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アルバムをなぞる指先の決断50
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雪が降り積もる。
神さんが事故にあった日と同じように
世界を真っ白にして…
マキ「もしもし…、彩さんどうしました?」
真っ白な世界は、何色にも染まってしまう
忽那『何度か電話したんですよ。マキ君は今どこにいますか?』
その声は、彩さんに似合わず焦りを含んだものだった。
マキ「大学の帰りです。電車が止まってしまって歩いて家に向かってます、多分1時間くらいで…」
彩『百目鬼さんのことで至急話があります。詳しい話は後でしますから、今すぐ華南に連絡して合流してください。近くまで行ってるはずですから』
マキ「えっ!?華南?」
ゾワリと黒い影が広がる
百目鬼さんの名前と、華南の名前が出たら、残りの2人の名前が出ないはずない…
ついに…
修二の耳に入ったんだ…
そして、むつにも…
でも…
なんで華南が迎えに?…
それに…
なんで彩さんが焦って…
……百目鬼さんと…、修二…、
もしかして…
修二を好きな事だけ…思い出したとか?
それで…百目鬼さんが…修二に会いに行っちゃったとか?
でも…だったら、華南は修二の側にいるはず…
いったい…何が起こってるの?
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忽那「待ってましたよ、マキ」
華南に案内された場所は、ビジネスホテルの一室だった。
部屋に入ると、何故かいろんな人が集合してて、その中には、僕の予感どうり、修二とむつの姿があった。むつは僕を見るなり怒鳴るし、修二は見るからに沈んでいた。でも、服装の乱れも怪我もなさそう…。百目鬼さんが修二を襲ったってことはなさそう…。
むつ「マキ!テメーは…」
華南「むつストップ!約束しただろ!」
むつ「グッ…」
華南にしては珍しく、叱るような言い方。むつはそんな華南に反抗心丸出しのまま睨みつけたが、ピタッと黙った。
僕は彩さんに引かれて部屋の奥へ進む。
部屋には、彩さんと修二と華南とむつ以外に、奏一さんと、矢田さん、檸檬さんと杏子さん。そして、蘭さんがいて、一番奥に、ベッドの上に仰向けで眠る百目鬼さんと、ベッドの横の椅子に優しそうな白髪の老人が座っていた。
ある意味、全員集合と言ってもいいこの状況。
空気は重く、いい知らせがあるとは到底思えない。
みんな、目を伏せるように下を向き、誰も口を開こうとしない。
彩さんが、僕を白髪の老人の前まで連れて行く。
僕が老人に軽く会釈すると、老人は優しい表情で会釈を返してくれた。
忽那「マキ、紹介します。今回、百目鬼さんを診てくださった鏑沂(かぶらぎ)先生です」
えっ?!鏑沂先生!?
忽那さんのツテで百目鬼さんを診てくれるって言ってた鏑沂先生?!。で、でも先生に診てもらえるのはまだ先のはず…。予約はまだ先だったのになんで!?
忽那「鏑沂先生は、今朝早くから海外に出張の予定だったんですが、飛行機が欠航になりまして、時間ができたので診て下さったんです」
マキ「えっ!ぁ、ありがとうございます!」
鏑沂「いえいえ、忽那君には色々世話になっててね。お礼なら私じゃなくて忽那君に言ってあげて下さい。忽那君が熱心に色々準備してくれていたから来れたようなものですからね」
忽那「先生、やめて下さい。お世話になったのは私の方で…」
鏑沂「さて、では、マキさん。百目鬼さんについての現状をお話ししますから、こちらに掛けて下さい」
和やかな空気を持つ鏑沂先生、部屋の中の重苦しい空気とは、この先生だけが違っていた。
鏑沂「まず、はじめに言っておかなければならないのは、人間の脳はまだ未知数な事が多く、複雑だという事」
マキ「はい」
クギを刺すということは、神さんの事が解決したわけじゃないってことだ…
この部屋の空気が重いのは、神さんの事で解決のメドが立たない…、自然と思い出すまで待つしかないと言われたからだろう……
鏑沂「私の見解をお話ししましょう。
百目鬼さんの記憶後退は、事故によるものではないと推測されます」
!?!?!?
マキ「えっ!?事故によるものじゃないって?!」
全く予想外なことを言われて何が何だかわからない。
鏑沂先生は、変わらず優しく話し出す。
鏑沂「まぁ、きっかけにはなったかもしれませんが、事故だけのせいではないでしょう。事故直後から目覚めるまでの間、ご家族があなたの名前を呼びながら魘される百目鬼さんを見ています。ですから事故後記憶はあったと予想されます」
マキ「えっ?!っじゃあ!なんで百目鬼さんは記憶後退を起こして…」
矢田「おッ、俺のせいなんす!!!!!」
取り乱す僕の後ろで、矢田さんが号泣しながら土下座し出した。ただでさえ訳分からないのに、さらに分からなくなる。
マキ「えっ??矢田さん?」
矢田「ず、ずみ¨ま¨ぜんん¨!!!」
床に額を擦り付け、大号泣する矢田さんを、檸檬さんと杏子さんが「今大事な話中だから静かに」って隅っこに追いやる。
訳のわからない僕に、彩さんが優しく教えてくれた。
忽那「原因の1つとして考えられるって話なんですが、どうやら矢田さん、意識レベルの低かった百目鬼さんに、催眠術かけちゃったみたいなんですよ。マキ君心当たりあるでしょ」
マキ「………あっ」
催眠療法の本、矢田さんやたら食いついて見てた…
それに、
神さんが意識を取り戻した日、矢田さんと神さんが2人っきりだった。
催眠術でこんなことに?
でも、今彩さん原因の1つとして考えられるって
マキ「…それが原因だと断言しないのは、何故ですか?」
鏑沂「色々なことが重なった結果。と言うのが一番近いんじゃないかと思ってね」
マキ「…色々なことが重なった結果…」
鏑沂「…マキさん。いいですか、貴方には辛い話になるかもしれませんが、本当の原因を突き止めるために包み隠さずお話しします」
マキ「…はい。大丈夫です。話してください」
鏑沂「私は、忽那君から君たちのことをすべて聞いています。それと、百目鬼さんにも、先ほど話を聞きました」
〝君たちのことをすべて〟
その言葉と、このメンツを見れば分かる。
恐らく、僕と百目鬼さんの関係や、僕と百目鬼さんが付き合うきっかけになった修二との出会い、修二と百目鬼さんの関係、それら全部を指してるんだろう。
鏑沂「それと、百目鬼さんが目を覚ました時のことを、矢田さんから、覚えてる限りで当時の状況を聞きました」
マキ「はい」
鏑沂「矢田さんは、催眠術をかけた時、百目鬼さんにこう言ったそうです。
『嫌なことは全部忘れて目を覚まして下さい』
と…」
マキ「…………………………」
鏑沂「百目鬼さんが催眠術に掛かってるとしたら、彼は自ら選んで18才の自分になったことになります。何か心当たりはありますか?18才に、何か意味があるはずです」
マキ「ッ……………」
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