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科学的根拠など全くあろうはずもない話だけど
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おまえが幽霊になって俺のとこに来てくれたら、俺、ぜってービビッたりしねえで超喜んじまうな、と、私の恋人が言った。
しかしね君、『幽霊』というものは、基本的には恨みのある相手のところに出るものだから、私が幽霊になって君のところに現れる、という設定には、ちょっと無理があるのではないだろうか? だって、私が君に『恨み』など持つはずがないからね、と、私が意地悪を言うと、恋人は、ええッ!? と目をむいて、愛よりも憎しみのほうが強いだなんてそんな馬鹿な!? 俺はそんなの認めねーぞ!? と、真顔で言った。
私が、ごめん、意地悪を言ってしまったね。確かに君の言うように、憎しみがいつも愛に勝ってしまうというんじゃ悲しいよね。実は、我が子を残して死んでしまった母親が、幽霊になって子供を育てようとする『子育て幽霊』という話もちゃんとあるんだよ。だから、愛情から生と死の境を越えてしまう幽霊も確かに存在するんだ、と私が言うと、恋人はホッとしたように、だよな、そうじゃなきゃやってらんねえよな、と言い、そして、おまえ、どうして時々そんなふうに俺に妙に意地悪なんだ? と口をとがらせた。
私が、ごめん、それは本当に悪いと思っている。けど――と、口ごもったら、恋人は身を乗り出して、けど、なんだ? と、私の顔をのぞきこみながら首を傾げた。
けれども時々、私は、自分があんまり幸せすぎるのが怖くなってしまうんだ、と、小さな声で私が言うと、恋人はあきれた顔で、なんだそれ、なんで幸せなのが怖いんだよ? と首をひねった。
なんでだろうね。おかしいね。と、私が苦笑すると、恋人は私の頬を両手で挟んで、おまえなあ、そうやって、泣きたい時に無理して笑うのやめろ、と言った。
私が、それでもやっぱり笑っていると、恋人は私の両頬をつまんで、笑うんならもっとちゃんと笑え! と言った。それから恋人が、プーッとむくれた顔で、おまえ、幽霊と幸せとどっちが怖いんだよ? と真剣に問いかけてくるので、私は恋人が望んだように、ちゃんと笑うことが出来た。
君が幽霊になってやって来てくれるのなら、私は絶対に怖がったりなんかしないよ、というと、恋人はクスクス笑いながら、それじゃあ俺ら、将来はきっと、幽霊屋敷に住むことになるんだろうな、と言った。
私もクスクス笑いながら、それもいいな、とうなずいて、そうしてきちんと、本気で笑った。
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