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高揚
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走ったせいで手が微妙に汗ばんでいる。タバコのせいか肺活量の低下が凄まじくてぜぇぜぇ言ってる俺に「だらしねー!」と爆笑する大輝。
遊園地の入り口で手が離れる。そして大輝が財布からチケットを取り出して受付のお姉さんとなんか話してる。その隣で息を整える俺、はーーーっ!久々走ったなーー!
「ん。半券」
「あーありがと、財布出すのめんどくせーから大輝もってて。」
「んー。じゃ、行くかー。」
「うん、うん?」
ぶらん、としていた俺の手を、大輝がまたグイっと引っ張った。おお、…まじホモごっこ、続くんだ?今日一日俺と大輝は恋人、恋人、ぶはっ!あは!なんかへんなの!人の多いこんなとこで、バカだなー!俺たち!
走った疲れなんて忘れた。握られた手をにぎにぎ、とすると「なんだよ」と言われたので、ぶんぶんと大袈裟に振り回す。
「いやーー!楽しいなーー!って思って!いっそ女装したらよかったかなー!」
「誰が女装?恋が?キツイキツイ!」
「んだとー!?あーでも、俺高校の文化祭女装したよ、メイドさん」
「あー見た見た、アレだろ。メイド服の背中のチャック閉まってなかったよな」
「そーそれ!あれ傑作だったわー!」
たわいもない話をしながら歩く。
そうだ、女装したんだよなー、俺も宮内も愛も。愛なんかお姫様役でさぁ、と、続けようとしてやめた。
その愛ってだれ?と聞かれたら、きっと変な顔しちゃうだろうから。ごくり、飲み込んで辺りを見回す。カップル、カップル、カップル、カップルの山!あ、俺たちも今カップルか!人の目が突き刺さるけど、あんまり気にならなくなってきた。この視線は「あれホモ?」的な視線なんだろうか、それとも隣をあるくこのデカイ男のイケメンさゆえだろうか、まあ、でも人目にも慣れてきたし関係ないや。ふんふん、と鼻歌を歌いながら何から乗ろうか考えていると、「凄いご機嫌だなー恋ちゃーん」と言われたので「ご機嫌だよー大輝くーん」と返す、そして二人して、ぶはっと吹き出す。くくく、と喉を鳴らして、あーウケるウケるって。
「大輝ってさー、絶叫嫌いとかある?」
「んや?全然。」
「んじゃ絶叫攻めようぜ〜!」
自分が見える範囲では、ジェットコースターが二つ、観覧車が一つ、お土産屋さん多数、あとなんかよくわかんねー乗り物多数。ジェットコースターが一番テンション上がるよなーって話で一致、ぶんぶん、手を振り回しながらジェットコースターのある場所まで向かった。待ち時間15分、という短さ!さすが平日だなーと笑いながらまたたわいもない話をして、すぐに自分たちの順番がきたので、隣り合わせで座った。…手は、離さない。
「手ー上げよーな!」
「繋いだまま?」
「繋いだまま!!」
「あははは!おっけーー!」
スタッフの人が安全確認をする。「ではいってらっしゃーい!」というスタッフさんに「いってきまーす!」と返すと、がこん。ジェットコースターが動いた。ぐんぐん、体が空に空に登っていく。大輝と顔を見合わす。途端、ぐおっ、おおっ、と体が浮いて…
「ぎゃーーーーーー!!!あはは!!!あははは!!!落ちてる!!」
「れーんー!!みて!みて!!」
「なに?!ぎゃはっ!ごほっごほっ!なんで変顔してんのーー!?」
「俺!今!世界一高速の変顔してる自信あるわーー!」
「うはっ、ははっ!やめ、腹いてーー!ぎゃーーーー!揺れるー!!」
「おーちーるーー!!」
「手あげよ、手ーー!」
「はーい、ばんざーーーい!!」
「ばんざーーーい!!!ぎゃははは!」
凄い勢いで風を切って、ぐわんぐわんと体も頭も揺さぶられて、それでいて爆笑してる俺たち、男二人にしては珍しいぐらい楽しみすぎだよなー!なんでこう、人間てスリル求めんだろーな!不思議ー!
一瞬でジェットコースターに乗り終わって、俺と大輝はケラケラと笑いながらジェットコースターから降りた。階段をかんかんとおりて、今度は俺が大輝のデカイ手を握る。
「彼女離すなよ〜〜」
「ごめんごめん、あーウケる!楽しいな!」
「楽しい!!テンションぐあーって上がった!次なにする!」
「次ー?次あれがいい、あの、上空から高速に落ちるやつ!」
「落ちるやつ!あれ名前なんて言うんだろうな!」
「なんだろうなー!落下マシーン?」
「そのまますぎ!」
名称のイマイチわからないその乗り物は、スリーフォールというらしい。ということを、乗り物の説明に書いてあるのをみて「全然ちげーじゃん!」とまた笑って。これまた待ち時間が20分といったところで。どうでもいい話をする。今月の給料が多かったとか、また飲み会してーなーとか、そんなの。そんでスリーフォールというやつに乗って、これまた叫びまくって、ちょっとジェットコースターよりビビった。
「恋、手ぇ震えてる」
「ううううっせーー!!ちょーっとビビっただけだし!タマきゅってなった!!」
「あはは!わかる!ちょっとわかる!!」
さっき俺が、彼女離すなよーとか言ったからか。乗り終わったらすぐに俺の手を握った大輝に、ビビったことがばれた。いやー、俺絶叫だいすきなんだけどなー!ひっさびさにガチで叫んだなー!
絶叫と絶叫を続けて乗ったから、と、そのあとは3Dメガネをかけて、二人一組でゾンビを倒しながら車体に揺られるという謎の乗り物にのって、大輝が全然ゾンビ倒せなくて、俺がひとり射撃しまくった。俺はこういうの得意だからハイスコア叩き出したんだけど…。まえにゲーセン行った時もおもったこと、大輝ってもしかして……ゲーム系あんま得意じゃねーな!?スコアがひっでぇ!
時間も忘れて散々遊びまわったら、どちらともなくグーっと腹が鳴った。顔を見合わせる。
「腹減ったー!」
「何食う?何がいい?」
「なんでもいい!あ、ハンバーガー屋あんじゃん、あれにしよ!」
目の前にあったハンバーガー屋、とりあえず腹に何か入れたかったからぐいぐい引っ張る。昼時で結構人が並んでたから、俺と大輝は別れて注文し、合致。俺はチーズバーガーとレタスバーガーとコーラ、大輝もチーズバーガー二つとレタスバーガーとコーラ。ほぼ一緒かよ!一緒に頼めばよなったな!とまた笑って、空いてる席につく。
こういう遊園地とかのハンバーガーって、変にボリューミーでさ。普段はそんなことないんだけど、具がパンからボトボト落ちていく。トマト、嫌いだからずるりと引き抜いて、大輝に「あげる」というと「トマト嫌いならなんでそれにしたんだよ!」と言いながらも食べてくれた。ぼと、ぼと。ぼと。うまく食えねーー!!!!ほんと普段、そんなことないんだけど!庄司くんがハンバーガー上手く食えない気持ちが今ならわかる!
「あーあー、恋、ハンバーガー食うの下手だなー」
「違う違う、いつもこんなんじゃねーよ!?しっかり食えるんだけどなー!レタスが多い!落ちる!」
トレイの上に落ちるレタスを拾って食う俺とは反対に、大輝は普通ーにデカイ口あけて綺麗に平らげていた。
「綺麗に食うなぁ」
「こう、むんずっと掴んだら食えるって!」
「むんずっ?アッ!具出た!」
「下手か!」
「庄司くんよりマシだよ?!あの人マックのバーガーも上手く食えねーの、ぼっとぼと落とすんだって!」
「へーー、やっぱ手のでかさ関係あるんじゃね?」
「いや俺も手デカイほうだから!大輝がむちゃくちゃデカイんだよ!」
はみ出たマヨネーズ、レタス、ずるりと引き抜くように食べると、今度は唇の下にレタスが張り付く、なんでだよ!と眉をしかめると、大輝が爆笑しながら紙ナプキンを手にした。
「むちゃくちゃだなー、おまえー」
「ん?あ、さんきゅー」
口のした、というか顎、大輝が紙ナプキンで雑にごしごしと拭いてくれた。……………。お?
「今のすげーカップルっぽい!!」
「マジか!彼女大事にしてる彼氏っぽい!?」
「ぽい!すげーそれっぽい!」
「ははは!じゃあ次彼女できたらビンタされねーですむかな!?」
「……………それは…どうだろうな…」
「なんでだよ、そこはされねーと思う!ぐらい言えよ!」
ずずず、とコーラをすすりながら。毎日会ってるようなもんなのに、よく話題がつきない。俺はハンバーガー、やっぱり上手く食えなくて、俺より数を頼んでるはずの大輝より随分遅れて完食した。
スマホを開いて時間を見ると、午後15時のすこし手前。時間すぎんの早いなー。膨らんだ腹を撫でながらハンバーガー屋を出る。大輝の服の裾をグイッとひっぱって、「次どこいく?」というと。これまた自然に、するり。右手を握られた。うんうん、ふつーにこういうことが出来るんだから、彼女にも優しくしてやりゃいいのに。そしたらほんとにビンタなんかされねーだろうに。
「急流滑りてきなもの行こうぜ、びっしょびしょになるけど」
「そーだなー!夜になったら冷えるし今のうちいくかー!」
あんだけ食ったあと、またハードな乗り物に乗ろうとしている俺たちはやっぱりバカだとおもう。服が濡れることなんかわかってたのに、金がもったいねーとかいって、カッパは買わずにそのまま急流滑りに乗った。ギャーギャー騒ぎまくって、楽しんだ後、案の定、びっしゃびしゃになって。俺も大輝も髪がべっとり顔にはりついている。髪乾かしたいってのもあって、「俺タバコ吸いたい」というと、大輝は喫煙所まで着いてきてくれた。もうすぐ、夕日が傾くなー。そんな時間になっていた。
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