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性欲
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痛いのはもうやめにしよう。
想えば痛いの、忘れようとしたら痛いの、苦しいの。
忘れて なんて身勝手だ。忘れられないから苦しいんだから。
もう泣き言は言わない。
前を向くと決めた。
そのためには、日常を上手く生きて、それから愛と過ごした日々を「思い出」にするのが一番で、あーだから、まあ、大丈夫。張り詰めていた糸がぷちんと切れたら泣けて泣けてたまらなかったけど、隣人は俺にバカやってくれて、色が褪せた毎日に絵の具でちょんちょんと色をのっけてくれる。強がってない、俺はもう大丈夫。ただ、すこし、やっぱり、気持ちは簡単に切り替えられない。もやっとしてしまうのは仕方ない。きっと今だけ、もう俺は振り切っている。から。
とにかくバイトに開けくれた。だってあれだ、家賃が払えないとかそんなことになってきたら俺はどうしようもない。とにかく働いて、働いて、そんなかんじ。頭がおかしいんじゃないかと思うぐらいはたらいていたら、バイト先の友達も増えた。もとより社交性はあるほうだからチョロかった。少しずつ、東京という地にも慣れてきた。そして知人が増えていくと、今度はこっちの方が住みやすいんじゃないかって思うぐらいには。
「エッチしてーーーー」
バイトの休憩中、スタッフルームのソファに座り込んでゲスい欲望を漏らすと、同じ時間に休憩にはいった神田くんがケラケラと笑う。だーってマジでご無沙汰で、しかも俺、ケツの味を知ってしまったもんだからもー大変!
「恋モテるだろ?バンドマンなんか遊びまくってるって聞くけど?」
「モテてたらこんなこと言わねぇし、その辺の女の子食ってるにきまってんじゃんよー、もうほんっと溜まる溜まる」
というか、女で満足できるかナゾ。
何度でも弁解するけどべつにゲイじゃない。ただ体が覚えている快感を天秤にかけると、ちんこよりケツが下に下がる、がくんとね。開発されたらそうなっちゃうんだよなぁ、一度覚えたキモチイイは忘れられない、人間って面白いよな。
痛い は時間が経てば忘れるのに、キモチイイ はずっと覚えてるの。
「そーれーに!俺、ヤリちんとかじゃねーから、好きな人とこう…重なりあいたい」
「恋ってまじ面白いんだけど!重なりあいたいって!ははっ」
「オブラートに包んだんだよー!」
ぐぐっと伸びをして、時計をちらっとみると、休憩がおわるまであと30分。まかないで出されたサンドイッチを口につっこみながら今夜の予定を確認する。うん、なにもない!爽快なほど!男の一人暮らしさびしー!
そんな虚しさを振り払うように首を振るのと同時に、思い出した。
「あーそうだ神田くん、えっとなぁ、来月に俺達東京でてきて初ライブやんの!くる?」
「予定があいてたらいくわ」
「チケット代安いからきてよ!」
宣伝。宣伝。練習。宣伝。来月のライブのために練習、練習、練習。練習は苦痛じゃないし、スタジオ練習もクソ楽しいんだけど、久々のライブにいまからドキドキしてたりする。もしかして俺、ギターに恋してっかも、なんて、はは。
そういえば、まだ大輝のこと誘ってねーなぁ。あいつのことだから来て!って超お願いしたら来てくれそうだけどどうだろう。もぐ、もぐ、もぐ、パンをむさぼりながらぼんやりと考える。
隣で神田くんが、自分のリュックの中をごそごそをしている。何をしてるんだろうとおもっていると、謎の小さな箱を取り出して、俺に差し出してきた。
「え?何?」
「オナホ。」
「ぶはっ!!!!なんで?!なんで今もってんの!!!超ウケる!!」
「誤解だって!昨日俺、誕生日でさ。友達がふざけてくれたんだけど、俺彼女いるからこれ部屋に置いとくのマズイなーって。」
「えっ、彼女できたの!?」
いつのまに、…。驚いた顔をすると、神田くんがドヤ顔をしながら「だからやるよ」と言ってきた。
「いらねーーー!!!」
「っていうか頼むマジ頼む、なんとかして処分しねーとなぁと思ってたんだけど、一応誕プレだしどーしようもなくてな!捨てられるより誰かに使ってもらえたらこいつも本望だろ」
「だから俺ー?!」
「だってお前…彼女もいねーのに重なりあいたいとかいうから…」
「おもちゃと重なりあいたいなんて思ったことねーよ!…ハァ、まあいっか。貰っとく貰っとく」
「…溜まってんのねー」
「神田くんのラブラブ生活をぶち壊さないために気をつかってやってる俺に感謝してほしいんだけど!?」
神田くんから箱をうけとって、それを今度は俺が俺のリュックにぶちこんだ。これ、もらったはいいけどどーしよっかなぁ。
時計がもうすぐ休憩の終わりをさす。急いでサンドイッチを腹につめこんで、あと六時間の労働をがんばろーと思います。
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