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部屋
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大輝とメシを食う、となると、何故か必ず大輝の部屋で。と暗黙の了解みたいになっている。大輝は、俺の部屋のドアを叩きはしても、絶対に部屋の中に入ろうとしない。なにか理由があるのか、聞いてみたい気はするけど……地雷な気がして黙ってる。まあ、べつにね。アパートの作り的に、大輝の部屋のほうが階段から近いしいいんだけど。それより、だ。
「あれ?何か…綺麗になった?」
散らかっていたわけではないけれど、いつもと雰囲気の違う部屋に驚いた。だからなんも考えず思ったままを口にすると、やけに落ち着いた声が返ってくる。
「んー?あー、ちょっと物多いなって、片した」
「いや物は多くないと想うけど…」
散らかってなかったよ。俺の部屋よりずっと片付いてたよお前の部屋!
俺の部屋?CDも漫画も床に散らかりっぱなしで服もその辺に落ちてるし、ひっでーもんだよ!本当は綺麗好きだったはずなんだけどな、俺。あ、違うか。愛が片付けんの苦手だから俺がずっとやってただけだ。…また、愛。もういいって。消えて、消えろ。大輝もなにか、おもうことがあって部屋を片付けたんだろう。深く突っ込まないでおこう、と「ふうん。何かスッキリしたなー」なんて白々しく話を流した。ついでとでも言うように本棚に目がいく。
「…ってあれー!?」
そして、思わず声が出た。本棚にてんっ、とすわっている、なんか…なーんか見たことのあるブッサイクなへんなぬいぐるみを見つけたからだ。部屋、だいぶシンプルになったのに、そのブッサイクなぬいぐるみだけが異色を放ってる。やばい、じっと見つめていると呪われそうな目をしている。なんだこのブッサイクなぬいぐるみは。なんで俺はこのぬいぐるみをなんか知ってる気がするんだ…ろ、う?あ、あーーーーー!!
「どっかで見た事あると想ったらコイツあん時のカメレオンじゃん!!」
それは初めて大輝と遊びまわった日に、俺がゲーセンでとってあげたぬいぐるみだった。なつかしくてブッサイクなカメレオンのぬいぐるみの首をもぎゅっ!と摑み上げたら、大輝が慌てて制止をかけてくる。
「ちょ!恋、首持つなよ!ゴンゾーが苦しそうじゃんか!」
「ぶはッ!!そっか!お前そういえばゴンゾーだったな!!」
もぎゅもぎゅ。
もぎゅもぎゅ。
ブッサイクだなーーーー!ほんっとやばい、これは全然かわいくない!一体これのどこに魅力を感じたんだよ大輝は!しかもネーミングセンス、やっぱりおかしい。このブッサイクなカメレオンにつけられた名前はゴンゾー。…ゴンゾーって!
どうにも可愛くみえないゴンゾーの、首を握ったり、べろんべろんな手足を広げさせたりしていると、ぼすり、とソファに腰掛ける音がしたので振り向いた。ら、すぐに思い立ったように「あ、ちげーわ、酒酒」と大輝が立ち上がる。
「お前いつも飲んでんな!」
こいつ、冷蔵庫のなか、酒しか入ってないんじゃないかと思って、大輝の後をついていく。あ、ゴンゾー棚に置いてくるのわすれた。なんでこいつこんな手長いんだよ、ほんとにカメレオンかこれ…。そんなことを考えていると、これまたウザいことに「酔わねーから飲んでも面白くないけどねー」なんていわれたもんだから「嫌味か!」と大輝の背中をばしんと叩いてやった。
「今日背中の攻撃多いぞお前!」
ちょっと不服そうな顔。
「でけーから叩きやすい!」
と、いうと、大輝は笑って
「知らん!!」
といいながらお返し、とばかりに俺の脛に蹴りを入れてきた。
しんっっっじらんねーーーー!!!こいつ自分の攻撃力、絶対わかってない!!!痛ってーーーー!!!と言いながらのたうちまわる、うう…ヘソの中までじんじんしてる気がするんだけど!痛すぎて!
冷蔵庫の中、酒しか入ってないってわけじゃなかったけど…まあ酒八割ってとこだった。人の冷蔵庫の中身をとやかく言えるほど俺の冷蔵庫も豊かなわけじゃないからなんも言わねーけど、これがハタチにもなってない男の冷蔵庫かと思うとちょっと心配になる。今度裂けるチーズでも買って冷蔵庫にいれておいてやろうかな…。
ソファ。大輝の隣に腰掛けて、大輝からビールを奪って俺も飲む。けど、ビール、すきだけど、あーーもう、くそー、すぐ回るんだよなーもー。顔があつい、熱が顔にあつまってる。
「お前顔、真っ赤じゃん!!」
「うるせー!」
大笑いしてんじゃねーよぉ、俺もお前ぐらい酒、強かったらなー!毎日飲みまくってんのに!むかつくから大輝の背中をまた叩く、痛いって!と笑う大輝が、一瞬なにかを考えるように、黙った。
…。
………。
「どうせならさー」
と、切り出される。
「んー?」
「明日さー、デートにしようぜー!」
「ぎゃははは!!何それ!俺と大輝で!?」
デート!?!?
男ふたりで?!お前と!?すげーウケるし!ケラケラ笑っていると、上機嫌の大輝が続ける。
「そー!!待ち合わせは遊園地の最寄り駅にしてさー!時間ずらしてさー!!」
「何それめっちゃおもしれー!!」
「あっちで会ったら手繋いで遊園地!!」
「ホモかよ!!!」
「ホモごっこ!!」
「ごっこ!!」
「カップルごっこ!!予行練習!!彼女できた時の!!」
「中学生かよ!!」
「ぎゃははははは!!」
カップルごっこって!あはは!どうしてそうなった!?
まあ、いっか、楽しそうだし。男二人で遊園地、なんてただそれだけではたからみたらホモみたいなもんか!じゃあいっか!デートでも!
なんだか楽しみになってきた。いや、楽しみ、だったんだけど。はじめから!だって大輝といると、笑ってばっかりだもん。俺。
「大輝くん。」
「くん!?なに、気持ち悪っ!」
「んだとー?!明日さー、デートするなら、気合入れてこいよなー」
「え?なにを?」
「俺に『きゃっ、大輝くんかっこいいっ!』って思わせてくれよ、ってこと!彼女できたときの練習なんだろ?」
「ああ、なるほどな、……よーしまかせろ!お兄さん本気見せっから!」
「ぎゃはは!お兄さんの本気楽しみにしてんね!!」
うん。この時の俺、完全に酔ってた。
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