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マスターの話 4<マスター視点>
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「お父さんをなくしてしまっている事と一人暮らしで、去年に専門学校をやめていて、この前来た時はだいぶ安定した生活を送っているって聞きました」
「……やっぱり話してないか。」
私の言葉に目の前の彼はため息をついた
「話していない…?」
不思議そうな顔をして彼を見ると、1つ質問を投げかけてきた
「…マスター、波留っていい子でしょ?」
彼の問いかけに私は素直に頷く
「波留くんはいい子ですよ。何事にも真面目になってくれる優しい子ですし」
「…マスターは波留の事よく見てるね。…俺もね、波留はとってもいい子で優しいと思う」
コーヒーに口をつけながら、にっこりと笑う
「だから、マスターに話せないんだよ。…弱味を見せちゃいけない。心配をかけたらダメだって自分勝手に思って、心の奥底で本心を隠してる」
「……私に話せないこと」
きっと目の前でコーヒーを飲んでいる彼は何かを知っているのだろう
「波留ね。…大事な友人を殺されてるんだ。それから誰にも関わらない様に本心を塞ぎ込む性格になっちゃったの。 専門学校もそこに通ってる先輩に目をつけられてボロボロになるまで遊ばれて、辞めちゃったんだ。」
私の知らない波留くんが見えた気がした
確かに何日もバイトを休んだり、やっと来たと思ったら厨房で倒れたり、四人組の大学生くらいのお客さんが来ると真っ青な顔をしてオーダーを受けていた事があった
「……そうか。そういう事だったのか。」
理解した私はあの時の波留くんを思い出した
「だから、俺はそんな波留を助けたくて羽柴会に入るように勧めたの。…マスターの店に入ってきたヤクザっていうのは多分、和嶋会って連中で、俺達と対立してるヤクザなんだ」
「……でも、どうして波留くんを狙ってるんですか?」
狙うならもっと偉い人を狙うのではないか…
「…その狙いはまだ解らないんだ。でも、波留を捕まえれば必ず俺達が動く、いわば囮みたいな扱いって訳。…和嶋会は俺達の事が大っ嫌いだから」
余りにも可哀想だった。
「悲しいよね。俺達とつるんでいるってわかった瞬間、和嶋の奴等に狙われてるんだから。俺達と関わらなければこんな事にはならなかったのかもしれない。…でも、何が何でも波留は俺達が守るって決めてるから」
「…ヤクザなのに、優しいんですね。」
「ヤクザだからだよ。…大事な人が死んだ時の悲しみ、周囲からの偏見の目、何処にも居場所がない孤独感…それが解るのって俺達みたいに世間から見放された奴等にし解らないから。」
そう言うと彼は私に笑顔を向けてくれた
「…こんなに素敵な人が波留くんにはいたんですね。羨ましい限りです。」
「マスターも十分素敵な人だと思うよ?…ほら、涙拭いて」
緩んだ涙腺から溢れ出る涙を拭くと、笑う彼に私は言った
「…波留くんに、寄り添っていてあげて下さい。それに、ここにまたあの方達が来るかもしれないので彼には落ち着くまで来ない様に言います。…私達に出来ることはこれぐらいしかないですから」
「……ご迷惑おかけします。出来る限り早めに片付けますのでご協力の程よろしくお願いします。あと、これから組の者に見張りに向かわせますので普段通りに営業をしていて下さい。波留が変に心配するので」
深く頭を下げる彼に私も同じ様に頭を下げた
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