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「えー、改めまして。自己紹介しよっか、俺は方角の西に、浦島太郎の浦、そんで恋愛の恋って書いて西浦恋って言います、あなたは?」
「ははっ、えーと、宮崎は宮崎県の宮崎で、大輝は大きく輝くと書いて宮崎大輝です!恋くんって呼んでいーですかー」
「じゃあ大輝さんって呼んでもいいですかー!」
大輝と二人で飲み直しになった。大輝の目の前には焼酎のロック、俺の目の前にはリンゴサワーと灰皿。ちょっとだけ酔いが回ってる俺と、顔色の変わらない大輝。
グラスをもって軽く乾杯をして、一口ごくりと喉を潤した。
「………。」
「………。」
えーっと、このノリでなんか、大輝のことを知れたらなーと思ったわけだけど、知りたいことが多すぎてなにから話せばいいのかわからない。妙な沈黙、気まずくはないけど話題を探した。
「「…ご趣味は?」」
「ぶはっ!なんでこれが被るんだよ!」
「俺のセリフだからな!なんだこの雰囲気!お見合いかよー」
「ほんとにな!んと、俺の趣味はギター。これでもバンドで食ってくためにこっちに来たから」
「あ、そうだっけ。…だからか!だからあのチビも東京に出てきてるわけか!」
「気づくのおっせーーよ!俺達のライブ来たことあるだろ!かっこよかっただろ!」
「かっこよかった!かっこよかったけど、チビって証明当たるとさ…こう、なんつーの?頭の方が光ってますますこう、……削られて見える?っていうか」
「あはは!なんだよそれー!庄司くんにチクるぞー」
「ぜっっってーーー『傷ついた!俺は傷ついたんやで!慰謝料として全財産出さんかい!』とか言われるからやだ!」
ちょっとしゃくれながら庄司くんのマネをする大輝、関西弁、スゲーへたくそなことのほうが面白くて笑う、大輝が「そんなに似てないかー?」といいながら、グラスを口につけた。
「またライブ来てね!」
「おー!行く行く!あ、そうだそうだ、思い出した。俺の趣味って草野球なんだけど、恋のこと誘おうと思ってたんだよな。」
「草野球!?意外すぎて目玉飛び出すわ!ラグビーとかやってたのかと思ってたー。草野球かぁ、…俺中学までサッカー部だったんだよな、ボール蹴り回すのは得意だけど、投げたり打ったりすんのは学校の授業ぐらいしかやったことねーよ?」
「充分だろ、草野球なんだし楽しめたら」
「そんなもんか、んじゃー次、大輝が草野球するときに誘ってよ!行くし!」
俺もグラスを口につけた、その時ちょうど店員さんが注文した料理を運んで来てくれたから、一旦会話は中止。俺は軟骨の唐揚げにレモンを絞って、大輝は冷奴を半分に分ける。
「恋ってさ、バナナ嫌いつってたじゃん。何が嫌いなんだよ、アレの」
「え、見た目も中身もグロくね?なんかねちょっとしてるけどビミョーに酸っぱい臭いするとことか」
「それ腐ったバナナじゃねーの!?」
「腐らした方がうまいっていうから腐らせてみたんだよ!じゃあもうトラウマーまじでアレは人間の食物じゃねー!」
「バナナ美味いのに。…人間の食べ物じゃねーっていったらアレだ!杏仁豆腐とナタデココ!」
「はーーー!?俺杏仁豆腐もナタデココもめちゃくちゃ好きなんだけどー!舌の趣味合わねーなー。じゃあ逆に!好きな食べ物は?」
「んー、シチュー」
「…どえらく可愛いもん選ぶな、ギャップか!ギャップ狙ってんのか!」
「ちっげーよ!あの牛乳とニンジンと鳥肉のハーモニー分かんねーの!?」
「わかる!わかるけど!でも好きな食べ物は?って聞かれてシチュー!って単語は出てこねーなー」
「じゃあ恋の好きな食べ物はなんだよ?」
「え?肉」
「わー、ワイルドー。血液型とかB型だろ!お前!」
「ふはは、みーんな何でかそー言うけど、違うんだなーこれが。あててみ?あててみ?」
「は!?違うの!?….んじゃなんだろ、O型?」
「ブー!」
「あ!わかった!ABだろ!なんかお前変わってるもんな、髪型とか!」
「ハイ偏見〜違うっての!」
「う、っそ…まじで。じゃあ残された道はAしかねーじゃん…俺今世の中の全てが信じらんなくなったわ」
「大輝って恐ろしいほと失礼だな?!なんだよ、そんなにA型っぽくない!?俺かなりインテリじゃん?」
「インテリって単語調べて出直したほうがいいんじゃねーの?俺は?俺は何型に見え「O型」…なんで一発で当てちゃうかなー!」
一度話しはじめたら止まらない。やっぱり大輝といたら話が弾んで楽しいとおもう。
今、知った情報。大輝は草野球が趣味、杏仁豆腐とナタデココがきらい、でもシチューは大好きそれからO型。
あ、もうひとつ重要な情報を聞くの忘れてた。
「大輝、誕生日いつ?」
「じゅーがつの、にじゅーよん。」
「秋生まれ!!?あー、言われてみりゃそれっぽいかも。」
「恋は?」
「織姫様と彦星様のらぶらぶいちゃいちゃの日ー」
「七夕!?へー!珍しーな!」
10月24日生まれか、まだまだ先だな。もうちょっと早けりゃ、なんか日々のお礼?とかこめて、タオルセットとかプレゼントしたのになー!いや、タオルセットは引っ越した日に渡したよな、いらねーか!
七夕生まれ、珍しいだろ。
もっと珍しい話しよっか?はは、俺の幼馴染がさ、俺の二時間後に生まれたんだぜ、なーーんて、まあこんなのは言う必要がないわけで、ごっくん。リンゴサワーと一緒にごっくんだ。
そして口が寂しくなってくる。緑のタバコのケースに手を伸ばし、中身の少なくなったタバコを取り出して口に咥えた。火をつけて、タバコを吸い込む。
「恋さー、タバコ何吸ってんだっけ」
「クールブースト〜。メンソールのやつ」
「メンソールのタバコ吸ってたら、精液がすーすーするって誰か言ってたなー」
「うっっっそ!?まじで!?うわー、俺もうダメだわ、女の子と生きていけねーわー!!」
衝撃的な事実だ、嘘だと思いたい。だって俺はタバコ、やめられないし。うーんと頭を悩ませているあいだも、ほら、もくもくとたつ煙に視線がいく。あーーいつからだ、いつからこんな煙が恋しくてたまらなくなってたんだ俺!立派なニコチン中毒!
「女の子で思いだしたんだけどさ!恋さー、幼馴染と上京するっていってなかったっけ?」
ぎくり。あー、そっか、大輝には言ってたんだった。幼馴染と上京する、って、あの日あの屋上で。
そんなこと、言ったんだーーー俺ーー言ったんだよなーーー!だってその時はそのつもりだったもんなーー!!
少し前の俺なら、多分うまく笑えなかった。今のこの質問とか大ダメージ食らって半分ぐらい死んでたかもしれない。でも、なんだろ、今日は酒が入ってるから?…いや、相手が大輝だからかも。
隠すことはないよな、別に。
そう思ったわけだ。
「んあーーー!アレな!引越し当日にさー!駅のホームで!いま!電車のるぞ!ってときにさ……フラレターーーーー!!!!」
思ってたより、俺、声でけーかも。酔いがいい感じに回ってきてるから、視界がすこーしふわふわしている。俺のテンションに釣られた大輝も「まじかーー!!!なんかごめん!!!」なんてでかい声でいうもんだから、ほんとにただただ笑えてきた。そう、笑い話、やっと酒の席で笑い話にできるとこまで来たよ。
「いーえー!構いませんことよー!!そんなお前はどーなの!」
と、じつはあんまり踏み込んでなかった大輝の恋愛の話に持ち込んでみた。気になってはいたんだよ、毎日のように違う女にビンタされたり、喚かれたり、どんな生活してんの!って。
だってお前さ、あの日屋上でさぁ。
言ってたよなぁ、『一緒にいたいやつは、いる』って。
なあ、お前の一緒にいたいやつって、どこ?
俺、この東京に引っ越してきてもうすぐ一ヶ月が経ちますが?まだ会ったことねーよ?
なあ、まさかあのモブみたいな女じゃねーだろ?
気になってはいた、だけどなんとなく聞けずにいた。このノリで聞いてみたら、ちょっとは知れるかも、なんて。
「俺?フラレっぱなしだわーーー!!」
「…毎日ビンタされてるもんなー!!」
「まあそれもあるけどさーー!フラレすぎてなんかよくわかんなくなってきた!!」
思ってたけどそーんなに簡単じゃねーな!ま!知らなくてもいっか!いつか話したくなったら話してくれたらそれでいいや。俺も…愛のこと、とか、今すぐ全部話す勇気も踏ん切りもつかないし、全部平等にいこうぜ。俺、お前とほんとに、ほんとの友達になりたいんだもん。
あ、でもそろそろさ、ほんとにいい子見つけろよ大輝。よけーなお世話だろうから言わねーけどな!
せっかくかっこいいんだから勿体ねーよ!
「おっけー!飲もう!今すぐ飲もう!すみませーん、ウーロンハイくださーい!」
「ま、まてまて恋、お前なんか、顔すげーー赤いよ!?」
「へーきへーき、ははは、楽しいなー大輝ー!」
その後も大輝とくだらない話をした。そのホクロほんとはマジックで描いてるだろ!とか言われたから、その身長ほんとはサイボーグだろ!とか返す。笑って、笑って、楽しいし、お腹もいっぱいだし、お酒美味しいし。
あーーーへいき、へいきー!ってへいき?ははは、楽しい、楽しいけどやっぱり視界も感覚もボヤボヤグラグラする。俺はこの辺りから何を口走ったか全然覚えていない。大丈夫か、俺。ほんと後から突然酔いが回って眠くなるのやだ、お酒好きなのに、まだ話したいのに、あーーきもちいい、あったかい、ねむい、
ゆっくりと瞼を閉じた。
瞼の裏に毎日のように住み着いていた愛が、今日はいつもよりぼやけてみえた。忘れんだろーな、こうやってさー。うん、それでいいやー、それでいい、それより今は、このあったかい温もりの方がずっと、ずーっと、ご褒美みたいだ。
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