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アルバムをなぞる指先の決断38
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百目鬼さんの実家には、おじいちゃんとおばあちゃん、百目鬼さんの義理のお母さん、全員ではないけど義理の兄弟たち、そしてその子供たちがいた。
神は、記憶の中の兄弟が12年も年を取っていて、さらに会ったことない子供達に戸惑いって固まってる。
30歳の神さんは、甥っ子姪っ子たちをとても可愛がってオムツを替えたり、遊んであげたりしてたから、子供たちは直ぐに神に遊んで遊んでと群がり。
そして、
大人たちの視線は女装してる僕に釘付け。
僕に会ったことあるのは、蘭さんと凛さんと弟の倭(やまと)さんだけだから仕方ない。
神さんの家族と初対面、印象良くしておかなきゃね。
にっこり微笑んで会釈したら、みんな視線は僕を見て表情が固まったまま会釈して、なにやらコソコソお話中。「神兄の彼女!?嘘だろ?」「でも婚約してるって」「芸能人?」「モデルさんじゃない?」「ってか野獣と美女じゃん!」
みんな僕を見て驚いてる中、蘭さんが僕に話しかけてきた。
蘭「…お兄ちゃんを連れて来てくれてありがとう。その後はどう?」
病院で僕が男の恋人だと知ってから、よそよそしくなった彼女。今日も複雑そうな瞳が、僕を真っ直ぐ見ることはない。
マキ「変わらずです」
蘭「そう…」
残念そうにそう言った蘭さん。ずっと何か言いたそうにしてるけど、百目鬼さんの記憶が戻らないとなんともならないのだろう。きっと、僕の事を確かめたいんだ。
神さんの実家で大勢で夕食を食べた。
神さんの兄弟たちは、僕を遠巻きにあれやこれや話すばかりで、僕に話しかけるのは、神さんのおばあちゃんと義理のお母さん、そして蘭さんだけ。
神は子供たちに囲まれて、困った顔しながらも付き合ってあげてて、神の膝の上には常に誰かしらが座ってた。
「せいちゃんズルいさっきも座ってた」
「なーちゃんもさっき座ってたじゃん」
「ちーも、ちーも」
「まいの番だよ!」
「バブー」
「おいちゃんだっこぉー」
百目鬼「待て待て!順番だろ!6人でむらがんな!」
凛「お兄ちゃん子供相手なんだからもっとやさーしくね、やさーしく」
百目鬼「だったらお前が抱っこしろ!」
凛「お兄ちゃんモッテモテー、羨ましいなぁー」
百目鬼「見てないでなんとかしろ!」
神さんは、頻繁には会いに来てないけど、兄弟や子供たちの誕生日やクリスマスには、必ずプレゼントを送ってて、たまに会う時もおもちゃを土産に来るから、子供たちには、神さん自体がサンタさんみたいな存在らしい。
こんな神さん見たことないから、すっごい面白いし楽しい。
祖母「うるさくてごめんねマキちゃん」
神さんのおばあちゃんが、お手製の煮物を持って僕の隣に座った。おばあちゃんとお母さんは、この豪華な夕飯を作って出すために、さっきっから一度もゆっくりしていなかった。
マキ「いいえ、私、大家族とか憧れで、すっごく楽しいです」
祖母「マキちゃんご兄弟は?」
マキ「腹違いの兄がいますが、別々に暮らしててあまり関わりがありません…」
祖母「そう、じゃあご両親と3人なのね」
マキ「父はいません。母は、私を産んですぐ亡くなり。父方の叔父に引き取られて大事に育ててもらいました」
祖母「まぁ、ごめんなさい」
マキ「気にしないでください。叔父は本当に優しくて、なに不自由なく育ててくれました。ただ、食事の時間静かすぎてつまらなかったから、食卓でワイワイみんなで食べるの憧れてて、ご飯もすっごい美味しいし、楽しくて食べ過ぎちゃう」
祖母「お口に合ったなら良かった。田舎料理ばかりだから心配してたのよ、ありがとう、おかわりならまだまだあるから」
マキ「神さんと…同じ味がします」
祖母「…。神は、私とおじいちゃんのお店をよく手伝ってくれたから…。小さい頃からずっと。…。おじいちゃんが包丁の持ち方教えたのよ、ねぇおじいちゃん」
おばあちゃんがそうふると、隅っこで黙々と食事してたおじいちゃんが、こっちに話をふるなって顔して、神さんにそっくりの眉間のシワを作ってそっぽを向いた。
祖母「あらやだ、可愛いお嬢さんが来てるからって照れなくてもいいのに」
おじいちゃんに睨まれても、おばあちゃんはケラケラ笑って「照れ隠しだから気にしないで」って楽しそう。おじいちゃんはさっさと食事を済ませ、隣のテレビが観れる部屋へ行ってしまった。
神さんそっくりな、照れ隠しの顰めっ面をして…。
神さんの家族。
優しくて世話好きなおばあちゃん。頑固で無口の職人気質なおじいちゃん。良く笑って面倒見のいい義理のお母さん。神さんと仲良しで兄思いの義理兄弟たちとその子供たち。
神さんといると感じるあったかい気持ち。
それが全部ココにある。
神さんの家、神さんの家族。
神さんが育った場所。
本当に嬉しい…。神さんの家族を見れて。
僕の正体を明かすことはできないし、もう来ることができないかもしれないけど、神さんが育った環境が見れて、一緒に過ごせて本当に嬉しい。
神さんの生まれ育った場所がこんなに温かい場所だから、あの世話焼きで心配性で不器用な優しい心があるんだって思うとたまらない。
僕の出会った神さんを作り上げた場所。
神さんの昔話をたくさん聞いた。
アルバムも見せてもらった。神さんが持ってるアルバムには〝抜けてる〟ところも、神さんが持ってない写真も沢山あった。
祖母「神は小さい頃から優しい子で、良く捨て猫にエサやって、猫がお店の前に集まるようになっちゃって、おじいちゃんに怒られてたわ」
今では、野良に餌やる矢田さんに怒ってるけどね。
祖母「神は顔があんなだから生傷が絶えなくてすぐ喧嘩してきて、これ以上悪くなったらどうするのって何度も注意したけど、まさかこんな綺麗な子と一緒になれるなんてね。マキちゃん本当に神でいいの?」
マキ「神さんがいいです。初めて見た時からわかりました。一生懸命な方なんだって、その必死な顔にときめいちゃったんです」
大好きな人を振り向かせたい。だけど自分にはその資格がないと苦悩して、なんとか変わりたいともがいてた。
祖母「本当?この子おじいちゃんそっくりで怖い顔してるでしょ?おじいちゃんが愛想がないのに、神も愛想がないから、常連さんからは金剛力士像って言われてたわ」
〝神さんには内緒で来ちゃった〟けど、楽しくてすっごく幸せ。
神さんの家族と過ごせて嬉しい、神さんの昔話なんか可愛らしいものばかりで身悶えしそうだし、神さんづくしでこんな幸せな空間ない。
まぁ、
神さんにバレたら怒られそうだけどね…
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