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手汗
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朝目が覚めたら待ち合わせの三時間前で。なんだこれ、初デート楽しみにしてる女子かよ、って一人で笑って。ああ、そういやデートなんだっけ、と思い出してまた笑って。ホモごっこってどういうごっこだよ!って、脳内でツッコミを入れつつインスタントコーヒーを作って一息。
しゃこしゃこ歯ブラシをしながら、どんな服で行くか考える。大輝に気合入れろよーなんて言ったんだから、俺もそれなりにオシャレな格好をしたほうがいいよな。とか、思って。
クローゼットをガラッと開けた。それなりにオシャレといってもあれだよな〜、遊園地行くならちょっとゆるいぐらいの方がいいよなー。
服をかき分ける。あ、白いアディダスのパーカー、これ買っておいて全然着てなかったな。そう思ってとりだして着ると、なんだかぶかっとしていた。そういえばちょっとでけーの買っちゃったんだったな。ってことはー、下はスキニーにすっかー。とか、まあそんな感じで服を決めて、黒くてデカくてごつめのリュックに財布とタバコと…昨日買ったスケジュールを突っ込む。軽っ、持ち上げて、そのリュックの軽さに笑った。
適当にスタイリング剤をつけて、髪をまとめて、できあがり。時計を見るとまだ8時をすこし回ったところで、いやいや、これは支度終えんの早すぎたな。と苦笑する。家にいても仕方ないし、適当にカフェでも入って時間潰すかー。と、白のスリッポンに足を突っ込み、つま先を鳴らして、少し早めに家をでた。
わざわざ待ち合わせなんかしなくても、絶対一緒に家出たほうが良かったと思うんだけど、まあたまにはこんなのもアリだよなー!ごっこ、これはホモごっこ。待ち合わせ場所で会うまで、ホモごっこ。そんなフツーはしない新しい遊びに、俺はいつになくちょっとワクワクしてた。子供か!って感じだけど。だってすげー面白そうじゃん?ホモごっこもだけど、大輝と遊園地っていうのが。
しかも絶好のデート日和だしー!はは、超青空!晴れ渡りすぎ!
五月も半ばを超えてから、日差しがきつくなってきたな。空気を吸い込んで、はいて、てくてく、あるいて、そして地元の駅に到着。30分ほど電車に揺られて、まどろむ。あー、早起きしすぎたかもーとか、思いながら。遊園地の最寄り駅、の、駅ナカのカフェでソイラテを飲んで時間を潰していると、あっという間に待ち合わせの時間になった。ゆっくりしすぎたかも、と少し慌て目にカフェをでる。
あ!ラインしとかなきゃ!これまたあわててスマホを取り出して、ぽちぽちぽち。
[もう少しでつく!]
よし!完璧!
待ち合わせ場所まで、急いできたけど、やっべーー人の大群。右見ても左見ても人、人、人!でっけーあいつのことだから、すぐ見つけられるとおもったんだけど、中々どこにいるのかわからない。もーいいや、どこ?って電話をかけよう、としたときだった。ひょいっ、と前方で誰かが手を上げた。
「あ、いた!」
見つけたーーー!よかったー!という謎の安心感から、自然と笑顔になる。ブンブンと手を振ってる大輝と、ブンブンと手を振ってる俺、このままではシュールなので、大輝のほうへ駆け寄った。ホモごっこ、完了!うんうん、こういうのも新鮮で楽しいな!
「お〜〜!気合いちゃんと入れて来たな!」
相変わらずデカイ大輝を頭の天辺からつま先までじっくり見る。
灰色っぽいTシャツに黒い腕時計。白いキャップ。少しダボッとして余裕のある黒のジーンズ、それにスカイブルーのスニーカーを合わせて、いつも通りの肩がけのバッグを背負っている。うん、似合ってる!かっけーな!
何も言わない俺を見て、なんか微妙な表情をしている大輝。ああいや、誤解させた?ちがうんだって!弁解とかじゃねーけど、おもった通りの感想を述べる。
「似合ってる!ちゃらっそーないつもの服よりいいな〜」
そしてバシンバシンと高い位置にある肩をたたくと、大輝は「うるせーよ」と言いながら、俺のパーカーのフードをにぎって、バフッと頭に被してきた。なんだよー!照れてんのかよー!バカにしてやりたくなってニヤニヤと口元があがる。
「照れんなよ〜〜」
「うーるーせーえー」
すたすたと歩き出してしまった大輝をあわてて追いかけるようについていく。フードが邪魔だから脱ぎながら大輝の隣に並んだら、大輝がちらりとこっちを見て「髪、変になってる」と言ってきた。だ!れ!の!せ!い!とか思いながらも適当に頭を触るけど、「そこじゃないそこじゃない」と笑われる。おお?どこ?俺の髪いまどうなってる?首を傾げると大輝のデカイ手が伸びてきた。
する、り。
「っ、……!」
び、っくり、した、髪をすくように直してくれただけなのに、大げさなほど肩が跳ねる。大輝の小指が、俺の耳にかすったから。
耳が、極端に性感帯な俺、正直耳の近くで空気がすべるだけでびくっとしてしまう。イヤホンも苦手なぐらい。いくつになってもこの耳の弱さだけは変わらない、それがバレないように至極明るく、とりあえず明るく。「おー!センキュー!」と適当に流す。
耳を隠すように髪を流して、一歩、大輝から離れた。
…おい、突然の出来事に、ちょっとこっぱずかしいんですけど。もしかして変に意識してるとか思われてねぇかな、と、じっと大輝の目を見るけど、? と言った感じで疑問符を飛ばされた。そこではっ、とした。これ、もしかして昨日言ってたホモごっこ、継続パターンか!?と。なるほどな、大輝の 、わかったよ。お前は俺と、とことんホモごっこがしてぇってわけだな?…よーーーし!任せろ、恋くん頑張るから!
「よっしじゃあ大輝くん!!」
「うわあお前がくん付けする時って怖い…」
「恐がるなよー!お前がデートごっこしようって言ったんじゃんかよ!」
「え?なに、何やらやらせる気!?」
??何ってなんだよ!ホモごっこ継続するんじゃねーの?さっきのあれはホモごっこだろ?そんで、恋人と遊園地デートつったらそりゃーもちろんこれだろ?まずこれやんなきゃデートもクソもねぇよなぁ?やるなら!本格的に!やろうぜ!大輝くん!…なーーーんてな!さすがに手を繋ぐとかそういうのはやんねーだろうけど、さっきの不意打ちで恥ずかしかったから仕返しだ。そんな気持ちで、何かを警戒してる様子の大輝の目の前に、す、と右手をだして、ニッコリと笑ってやった。
「はい!!」
「え!?」
「はい!!」
「…え?」
え?じゃねーよ!きょとん顔しちゃってどーした男前!いや、混乱してるって感じ?はは、だよなー!さすがにここまでは想定してなかっただろ!なんだかちょっと不思議な顔になってる大輝が面白くて、ますますからかってやりたくて。
「手を繋ぎましょう、大輝くん」
「…。」
と、続けた。ら、無言になってしまった。あれ、からかいすぎた?やりすぎた?あ、もしかして本気でキモいとか思われた?やっべー調子乗り過ぎたかも…!
ちょっとした反省をしながら、二分ぐらい大輝の目の前に突き出していた右手をぱっと引っ込めた。
「なーんて冗談、「わかった手繋ぐわ!!!俺とお前は今日1日恋人同士な!!そういうことだな!!」…え!?」
引っ込め、たよ?!
俺の引っ込めた右手、ガシッと握られた。で、…でっけーーーな!?手、俺も小さい手じゃねぇってのに、大輝の手にすっぽり包まれてる。って、か、え、っ、えーーーーーー?!マジで?!うわ、マジかよ!!!冗談のつもりだったのに!からかってやろうとおもっただけなのに!まじ、うっそ、どうしよ、
(これは!恥ずかしいって………!!思ってたより、なんか、)
うわーーー!!ぎゃーーーー!どーーしよ!!!そわそわするっつーか!うわーーーー!!!
俺の手、握ったままの大輝がずんずんと遊園地の入口まで向かう。道中、人の目が集まったりひそひそ声が聞こえたり、あーーーうう、ぅーーんんんっ、ちがう、んだってこれ、 ホモごっこで、とか言い訳したいんだけど、そんなのなんかどうでも良くなってきて。だんだん恥ずかしさが楽しくなってきて、ぶはっ、と噴き出した。
「なーに笑ってんだよー!」
「いやぁ、これどっちが彼氏役かなーって考えてた!」
「それは俺だろ!?現状的に!」
「だーよーなー?!俺も彼氏役やりてーから俺が大輝ちゃんを引っ張るわ!」
「無理だって、恋にはできねーって!何故なら俺の方がデカイから歩幅的に」
「は〜〜???走れば変わんねーよーー!!」
「あっ!おい、走っ……俺の方が速いからな!?」
「元サッカー部なめんな!」
俺たちはバカかもしれない。手をつないだまま、遊園地の入り口まで走った。全力で。大輝のほうが脚、早かったから、今日の彼女役は俺に決定らしい。……ま、いっか!楽しいし!
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