アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
十日
-
大輝が帰ってこない。今日で何日目?一週間?10日?それぐらいはあいつの顔を見ていない気がする。
そしてこの10日間、俺は何度か自分でケツをいじった。罪悪感とか後ろめたさとか言うのは快楽の前ではゴミくそ同然で、でもやっぱイった後に「うあぁぁぁ…!!!」って叫びたくなる。そんな感じ。
「はぁ。」
「……ちょっと。人の顔めがけてため息つくのやめてよ。」
ズズッと、アイスコーヒーを啜る宮内。ここは俺のバイト先の店で、俺も昼休憩中。ちょうど宮内が店に顔出してくれたから、ふたりでランチタイム。宮内はアイスコーヒーとちっせーバターロールだけ頼んで、俺はオムレツとミルクティーをたいらげていた。
「宮内ぃ、宮内ってさぁ、高校ん時に、俺にケツのよさを聞いてきたことあったじゃん?」
「あったね」
「アレなんだったわけ?結局誰かに掘られた?」
「いや?純潔だよ。気になって聞いてみただけだけど。」
ズズッ。ストローを薄い唇の間に挟む宮内。俺はそれをじっと見つめて、宮内は「なに」と、これまた表情の変わらない顔で言った。
「宮内にお願いがあるんだけど」
「すごく嫌な予感がするから、帰るね」
「まって!!ちょっとまって!!至って真剣なんだよ!大問題なんだよ!!!」
「…………。わかったからこの手離してくれる?誤解されたらどうしてくれるの?」
「あッ、ごめん!」
思わず握っていた宮内の手、そんなに引かなくてもよくね?ってぐらい引かれたけど、これから俺の言う言葉を聴けばますます引くだろうか。ごくり、俺が唾を飲み込むのと、宮内がタバコに火を付けるのが同じタイミングだった。
「あのさぁ、ちんこハメて欲しいんだけど。」
「ごほっ!!ごほっ、んん゛っ、なん、なんて?」
うわ、珍しい。宮内がむせ返ったうえにすげー焦った顔してる。
「だから俺にちん「西浦、落ち着いて。ここお前のバイト先でしょ」…まあ、そうなんだけど。」
「なんの冗談?珍しくハズれだね」
「…いや〜まあ、それはほんと冗談なんだけど。俺、居酒屋で話したじゃん?愛と別れたこと。んで、俺男じゃん?性欲ってたまるじゃん?」
そうかな?みたいな顔してる宮内。お前はどーみても性欲薄そうだけど、俺はそーでもないんだよな。普通に溜まるもんは溜まる、でも問題はその先で、
「ちんこ弄るだけじゃどーにも物足りない、人肌寂しい、ついでにケツも寂しい。だから抱いてよ〜」
「怖 なにそれ。俺にそんな趣味ないの分かってて言うんだから西浦って賢いのかバカなのかわからないね」
「はは、…参ってる。まじ、どうしよう。愛のせいだ!ってことにしてるけど、俺、こんなんじゃ女と付き合えねー!」
「王子様のせい、というか。ケツという未知の世界に踏み出した二人のせいだよ。フツーに恋人つくればいい話じゃないの?女でも男でもお前がいいならいいでしょ。試しに合コンとか行けば?」
二人の、せい。ずきり。そうだ、けど、俺をこんなにした張本人はもういないんだから、責めることもできない。合コン、合コンかぁ。……それってあいて、女の子、だよなぁ。女の子でも俺のケツの疼きをなんとかしてくれる子っているのかな。でも最近はそういうプレイもあるってきいたけど。そういうんじゃなくて、そういうんじゃ、なく、て
……うん、わかってるって。
ケツが寂しいのも性欲が溜まるのも、そこを弄ってしまったことも、でも誰かに寄り添いたいのも。全部理由はわかってる。寂しい、愛に飢えてるというか、なんかもう、ずっとすきって感情に包まれていたから、それがなくなると寒い、寂しい、負の連鎖。ずず、ずっ、と、アイスコーヒーを飲み干した宮内ががた、と席から立ち上がる。俺も時計に目をよこすと、休憩が終わる10分前だった。
「どーしても掘られたいっていうなら掘ってあげてもいいよ。」
「えっ」
「アダルトグッズをアマゾンで買っておくから。俺はそれをお前に突っ込んで、隣の部屋でベースやってるね。終わったら後始末は自分でやりなよ」
「それなんか違う」
「そうでしょ、体が疼くだけじゃないんでしょ。誰でもいいわけじゃないんでしょ。寂しいだけなんだよ、多分。別れたばっかりだから。もう少ししたら
忘れるんじゃない?」
忘れ、たい。
もう忘れたい。心も体も、全部。
でもそうならないから記憶だ、痛みだ、感情だ。だから少しでも傷つかないように新しい恋をみつけようとするんだと思う。
レジに向かう宮内、細い枝みたいな体とごっついブーツにデカイベース。個性的なシルエット、財布からお金をだして会計を終えたらくるりと振り返って、小さく手を振ってくれた。そして店から出て行った。
誰でも、いいわけじゃない。たしかに。そうだ。この疼きも、渇きも、痛みも、埋めてくれる人はこの先現れるんだろうか。
「れーーーん!!いつまで休憩するつもりだコラァ」
「うぎゃ!!神田くん〜!背中に紅葉咲いたかもー!」
ちょっとセンチメンタルになっていたら、バイト先の先輩の神田くんが俺の背中を思いっきり叩いてきた。じんじんと痛むそこ、でもなんか目が覚めた。俺は神田くんに引きずられるようにスタッフルームに連れて行かれて、制服への着替えを催促された。まあ、もう休憩終わりも残り数分となっていたからいいけど。
「恋ってさ、今彼女いんの?」
「うははっ!タイムリー!ちょっとまえに別れましたよ」
ほんと、すげータイミングでぶっこんでくる先輩だ。Tシャツをぬいでシャツを着て、リボンつけてエプロンつけて、全身鏡の前でぱんぱん、とエプロンを軽くはたいてシワを伸ばす。
「じゃあさ、合コンとか興味ねぇ?欠員男が全然集まらなくてさー!」
「…また、合コンね」
「え?なんて?」
合コン、行ったことないわけじゃない。お持ち帰りしたことはねーけど、今までもスケットとかでよく呼び出されていた。…ま、いっか。
大輝が家をあけて10日、あいつに甘え切っていたから薄れていたいろんな感情が爆発して、寂しいと感じていた。こんなんじゃダメだ、俺と大輝はただの友達なんだから、それこそまた依存関係みたいになっちまったら二の舞もいいとこだ。
「いや、いっすよーって!つーか神田くん音大生ですよね?音大生も合コンとかするんだ?」
「するにきまってんだろー!ただ、今回たまたま人があつまんなかったからちょうど良かったよ」
「ははっ、じゃーまた詳細のライン下さい。俺ラスト四時間がんばって働いてきまーす!お疲れさんですー!」
スタッフルームから出ると、そこそこ賑わっている店内。うっは、すげー忙しくなりそー!
…今日も、帰ったら大輝、いねーのかな。もう帰ってこないとか?どっかで事故ったとか…?ちょっとさすがに心配なんだけど。
今日は、お前と喋りたい気分だよ、大輝。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 49