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空白のアルバム=百目鬼1=
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外は大雪…
町の交通機関は麻痺し
降り積もる雪に
世界は真っ白に染まる。
真っ白に…
百目鬼事務所の三階自宅の窓から見えるのは、降りしきる雪と、真っ白に染まった町。
そして
窓にうっすらと、室内の様子が反射してる。
この後どうしたらいいのか困り果てた俺の顔と…
ベッドに眠る茉爲宮優絆(まなみやゆうき)の姿。
俺は…一体どうすればいいのか…
ー遡ること6時間前…
12年分の記憶を無くして混乱する俺を、側でずっと支えててくれた、恋人だと名乗る、モデルの女みたいに綺麗な顔したハーフの男、茉爲宮優絆(まなみやゆうき)が体調を崩した。
本当は、だいぶ前から体調不良だったらしい。
茉爲宮の知り合いだというカウンセラーの忽那彩は、「熱なんかない!なんともない!」と暴れる茉爲宮を奏一と二人掛かりで押さえつけ、茉爲宮のカバンから処方箋を取り出して俺に教えた。袋には、数種類の薬が沢山入ってた。なんでこんなにいっぱいって驚いてたら、「はぁ?!なんだこの量!!」って奏一が叫んだ。…それは、バカな俺でも分かる、体調不良の原因が単純な病気じゃないだろうってことは…。
忽那は、キレてる奏一をなだめながら、その下でジタバタする茉爲宮を押さえつけたまま、改めて処方箋の袋に視線を落として、薬の種類を見て合点がいったと呆れたようにため息ついた。
忽那「おかしいと思ったら、そういうことだったんですね」
マキ「やめて!返して!」
熱があるのに暴れる茉爲宮、だけど、奏一と忽那彩相手じゃビクともしない。
この二人、手合わせしなくても分かる。おそらく、相当強い。
百目鬼「お…おい、病人にあんま手荒なことすんなよ…」
俺は何していいかさっぱりわからずにいたら、奏一の牙が俺に向いた。
奏一「こうでもしないと逃げられる!だいたいお前が全部悪いんだぞ!!」
百目鬼「俺!?」
奏一「事故に遭うわ記憶なくすわ無神経だわ!!ああ、あんたは昔からクソ不器用で無神経だったけどな!!でも!俺が〝知ってるあんたは〟もっと頼りになった!」
百目鬼「??」
忽那「…」
奏一「自分の傷が深い分、人の傷を理解してた!!」
百目鬼「えっ…」
奏一「〝俺の知ってるあんた〟は、言葉が下手くそでもその分考えられる男だった!!」
それは…
俺にはそぐわない言葉だった。
この人が何を言ってんのか分からない…
なぜそんな目で俺を睨む?…
そうじゃねぇだろッ!…、って言いたげな悔しそうな瞳で…
人の傷を理解?
言葉が下手でも考えられる?
…それって、俺の知らない12年後の俺?〝神さん〟のこと??
…でも…、〝昔〟って言った…
だけど、俺は、こいつを、奏一なんて知らない…
状況がよく整理できない。
理解出来ない…
わからねぇ…
だめだ…、一旦整理しよう。
俺は…、大雪で鏑木先生のスケジュールが空いて見てもらえるってホテルに連れてこられて、診察してもらって催眠療法だなんだってなんかいつのまにか眠ってたのか夢を見てて…。
気がついたら茉爲宮の泣いてる声と嫌がってる声がして…、誰かが茉爲宮を押し倒してたから止めに入ったら、…相手は忽那と奏一で…、この二人が泣かしたのかと思ったら、茉爲宮が俺を見るなり飛びついてきて泣き出して…、忽那に俺が泣かせたって言われて。奏一に怒鳴られて。泣いてる茉爲宮の顔見たらまずいと思って視線をそらしてたら、なんかいつもは真っ白な茉爲宮のうなじが真っ赤で、そしたらなんとなく抱きついてた茉爲宮があったかい?というか、なんか火照ってるっていうか、〝いつもと違う〟というか…。ふと、そうだ、こいつ、いつも俺に触ってくる時冷んやりしてて、色白だから雪女みたいだなって…冷え性なのか?って、思ったことあったなって思ったら、急にばあちゃんのこと思い出して…。ばあちゃん冷え性で基礎体温低いから、「こんなの一般的には熱のうちにはいはないよ」って言うのを、じいちゃんが「お前は基礎体温低いんだから!一般の数字は関係ねえ!それはおめえにとって立派な熱だ!開店準備の邪魔だ!足手まといだからさっさと上行って寝てろ!」って怒鳴ってたなって思ったら「熱あんのか?」って口に出てて。
そしたら、奏一が鬼の形相でキレだして、茉爲宮が逃げようとするから、奏一と忽那が押さえ込んで、忽那が茉爲宮のカバンあさったら、処方箋が出てきて…
今ココ…
奏一「マキは俺たちが預かる」
マキ「やだっ!離して!帰るから!先生様のところに帰るから!」
奏一「残念、雪でそんな遠出できません」
マキ「奏一さんだってまぁまぁ遠いいじゃん」
奏一「君には交通手段がないが、俺には車がある」
マキ「奏一さんのじゃないじゃん彩さんのでしょ」
奏一「彩さんの車でも行き先は同じです」
マキ「僕行かない」
奏一「残念、その選択肢は存在しません」
マキ「えーん、奏一さんがいじめるぅ」
奏一「いっ、虐めてません!」
子供みたいなやりとりが目の前で繰り広げられて、困惑してると、呆れ顔の忽那がその場をまとめた。
忽那「マキさん、選択肢は2つしかありません。私と奏一についてくるか、百目鬼さんと帰るか、二つに一つです」
マキ「一人で帰れます!」
忽那「それは不可能です」
マキ「無理じゃない!タクシーだってあるし一人で帰れる!」
忽那「これ以上は、私は奏一を抑えられませんよ?奏一が本気を出したら、私には止められませんから」
マキ「ッッ!?」
こうして、苦渋の選択を迫られた茉爲宮は、俺と百目鬼事務所に帰ってきた。
茉爲宮が逃げられないように、忽那は茉爲宮の処方箋袋から、取り出した薬を茉爲宮に飲ませた。最初は意味がわからなかったけど、処方箋の数種類の薬の中の一つは、かなり強い睡眠薬だった。
6時間経った今、茉爲宮は睡眠薬のお陰でぐっすり眠ってる。
記憶喪失になってから数日…。
俺は、初めて茉爲宮の眠ってる姿を見た。
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