
襲っちゃったとはいえ、ちょっと唇が触っただけなのに、別に舌突っ込んだんじゃ無いのに…
この状態昔神さんが、僕を襲って反省するために布団に包まって出てこなかったのを思い出す。
あの時も可愛かったけど、今回はキスだけだ。しかも唇が触れただけの軽〜いやつ。
マキ「…ねぇ神。そろそろ出て来てよ。夕方に君の実家に行く約束してるからそろそろ行かないと遅くなる」
百目鬼「はあッ!?」
おっ、やっとこっち向いた。
マキ「退院して落ち着いたら、実家に顔見せる約束してたから、今日そうしようと思ってたの。おばあちゃんとおじいちゃん達が首長くして待ってるから、そろそろ行かないと」
百目鬼「なに勝手に決めてんだ!」
マキ「やっと口聞いてくれた」
百目鬼「ッ!?」
マキ「ごめんって、もうしないし触らないから、そこから出て来てよ。おじいちゃんとおばあちゃん待たすと心配かけちゃう」
おじいちゃんとおばあちゃんの名がでて彼は渋々遊具から這い出てきた。
百目鬼「ち、近づくなよ」
マキ「はいはい」
拒否の言葉と正反対そうな真っ赤な顔してきょどる彼は可愛らしいだけで、露骨に僕から距離を取りながらビクビク歩く姿に吹き出しそうなのを我慢しながら、彼の実家のある定食屋に足を向けた。
実家に歩きながら、どうやって彼の警戒を解こうか考えていた。いろいろ考えて18歳の彼は童貞だから仕方ないのかもと思い始めた時、ふと気がついた…
もしかして…
18歳の彼にとって
あのキスが初めてなんじゃ…
とも思ったが、僕まで顔が沸騰しそうだから、考えるのをやめた…
.
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
143 / 170