アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
友人
-
居酒屋でわいわいと話に花を咲かせる。俺と大輝はビミョーに離れた席にいて、俺の目の前に座ったのは平井さん。
「あれだな、恋くんは絶妙に女にモテそーな見た目だな」
「とんでもねーっすよ、全然モテないし!今フリーなんで!」
笑いながらカシオレを飲むと、「ほらー、女子力たけーよ!カシオレとか頼んでさー」と言われた。俺、お酒すきだけどあんまり強くないからね!こんなに男だらけなのに喫煙者が少ない、俺は遠慮気味にタバコを取り出すと「遠慮いらねーよ」と言ってくれたので少し気が楽になった。口にタバコを咥えて、ぷちん、とブーストを潰す。そこで聞かれた「ところで恋くん、何才?」………俺にっこり。
「ここではちょーっと言えないっすねー」
「ははは、やっぱり。若そうな匂いするもんな!」
「なんすかそれ!大輝の一個下だし!」
「あいつも若い若い!」
「わー、じゃあ俺なんか幼稚園児に見えるんじゃないすかー?」
「そんな赤い頭した幼稚園児見たことねーわ!」
この人、話しやすいなー。ちらりと大輝の方をむくと、大輝は大輝で神田さんと喋っていて俺の視線に気づかない。
まあ、こんだけ席離れてたらなー、と、視線をライターに移して、咥えたままだったタバコに火をつけた。
「バイト中の大輝って、どんなんなんですか?」
「どんな?ふつーによく働くし気もきくしいいやつだよ、たまーにそんなミスするか!?っていうちっこいミスはするけど」
「はは、あいつらしー」
「二人は仲良しなんだな、高校が一緒で今家がとなりなんだっけ?」
「そーなんですよ、これもぐーぜん部屋が隣になったの!打ち合わせとかしてないんですよ、凄くないですか?」
大輝と出会ったのは高校の屋上、あの時も偶然話が弾んだ。次に会ったのも屋上、ノリでサボった。ほんとたったそれだけの仲、友達というより、仲のいい先輩というより、会ったら喋る程度の仲。それが今や家が隣で、多分バンドのメンバーと同じぐらい仲良くしてもらってる。人って面白いよなー、と、しみじみ思う。
平井さんがビールを飲み干して、「まあ、」と、話を繋げる。
「これからも宜しくしてね」
「平井さんライン交換しましょ〜」
「あ、うん、それもだけど。あいつと」
くいっと顎で指すのは大輝の座っている方向。
「あんまり特定の友達と連絡してねーみたいだから、ちょーっとだけ心配してたんだよ」
「平井さんお母さんみたい」
「おいコラせめてパパといえ!!」
「うひゃーー!!髪!髪!乱れる!鷲掴みにしないでーー!」
大輝の周りの人はいい人ばっかりだ。あいつがいい人だからだろうけど。ラインのIDを交換して、その後も色々喋って、ついに出ました、席交代の時間。
「俺大輝狙ってるから右隣奪っていいですかー!」
飲んでたカシオレを持って移動すると、大輝の隣に座ってた、ごめん名前忘れた、けど、だれかさんが「ホモかよー」と笑いながら俺と席を代わってくれた。大輝も「やばい!俺ロックオンされてるー!」と騒ぎながらも、座敷のずれた座布団を綺麗な定位置に戻して、「じゃあ俺も恋のことキープするわ!」と言った。それを聞いた周りがゲラゲラと笑って、真似をするように各々席を移動し、さっきまで座っていた席順は跡形もなくなった。
「だ、い、き、くん、ずーっと隣狙ってたのよー!」
「恋の裏声まじでアレだな、バーのママ!」
「あらやだ!失礼しちゃう!…ってこれオカマか!」
「どーしたー?お前もう回ってる?酒弱いんだからほどほどにしろよー?」
「これ二杯目だからへーき、…なんかさ、たまにはこーいうのもいいな。気分転換になるわー!」
笑いかける。そーだな、と返ってきた。少しの沈黙。
「「あのさ」」
そして被るお約束。
「大輝さん先どーぞ」
「いやいや恋さんこそ先にどーぞ」
「遠慮の塊か!明日バイトは?休み?」
「俺も同じ事聞こうと思ってた。俺は休み、恋は?」
「休みーー!よっしゃー!!飲もうー!すみませーん!ゆずチューハイくださーい!」
「おーまーえー!知らねーからなー??」
「お持ち帰り宜しくねー!」
「なーにがお持ち帰りだよ!ただの介抱じゃん!」
だって、多分、もうすぐでラストオーダーの時間だぜ?合コンつっても所詮宴会予約なんだから、二時間制とかそんなんじゃん?せっかく二人とも明日やすみなら、飲むしかねーと思うわけですよ。
俺は、大輝のことを全然しらない。
知っているのは名前と宅配のバイトをしてることと妙に女にビンタされることだけ、なのに、こんなに一緒にいるんだぜ?もっと色々知ってもいーんじゃないかって。一緒に追加料金払おうよ。な?
案の定、俺の注文した柚子チューハイを届けにきた店員が「ラストオーダーの時間です」と言ってきた。みんなは「もーそんな時間かー」「早いなー」なんていいながら、各々最後の注文をして、また会話に戻る。
それから30分もすれば神田くんが「じゃあ帰るかー!今日はお疲れ様でしたー!」と締めにはいった。
会費の3500円を神田くんに渡す。だけど席を立たない俺と大輝に不思議顔。
「なに、お前ら、帰らねーの?」
「いやー俺大輝オトすまで帰れないんでー」
「なんだそれ!ははっ、俺たち帰るけどー?」
「恋は俺がお持ち帰りするんで大丈夫ですー」
また周りが笑う。「もうフラグたってんじゃん!」なんて言いながら。お会計を済ませたら、各々帰る支度をはじめて、店を後にする。
俺は店員さんにまだ飲みたいことを伝えて、座敷に二人ってのも迷惑な話だから個室に移動させてもらった。さっきまであーんなに騒がしかったのに、二人になると静かなもんだな、と思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 49