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アルバムをなぞる指先の決断43
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神くんが退院した日から5日目の朝。
神くんは、今僕の隣にいない。
記憶後退の神くんは、毎日が大変でとても疲れてた。なんとか現状を理解して馴染もうとはしてたけど。それは、恋人の僕が男だということを知って出来なくなった。神くんはまだセクシャリティーを受け入れる前で、さらに、幼少期の辛い体験がこんがらがってもういっぱいいっぱいだったから、浮かない顔が増えてたから実家に逃がした。
まぁ、僕と一緒に居て暗くなっていく神くんを見ていたくないから、実家に連れてったんだけどね。
河原でキスした神くん可愛かった…
大好きだって言うたびに耳を赤くして…
本当に…
…。
百目鬼事務所
神さんと僕が一緒に暮らしてた家、神さんと2人で眠っていたベッドで、1人で目を覚ます。
広い広いベッド。
昨日は神くんが居ないのをいいことに、神さんの形のバイブでエッチなことして、そのまま意識が飛んだ。
裸の僕はローションまみれで特大バイブを握ってた。
こんな姿、神くんに見られたら大変♪。
今は実家にいるから隣には誰もいない。
左半分は神さんの場所、神さんの匂いはもうしない…
昨日の朝までは神くんが寝てたけど、神くんは香水をつけたりしない、タバコも吸わない。
だから、神さんのいないベッドはひんやり冷たいし、匂いもしない。
その現実が、胸をきゅうっっと締め付けるけど、神くんが実家に帰っていない事にホッとしてる自分もいる…。
神さんが退院してから5日。
2週間以上入院してて、やっと自宅に戻ってきてくれた5日間。その事は凄く嬉しい、入院して離れてる間良くないことばかり考えちゃうし、不安は募るばかりだった。だから、退院して一緒に居られるのは、とっても嬉しいし安心する。
自宅に帰って来れば、何か思い出すかもという期待もあったけど、その思いはやすやすと打ち砕かれた。
5日経った今も、神さんは、神くんのまま…。
18歳の神くんは可愛いし、話してて神さんの過去を覗いてるみたいで楽しい。純粋な彼は、神さんより素直で、僕は彼が愛おしくて愛おしくて仕方ない。
神さんと同い年だったら僕とこんな感じで喋ってたのかなってドキドキもする。
ただ…。
記憶後退だと知って、神くんと出会った時。神さんとの出会いをやり直したらどうなるか知れるかもって思った。
僕は、やっぱり神くんを好きになった。
そしてやっぱり、神さんは……
神さんが大変な今、僕の痛みはどうだっていい。神さんのために、神くんのために、何ができるのか最善を尽くしたい。
神さんが辛くなければ、それでいい、僕の痛みなんかどうでもいい。
昨日、神さんのおばあちゃんから神さんの辛い幼少期の話を聞いてなおさら気持ちは強くなった。
神さんを抱きしめたかった。
神さんに会いたくなった。
好きで好きで、愛しくて愛しくてたまらない。
〝愛してる〟ってこういうことなんじゃないかなって気がついたら、この気持ちを伝えたくて仕方なくなって、神くんに告げたら、真っ赤になって逃げてった。
でも、それで良かった。
逃げた神くんが実家に止まるって分かっててやった。
だって…
神さんの過去を知った僕は神さんを抱きしめたくて、抱きしめたくて、…その感情は同時に熱を帯びる。熱を帯びた体は、浅ましく貪欲に求め、艶かしくその名を口にした。
昨日の名残でまだ僕の中は柔らかくて、神さんのことを考えるだけで再び熱くなる。昨日聞いた神さんの過去が、僕の心に深く刺さる。神さんを抱きしめたくて、神さんを包んで守ってあげたくて、それなのに、押し倒してしまいたくなる。
目の前の神さんの形バイブに我慢なんか出来なくて、スイッチを入れて再び神さんを思って甘くぬめったソコに埋め込む。
マキ「ぁ…ん…神……さ…ん」
神さんの辛い過去を聞いたのに、僕はといえば、こんなに淫乱な思考回路しかしてない。
ダメだとわかっていても、僕にはこれしかなくて、僕が神さんに与えてあげられる温もりは、こんなもんしかない。
神さんを抱きしめたい、慰めたい、抱いて温めて押し倒してしまいたい…
苦痛は幾らでも我慢できる。
だけど、性欲は限界点を超えていた。
純粋な神くんを、襲っちゃうかもしれないって…
我慢して我慢して、たった5日なのに…
神さんの過去を知って我慢の限界を超えた…。
マキ「んん…っ神さん…、神さん…、もっといっぱい突いて…」
神さんがくれたバイブ。
神さんの大きさで、しかも人肌の暖かさを持つこのバイブ、神さんだと思って何度も何度も挿れた。
神くんがこんな僕を見たら大変なことになっちゃうのに…
マキ「ぁアアッ…神さんッ…イッちゃうッ…」
たった5日禁欲しただけで、欲求不満爆発で一晩1人エッチって、…我ながら情けない…。
マキ「はぁ…。ベタベタ…。昨日散々したのに…、朝からまたやってしまった…」
反省しても、この体の熱は無くならない。
むしろ、燻る熱は下火になっても消えるどころか妖しく揺れて、僕の心に簡単に火を付ける。
マキ「シャワー行かなきゃ…、シーツも洗濯しとこ」
汚れたシーツをベッドから剥ぎ取り、脱衣所に向かおうとしたら、サイドボードに置きっ放しのものが目に入った。
マキ「あっ!、しまい忘れてた」
白い四角い紙袋、そこに〝茉爲宮優絆〟と大きく名前が印刷されていた。
マキは、それを隠すように自分のカバンの中のチャックの閉まる部分にしまいこんだ。
マキ「やばいやばい、こんなの誰かに見つかったら面倒くさい説教されそうだし…。あっ、神さんバイブも綺麗にして隠さなきゃ、神くんに見つかったら発狂されそうだし、神くんが戻ってきていいようにしとかなきゃ。うーん、今晩のご飯どうしようかな…」
汚れたシーツと使用済みのバイブを手にしたマキは、いそいそ脱衣所に入り、洗濯と後片付けを始める。
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今日は、2月の過去最低気温を更新していた。
昼過ぎからすでに降り始めていた雪は、翌日まで続く大雪になるとどこの天気予報でも注意を呼びかけていて、街は対応に追われている。
その雪の影響は、色んな交通機関に及び、雪の酷い地域の商店は夜の営業は中止して閉店を余儀なくされる。
医療の本と多くの書類がずらりと本棚に並んだ部屋、その部屋で、机の上の資料と睨めっこしていた忽那彩は、 小さく溜息ついた。
忽那「…限界だな…」
机の上には、百目鬼とマキの名前の入ったメモの数々。マキに、百目鬼の様子を聞いた時のメモと、その書き取りの横にはビッシリとマキの様子が書き込まれていた。
百目鬼の記憶後退が起こってから2週間ほど経つが、回復の様子はない。
忽那「困りましたね…」
ー♪♪♪♪♪♪♪
その時、忽那彩乃の携帯が鳴った。
そのメロディは、難しい顔してた忽那の表情を緩める。
携帯の着信はメールで、相手は奏一からだった。
忽那はどんな内容か検討がついていたが、奏一からの連絡に微笑む。
忽那「…やっぱり、この天気では無理ですね」
それは、今晩会えないという連絡だった。
《ごめん彩さん!今日雪で行けそうにない。店は夕方で閉めるんだけど、そっからだと予報では雪がかなり降ってるらしくて。ほんとごめん。
マキの様子はどお?彩さんには素直になってる?あいつほんと頑固で、修二以上に手強いからさ、早くなんとかしてやりたいんだ。彩さんも忙しいのにごめん。》
忽那「まったく、マキくんのことばかり。修二のことやっと弟離れし始めたと思ったら、修二より手強い相手が現れるなんて…、…奏一は可愛らしい頑固者に目がないからなぁ…。うーん、マキ、…さて、どうしたものか…」
複雑な気持ちもある。忽那彩は困ったように笑った。
マキ事態に嫉妬はしていない。
どちらかというと心配なのは逆だ。
そして、忽那彩事態も修二の時のように、それ以上に構いたくなる奏一の気持ちが理解できる。
マキの頑固さと純粋さには、興味があった。
何かに必死にもがく人間を、奏一は放っておけない。そんな奏一のことも、奏一の心配する相手のことも、放っておけなくなる。
惹かれる相手が気になってるものを気になってしまう自分がおかしくて仕方ない。
まぁ、元々そんなだから、この職業を選んだんだと思う。
ーピリリリ♪ピリリリ♪ピリリリ♪
忽那「ん?」
着信音とともに表示された名前に、忽那は予感を感じた。
外は深々と積もる冷え切った雪の降る空。
また昼間だというのに覆われた空から降り続く真っ白な雪。雲の切れ間からわずかに見える太陽の存在。
静かに降り続く雪の結晶が、その光にキラキラと輝き、降り積もる。
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