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アルバムをなぞる指先の決断42
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神さんが好きだ。
神さんが望むなら全部あげたい。
その気持ちは本当だけど、全部あげれてなかった。
百目鬼『…お前はどうして…、素直になれない』
そう言われるたびに、『素直だよ。僕は神さんといられたらそれで幸せ』って答えてた。
神さんには眉間にシワを寄せられるけど、本当のことで嘘ではないけど、僕の心の中には余白を作ってあった。
神さんの大切な人、修二や奏一さんや家族のことで余計な気持ちを持ってはいけない分の距離。
そして、神さんが僕をいらなくなった時に、上手くやる分の余白。
最後は、良い子でいる分の余白。
「僕は全部神さんのものだよ」
そう言いながら、僕の全部を神さんにあげれてない事に、僕は見て見ぬ振りをして、神さんはその事を知っていた。
神さんを信じてないわけじゃないし、僕の全部が神さんの物なのも本当だけど。
僕は残してた。
最後の余白を。
神さんに染まりきってしまわない、僕が立ってられるスペースを…
おかしいね…
修二には、全身全霊で華南とむつに頼って甘えろなんて言っておいて、僕はこのザマだ。
だけど、僕自身、神さんの事知りすぎてた。
神さんがどんなに修二や奏一さんを好きだったか、大事にしてるのか知ってる。
僕を大好きで、どんなに大切にしてくれてるか知ってるし、神さんが与えてくれた温もりがどんなに大事か…
神さんが僕をいらなくなって別れたら、僕がどんな風になるのか知ってしまった。
神さんに嫌われたくなかった…
神さんにもっと好きになってもらいたかった
神さんの、一番になりたかった
そんな気持ちが、どうしても、余白を塗りつぶせないでいた。
神さんが、そこに悩んでいたのを知っていたのに。
神さんは、僕が修二と奏一さんのこと気にしてるのを知ってた。僕が良い子でいようとしてるのを崩そうとしてた。神さんに二度と嫌われないようにしてるのを、眉間にシワを寄せて困ってた。自分が過去に別れを切り出したから、未だに僕が信じてくれないと悩んでるの、僕は知ってたのに…
僕らはずっと堂々巡りだった。
分かってたけど止められなかった。
だって怖かったんだ。
幸せすぎて…。そりゃ神さんを怒らせちゃうから、はたから見たらラブラブじゃないかもしんないけど…
だって難しかったんだ。良い子でいない事が、素直な素のままで良いなんて、どうすれば良いかわからない。そりゃ、思ったこと言えばいいのかもしんないけど、僕が望むものなんて神さんを怒らせることしかないし、怒られたら凹むし、凹むから言いたくないし…。でもあまりにも素直になれ素直になれって言うから時々勇気を振り絞ってみるけど、やっぱ怒られるし。喜んでもらおうとしてした事が裏目に出たりするし…。
でもわかってるんだ。神さんは怒ったんじゃない、僕たちが上手く噛み合わないのを神さんは全部自分のせいだって落ち込んじゃうのもわかってる。だから上手く行くようにしたいのに、取り繕うとバレるし…、素直になると怖くて上手くできないし、もう、堂々巡り。
でも、分かってた。
余白が原因だって…
感情を書き込まない、何にもぶれないためのこのスペースが、神さんを悩ませてるって…
でも誓って、神さんを信じられないから作ってたんじゃない。それだけは本当。
僕が怖かったんだ…
僕のための余白だった。
何も感じない、なんの感情も書き入れない余白が、僕には必要だった。
だから、今回の記憶退行も耐えられた。
やっぱ、余白があってよかったじゃんって思うけど、おばあちゃんの話を聞いて全部合点がいった。
僕は、神さんという人間を理解したつもりだったけど、その先があった。
修二や奏一さんのこと、セクシャリティーの事、おばあちゃんとおじいちゃんと生活してた事、父親の再婚や、離婚した神さんの産みの母親のこと想像して、全部、知ったつもりでいた。
でも、僕の想像を遥かに超えてた。
神さんの暴走壁も、泣かしたい衝動も、独占欲が強くて監禁したくなっちゃうのも、そんな自分を嫌うのも全部。
今、やっと、百目鬼神さんの事がわかった。
彼の悩んでた事も、求めてる事も…
マキ「神さん、神さん、起きて」
百目鬼「…ん?…」
まだ半分夢の中なんだろう、凄く不機嫌な眉間のシワが起きたくないとイヤイヤしてるけど、僕は神さんの肩を揺すった。
マキ「起きて、おじいちゃんもおばあちゃんかもみんな朝食の支度してるよ」
百目鬼「…!?」
僕に起こされてるって気がついた神は、ガバッと起き上がって部屋の中をキョロキョロしたけど、おじいちゃんもおばあちゃんもとっくに起きて、僕も2人っきりだと気が付くとあとずさって身構えた。
百目鬼「ッ、起きた!起きたから!」
まだ、
昨日の河原でキスした事を引きずってるのか…
マキ「ねぇ、神…」
ずいっと体を乗り出しただけで、ギブスのついた足を引きずりながら、神は部屋の隅へお尻からあとずさる。
百目鬼「バッ、バカ!近づくな!」
マキ「だめ。聞いて欲しい事があるの」
目線を合わせたまま、四つん這いで近づくと、もう壁に当たってて後ろに逃げられない神が顔を引きつらせるけど、僕は辞める気はない。
百目鬼「話ならそんな近づかなくても出来るだろう!」
全身強張ってるのを見るとちょっと悲しいけど、耳が真っ赤だから、気持ち悪がられてはないってわかる。
だから、目と鼻の先まで近づいた。
マキ「私は構わないけど、神が困ると思うよ?家族に聞かれたくないと思うし」
ほんの少し乗り出せば、また唇が重なる距離に、神は昨日の事を思い出したのか真っ赤になっちゃって可愛い。
百目鬼「は!?、そういうのは外で」
マキ「我慢できない、今すぐ言いたいの」
百目鬼「おいッ、近ッ…」
否定の言葉を遮って、その体をガバッと抱きしめた。
マキ「大好きだよ。〝僕〟は、百目鬼神を愛してます」
突き飛ばされると思ったけど、僕の思いもよらない言葉に固まった神は声を失った。
だから、その体をきつくきつくギュッと抱きしめた。
百目鬼「!?!?!?」
神さん、聞いて。
マキ「〝僕〟と出会って〝僕〟を大事にしたいと困ってる優しいあなたが大好き。今度は〝僕〟の番、〝私が〟あなたを守るから」
百目鬼「はっ!?ちょッ!離せッ!」
顔を真っ赤にした神に引き剥がされ、力ではやっぱ勝てないなと残念だったけど、その恥ずかしがってる顔を見れたのは、ちょっと嬉しいな。
ただ、離れる温もりを寂しがる気持ちの方がまさっちゃったけど…
百目鬼「おまっ…、何言って…」
マキ「愛の告白♪」
18歳の時。
神さんはこんなに純情恥ずかしがり屋だったのか…
抱きついて告白しただけなのに、全身真っ赤で接近禁止命令♪
結局、神は、実家にもう一泊するって怒って、僕は追い出されちゃった♪
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