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隣人
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あの後、結局庄司くんと古賀の部屋に四人で泊まった。朝一に宮内が帰るっていうから、俺も覚悟を決めて自分の借りたアパートに向かった。思い出ってほどのもんじゃねえけど、愛といた時間を思い出すものだった。
未練だろうか。いや、うん、うーん。
ガチャリ、部屋の鍵を開けて中に入る。荷物は今日の夕方に届く。だから部屋はがらん、としていた。まだ、なにもない、部屋。
「こんなのズルイぜ、ほんと」
ぽつりと、零れた。
その時。
「ぎゃぁあああぁあぁぁあああああああああああああ!!!!!」
!?
隣の部屋から男の叫び声が聞こえてきた。途端、ゴンッ!となにか、壁にぶつかった音が俺の部屋に響く。な、な、なんだ、!?人がセンチメンタルキメてるときに!!
「サイッテーよこの馬鹿!!!」
パシンッ!
「あー、ごめんな」
「もう別れる!!」
「はい…じゃあ、お疲れさまでしたー」
カッカッカツン!バンッ!
お隣さんの修羅場が筒抜けなんですけど…。えーちょ、えーっ!?この部屋、壁薄ッッ!!
ハイヒールの音が、激しめの足音を鳴らしながら廊下を駆ける。引越し、一日目にしてこれはヤバイ。お隣さん、どんなやつが住んでるわけ…ちょっともう、幸先が悪すぎて将来まで心配になってきた。
関わりたくねー、お隣さんとは絶対関わりたくねーー!!!
「ったくもー、別にセックスしなきゃいけねえっつうルールはねえだろうがよー、付き合ったからって」
独り言がでけぇよ…。丸聞こえだから。確かに付き合ったからってセックスする必要はねぇかもしんねぇけど、セックスするかしないかが恋人か友達かを分けることもあるんだぞ…。あ、やべぇそれ俺だわ。24時間前の俺。ますます隣の人が嫌になってきた、まじ無理怖い、でも挨拶には行かなきゃなぁ、と思うわけで。仕方なしに昨日、宮内を待ってる間に買ったタオルセット(300均)をリュックから取り出す。あ、やばい、ちょっと包装が適当すぎてぐちゃぐちゃになってる。…これは殴られそうなレベルだ。できるだけ綺麗に生き残ってるタオルセットを掴んで部屋をでる。ほら、嫌なことはさっさと終わらせておいたほうがいいだろ。
はあーーー、と大きくため息をついて、隣の部屋のインターホンを押す。
ピンポーン
………。無反応。
おいこら、居留守キメる気かよ!知ってんだぞ居ることは!さっき散々修羅場ってただろ!!
一分ぐらい待ってもでてこない。ふざけんな。ちょっとイラッとしたので強めにもう一度インターホンを押した。
ピンポーン
でてこいよコラ。こっちはさっさと挨拶済ませてぇんだよ!
いら、いら、いら、いら。
ドア越しに、人が近寄ってくる音。おいおい、ドアまで薄いのかこのアパートは。
ガチャ。
「はーい、どちらさ…?」
出てきた!
「あー、おはようございます〜、あの、この度隣に引っ越してきました西浦と申しますー。お隣さんにご挨拶をと想いまして」
でっけーーーよ!!
出てきた男のタッパにビビる。
汚い金髪に変なひげ、でかい身長。
引く!!
だけど俺、愛想笑いと表情作りは得意です。
10センチ以上高いその顔めがけて笑顔を貼り付けた。
「…。」
「これ、つまらないものですがどうぞ〜」
おい、はやくこのタオル受け取れよ壁男!はやくーはやくーはやくー。この場から逃げてぇーー。あーー。
なのになんでこいつ、受け取らないわけーー。なんで何の反応もないわけーー。無愛想かなんかか、え?こら?え?早くしろよ腕が疲れるだろーが!
「あのー…?」
控えめに、控えめに顔を上げる。
あれ、大丈夫か俺、もしかして顔引きつってるか?
まじか、お得意のパーフェクトフェイスすらもこの男には効かねーってのか、俺も随分笑顔が下手に「…恋?」
「は?」
俺、下の名前名乗りましたっけ?
ていうかお知り合いでしたっけ?
イヤイヤ知らん、知らんよこんなミスったヤンキーみたいな男なんて。
「…えっと?」
なんで俺の名前を?という意味をこめて首を傾げる。すると相手も驚いた顔をして、言った。
「いや、俺…大輝、だけど」
なに?大輝?…え?
「え…?大輝って…宮崎、大輝?」
え?まって、俺の知ってる大輝って、あのアホ顔の大輝だけなんだけど。こんな小汚いヤンキー知らないんだけど。じーっと顔を見つめる。あ、
よく見ると、その整った顔に見覚えがあった。
えーーーーー!!!???
まじでか!?
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