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空白のアルバム=百目鬼3=
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大雪の中、茉爲宮の主治医は、仕事終わりに通常の倍の時間をかけて車でココへ来たらしい。
高そうなチャコールのロングコートに、見るからに高そうなブランド物のネクタイとスーツ、年はいってるが、紳士そうな雰囲気に、なんとも言えない圧を感じる。顔は普通のおっさんだし、喧嘩したら勝てそうだが、何故かかなわない気がする。独特の空気、映画に出てきそうな風格というか…。
しかし、この人といい、忽那といい奏一といい、茉爲宮の周りには、オーラがある奴ばかりがいやがる…
ある意味、茉爲宮ってとんでもない奴なのかも…。
いや、十分とんでもない奴だけど…
俺の周りでそういうのは、朱雀のリーダーだけだった…。
カリスマ性があって、力もあって、みんなリーダーを慕ってた…。俺たち朱雀にとって、リーダーは神様みたいな人だった…。
のに、
18才の俺にとっては、つい数日前まで顔を合わせてたはずのリーダーの顔が、なんだかはっきりしない…。
これも、12年後の世界だからなのか…
谷崎は、リーダーはもう朱雀から卒業したとしか教えてくれなかった。
リーダーは、12年後の今、一体何をしてるんだ…
そんなことを考えながら、茉爲宮を寝かせてる部屋へ案内する。
寝室に入ると、まだ茉爲宮は眠っていた。
先生「…」
茉爲宮の寝顔を見た先生は、少し目を細め、ゆっくり茉爲宮に近づく。これまた高そうな皮の手袋を取ると、茉爲宮の乱れた前髪に優しく触れた。
先生の指先は茉爲宮の肌に触れないように、なにかを確かめるようにゆっくりとなぞりながら、乱れた髪をそっと耳にかける。その仕草にがあまりにも……、なんとも言えない雰囲気でドキッとした。
…この人、本当に…茉爲宮の主治医…なのか?
ただ静かに茉爲宮を見下ろしているだけなのに、なぜか、普通じゃない空気を感じる。
どんなって言われても説明できないけど、例えば、家族のいる部屋で普通の本だと思って読んでたら官能的なシーンになってヤバってなるような…
先生「百目鬼さん」
百目鬼「ッ!、はい…」
名前を呼ばれただけなのに、妙に緊張する。
この人の独特の空気と、一度妙だと思ってしまったが最後、変な考えがジワリと広がる。
先生「その後お体の調子はどうですか?」
俺の事?
茉爲宮の事は?
百目鬼「俺は何も…、足のギブスがもうすぐ取れるかんじで…。ってか、茉爲宮は?なんの病気なの?」
サイドテーブルに置いてある、忽那から預かった処方薬を指差した。
一つの処方薬の袋の中には、何種類もの薬が詰め込まれてた。薬の名前も、効果も、飲み方も何一つわからない。
先生「…、風邪です」
百目鬼「の割には薬多くねぇ?」
先生「…、不眠症なので睡眠薬もあります」
百目鬼「なぁ、なんでいちいち答える前に黙るの?こえーんだけど。言えないようなやばい病気なの?ってか、入院とか大丈夫なわけ?」
先生「百目鬼さん、なにか思い出した事はありますか?」
いや、質問に答えろよ。
つーか守秘義務ってやつか?、風邪薬と睡眠薬、その他にもあんだろ、7か8種類は入ってたぞ。
百目鬼「なんも。ココ(百目鬼事務所)に住んでるってーのも、仕事も、従業員の奴らのことも、何日か一緒にいたけど、どれもピンとこないし、こいつ(茉爲宮)のこともサッパリだ」
先生「…そうですか」
百目鬼「なぁ、こいつ限界だって忽那が言ってたぞ。なんとかした方がいいんじゃねーの、俺じゃどうにもならねーぞ」
病人の面倒なんてどうしたらいいか分からない。俺がやったことあんのはじいちゃんばあちゃんが風邪引いた時にお粥作ったくらいで、それ以外なんて経験がないし知識もない。
先生「マキがどうしてもって言うから尊重しましたが、そうですね。まぁ、泣くでしょうが仕方ありません」
えっ?泣く??!
先生「邪魔なら、引き取りますよ」
百目鬼「は?」
邪魔っっ?
んなこと言ってねーし!
先生「では、〝お困り〟なら、引き取りますよ」
涼しい顔して言い回し変えただけで、意味は変わってないように聞こえんだけど。
先生「連れ出すなら、一度着替えさせた方がいいですね。汗をかいてる、外はまだ雪が降ってて寒いですから」
百目鬼「えっ…」
俺が何か答える前に、先生は布団をめくって茉爲宮の服に手をかけた。
先生「あぁ、本当だ、こんなに鎖骨が浮き出て…」
ボタンを外して露わになった肌、真っ白な艶かしい肌に彫刻のようにくっきりと浮く鎖骨。先生の指が滑るようにその跡をなぞると、眠ってる茉爲宮から、鼻にかかったような吐息が漏れた。
瞬間、頭の中で大きな衝撃が走った。
先生「…百目鬼さん」
百目鬼「…えっ?」
先生「痛むので手を離してください」
気がつくと、俺の手は血管が浮き出る程強く、先生の腕を掴んでた。
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